むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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January 31, 2004

学歴詐称問題:私見

先日の書き込みでは、アメリカの大学事情に詳しくない日本の人たちにも、「19単位」足りないと言うことがどういうことか、実感をもって感じてほしいと思い、少しくわしく書いてみた。まあ、人それぞれ留学の目的が違うし、それぞれの選択にもドラマがあるから、中退と言うことをすべて否定しようとしているわけではないことを強調しておきたい。むしろ、今回の問題の怒りは、アメリカの大学のことだからと思って逃げ切れると思った議員や民主党に向けられているんだと思う。

しかし、古賀潤一郎議員の経歴を見てみると、アメリカから帰国してからは、県議の秘書などをしながら、地道に政治家修行をしたんだろうなあ、と思う。このあたりの感覚はよくわかる気がする。アメリカで何をしていようが、日本に来たらそれまでの経歴がすべてリセットされてしまうということがよくある。たとえば、アメリカの大学の学歴は日本で就職するときにはかなり低く見られていると思う。これは極端な例だが、アメリカの大学院に籍を残しながら日本で研究していた時、中学の英語教師のバイトを受けて落ちたことがある。後で電話をしてその理由を聞いてみると、「英検は何級ですか?」と聞かれた。英検か、TOEICか、ともかく日本で知られている試験や資格がないとだめだというのだ。アメリカの大学卒なのですが、と言ったが聞いてもらえなかった。アメリカの大学システムから日本の大学に編入することも、制度的にも経済的にもいろいろ障害があってととてもむずかしい。

日本とアメリカでは社会のシステムが違うんだから、それは仕方ないことかもしれない。ただ、もし日本の社会におけるアメリカ大卒のステータスがもう少し高かったら、古賀議員も大学に残って学位を取れるまでがんばる意義もあったし、事実そういう決断をしたかもしれないと想像したりもする。

私の知っている仏教学の研究者で、アイビーリーグの名門校で博士号を取得し、その後、別のアイビーリーグの大学、シンガポールの大学で教鞭を取った後日本の大学に就職した人がいる。その大学は大学名に「外国語」が入っている大学で、外国の大学での経験を尊重しているのかと思うと実はそうでもないらしく、給与や昇進のための資料では、海外の大学で教えた分は教授歴に数えないのだとどこかで書いていた。私自身、現在米国の大学で教えているが、将来日本に帰った場合にどうなるのかという不安はある。まあ、この手のことは心配してもあまり意味のないことだと今は思っている。しかし、日本の社会が、海外で活躍した日本人の経験・才能・活力を生かそうと思ったら、制度的にもまだまだ改善の余地はあると思う。

留学といえば、多和田葉子の「ペルソナ」という作品が、留学生活のあいまいな心細さを非常によくとらえている。ディテールに生活の実感がこもっていて、この人は苦労したんだろうなあと思う。(講談社文庫「犬婿入り」所収)それから、もう少し年が下の、ティーンエージの留学(というか、アメリカ移住)というと、水村美苗の「私小説 from left to right」がある。どちらの作品も、海外で住むことの哀しみというか、なんとも切なくもやるせない心情をよく書けていると思う。

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January 30, 2004

ペパーダイン大学の夏期講座:古賀センセイの夏休み

前の書き込みで「ペパーダイン大学に夏期講座はないようである」と書いたが、さらに調べてみるとこれは間違いだった。夏期講座の ホームページによると、
I期 5月10日〜6月4日
II期 6月7日〜7月2日 
III期 7月6日〜7月30日
となっており、それぞれの期間ごとに、原則として最高8単位まで授業を取ることが可能である。

しかし、今年の通常国会の会期は6月16日まで。となると、I, II期と重なる。国会会期の最後をさぼってII, III期の授業を取ったとしても、最大16単位しか取れないから、今年の夏中に修了することは無理であるし、国会会期中に国会を休んで大学に行っていいのかという問題が当然出てくる。2年がかりで終わらせるというのならば不可能ではないが(来年の国会日程や、大学にどれだけ「例外」を認めさせることができるかによる)、4週間のうちに半年分の内容を学ぶ集中講座で最大単位数に近い数の授業を取って、果たしてついていけるかどうかという問題もある。

秋・春学期に編入するというのは国会の日程上不可能だろう。また、ペパーダイン大学の要覧を読んでみると、転入してきた学生は、最後の28単位はペパーダイン大学で取らなければならないということがわかった。つまり、他の大学で夏期講座を取って修了することはできないのである。

夏期講座を取って修了といっても、これだけ困難なのだ。古賀氏はそれをわかって言っているとはとても思えないのである。

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January 29, 2004

古賀議員の学歴詐称問題

古賀潤一郎議員の学歴問題については、この何日かニュースを追ってきたが、どうやらこのまま居直るつもりらしい。いつも読んでいるほら貝でも扱っていた。疑惑の一つである、ペパーダイン大学を卒業していたかどうかという点についてだが、古賀氏は卒業には19単位足りなかったと発表しているということである。

ペパーダイン大学のウェブサイトから、学部のカレッジの Academic Catalogueを早速ダウンロードしてみると、73ページに、卒業のために必要な単位数は128単位、1学期に取るべき標準の単位数は16単位とある。(16x8=128だから、ちょうど4年で卒業できる計算になる。)標準的な週4時間の科目1つで4単位と数えるから、1学期に4つ科目を取ればいい計算になる。

さて。
19単位とるためには5科目取ればいいのだが、これはアメリカ人のフルタイムの学生でも、1学期で取るには少し苦しい科目数である。まして長年大学から離れているような方にとっては、不可能に近いといえるのではないだろうか。また、1科目、2科目足りないという問題ではないのだから、卒業単位はそろっていたと思うといっている古賀氏の証言もあやしくなってくる。

また、古賀氏は「休暇を利用して単位取得」と言っているようだが、ペパーダイン大学には夏期講座はないようである。他の大学の夏期講座に通って単位を取ればいいのだが、報道を読む限りでは、他の大学にも通っていたようだから、すでに相当数の単位を移してしまっている可能性がある。普通、他の大学で取った単位数の全単位数に占める割合にはキャップがあるから、19単位分他大学の単位で埋められないのではないかと思う。

私自身、アメリカの大学、大学院を苦労して卒業した。日本でキャリアが認められないかもしれないというリスク、経済的な負担などすべて乗り越えた上で最後までやりとげたことには自負がある。また、そのようにして苦労して学位を取った人、学位を取ろうとしている人を大勢知っている。

古賀議員の留学は履歴書に大学名を載せるためだけの留学だったのかもしれない。現実に、ろくに勉強しないで半年か1年ばかり「滞在」して、その後堂々と「米国xx大学留学」と書いてマスコミなどで活躍している人も知っている。それはそれで問題があるとは思うが、ここでは問わない。しかし、単位数が足りなくて卒業できなかったならば、そう正直に表明すればいいのではないか。そのような「留学」を「卒業」と言い張って通ってしまうならば、それは私のように苦労して卒業した日本人の留学生・もと留学生に対する冒涜に他ならない。そんなわけで今回の件は腹が立って仕方がないのである。

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January 10, 2004

折口信夫

2004年をもって折口信夫の著作権が切れたようで、 青空文庫では作品が続々と公開になっている。『死者の書』全文とか。

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京極夏彦とMac OS X

京極夏彦が小説執筆にAdobe InDesign (Mac OS X)を使っている実例がAdobeApple Japanで公開されている。

パソコンで日本語入力する際、漢字・ルビなどを思った通りに表示させることができ、なおかつ入力自体が苦痛でないという方法を見つけるのは、人文系の仕事をしている僕には永遠の課題なわけだが、InDesignを使えば、細かい所まできっちり決まるようだ。漢字がぞろぞろ並ぶ原稿がぴっちり決まるというのは、気持ちいいんだろうな。(もちろん、そういう原稿が書けたら、という意味も込めて。)出版社がInDesignを導入していれば、そのまま入稿できるわけだし。難点は持っているパソコンのCPUに十分なパワーがあるかどうかくらいでしょう。

そもそも僕が1年半前にMacに乗り換えたのは、2万字搭載のヒラギノフォントがMac OS Xに標準装備されていると聞いて、それだけのフォントが使いこなせるならと思ったため。ただ、現時点ではそのフォントを使いこなすソフトが少なかった。EGWORD + InDesignという組み合わせがあるとは聞いていたが、いまひとつピンとこなかった。しかし、この実例を見ると、もし日本語で執筆する機会が増えれば、InDesign導入も検討の余地がありそう。まあ当面は英語の方の仕事が中心になるわけだけど。

最近、ワープロまわりを再検討している。欧文ワープロソフトとしてはMellel、アウトライナー及びノート管理には Circus Ponies NoteBookを試用中。

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January 02, 2004

「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」 

2003年のオスカー最右翼という評判に誘われて見る。特に特撮(コンピューター合成で造られたゴラムの体の動きと表情は秀逸!)やNZの地形を生かした風景は息をのむ。映像のすごさは3時間半が短く感じられるほど圧倒的。また、小説の映画版にありがちな、語りのリズムのアンバランスも感じない。しかし、何か物足りないと思うのはなぜだろう? 映画評論家Roger Ebertが書いているように、原作『指輪物語』のストーリーがファンタジー小説で、個々のキャラクターを描ききれていないからかもしれない。

それにしても、あのエンディング、カーテンコールでオーケストラの指揮者が5回も6回も舞台裏から出てきて礼をしているみたいだった。あれだけ「終わりそうで終わらない」時間が続くと、そこまで映画を見てきた時間の長さを意識させてしまうのではないだろうか。

しかし、このようなスケールの大きい叙事詩を映画化して正面から描ききったというのは、日本の映画界の現状では考えられないかも。最近のハリウッドは、 "Master and Commander"やら「ラスト・サムライ」やら、戦争を扱った大叙事詩がはやりであるらしい。

スケールの大きさといえば、この映画シリーズは、総制作費340億円、前2作の全世界興行収入が2150億円と報じられている。ニュージーランド国内の経済効果が320億円で、GDPを2%押し上げたという。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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