あいまいなケリー氏・頑固なブッシュ氏
私はアメリカ政治の専門家でも何でもないので、大統領選について語る知識も技能も持ち合わせてはいないのだが、政治関係の新聞や記事は好きで読んだりしているので、ここでは自分の備忘録も兼ねて、アメリカ国内での論争などについて時々書こうと思う。
民主党の候補がケリー氏に決まって、ブッシュ大統領も本格的な攻撃を開始した。ケリー氏の抱えている問題はけっこう深刻である。えてして候補が決まってからいろいろな問題点が噴出してくるというものなのだろう。
結構著名なコラムニストで、ブログでの政治評論をメジャーにした張本人の一人でもあるAndrew Sullivanが、ケリー氏批判のコラムを書いた。彼は安全保障に関してはタカ派でイラク戦争も支持していたが、自らがゲイでもあり、最近のブッシュの政策にはけっこう批判的である。しかし、ケリー氏もちょっと支持しかねるということらしい。その最大の原因は、ケリー氏が、目先の政治的利益のために、主要な政策課題に関する立場を信念もなくころころ変えているということ。実際、死刑廃止問題、貿易の保護政策など、政策を180度転換した例も少なくない。実際、この選挙中でさえ、ディーン氏がリードしたとみると、ディーン氏の真似をしてイラク戦争反対の立場を強調したり、またエドワーズ氏が追い上げてくると、自由貿易支持の立場を横に置いて(エドワーズ氏の主張である)保護政策支持に回ったりしている。ケリー氏が大統領になったらどういう政策をとるか、まったく未知数なのだ。もちろんブッシュ氏もいろいろと政策転換をしてはいるのだが、ケリー氏のあいまいさはかなり極端で、共和党側もさっそく攻撃に使い始めている。ニューヨークタイムズもこの問題を記事にした。
日本との関係で言うと、対北朝鮮の外交をどうするのかすら、まったく不透明。北朝鮮訪問直前までいったクリントンの時のような極端な宥和政策に逆戻りすることだってありうる。はっきりした外交政策も打ち出していないのだから。今日になって、ケリー氏自身「外国の首脳はブッシュより私に勝ってほしいと思っている」といっているが、金正日はまちがいなくその一人だろう。
他にSullivan氏が挙げている弱点としては、前にも書いた「エリート」的イメージ。ブッシュ氏ももちろん資産家ではあるのだが、見るからに人が良さそうなブッシュ氏に比べ、T. S. エリオットの詩を暗唱できたりする。アメリカの大統領が文学にたしなんでいるというのは、それはそれでいいことなのだが、ふつうのアメリカ国民にとっては、東部出身のスノッブと思われても仕方なく、政治的にはマイナスだろう。
一方、ブッシュ大統領の弱点は何か。最近、共和党側のテレビ広告で、「変化の時代に、ゆるがないリーダーシップ」というスローガンを掲げているが、William Saletanというコラムニストは、自分の意見を変えないことこそが問題だと指摘している。この人、何かの問題に対し一度決断をしてしまうと、その後にそう簡単には意見を変えないという性格の人らしい。(インタビューなどを聞いてみると確かにそう感じる。)テロの後などは、揺るがない意思の表明が、アメリカ国民の支持を呼んだわけだが、その後の減税一辺倒の経済政策やら、イラク戦争の政策やらをみると、現実を直視しない頑固さが、さまざまな問題の元凶になっているという分析になっている。
この二人の候補、政策というよりは政治手法にかんしてまったく対照的である。ケリーがこのまま勝つという予想も出始めているが、そうばかりとはいえず、最後の最後までもつれこむような状況だと思う。
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