アカデミー賞と東京大空襲
今回のアカデミー賞、「ラストサムライ」の渡辺謙や「たそがれ清兵衛」がノミネートされて話題になったが、最優秀ドキュメンタリーを取った"Fog of War"については日本ではあまり報道されていないようだ。このカテゴリー、去年はマイケル・ムーアがアメリカ銃社会を描いた"Bowling for Columbine"で受賞した後、「ブッシュよ、恥を知れ」と絶叫してニュースとなったいわくつきのカテゴリー。今年の受賞者となったこの作品の監督も、政治的なトーンが抑制された今回のオスカーの中でブッシュ政権を批判していた二、三人のうちの一人だった。
この"Fog of War"という作品、60年代にアメリカの国防長官を務めたロバート・マクナマラのインタビューで構成されているのだが、キューバ危機、ベトナム戦争などの激動の時代にアメリカ政権の中枢にいた人物が、当時の状況を赤裸々に、時には批判的に語っているようだ。(私はまだ未見なのだが、公式ウェブサイトで映画の一部を見ることが出来る。)マクナマラは現在85歳だが、まだまだ健在という印象。
彼は第二次大戦中は太平洋戦線に関わっていて、とくに東京大空襲については過剰な報復だったと明言している。「帰ってきたB29のパイロットたちの面接に立ち会った。…司令官は、『我々はなぜここにいるのか? 我々の飛行士が殺されたからだ』と言っていた。…でも、一人殺されたからといって東京を焼け野原にするのか?」非戦闘員が100万人も殺された空襲はやりすぎだったと、マクナマラは怒りすらあらわにして語っている。ベトナム戦争はともかく、太平洋戦争はアメリカ人にとってはいまだ疑いようのない「正しい戦争」であることを考えると、アメリカのエスタブリッシュメントがここまで言うか、という感慨にすら浸ってしまう。
また、キューバ危機、ベトナムについても、「理性のある人々が戦争を止めようと努力した。でも、核戦争にならなかったのは運が良かったからだ」「武力の行使にはルールが必要だ。でなければ人類は破滅してしまう」など、衝撃の発言が続出。特殊技術によって、マクナマラはインタビュアーに向かって語っているのだが、カメラに向かっているように撮影されているので、彼が視聴者に直接語りかけているような錯覚を受ける。
こうした映画が出てくるのは、やはりイラク戦争について国民の意見が割れていることの反映だと思う。この人がテレビでインタビューを受けているのを見たが、現在のイラク戦争については「現政権の政策についてはコメントしない」と口を閉ざしていたのが印象的だった。この映画の提起している問題が現在の状況に関わっていることは明らかで、立場上批判はできなくても、何か訴えたいという気持ちはあるのだろうと思う。
日本での上映予定はまだないのだろうか。アメリカではソニーが配給しているようだし、日本でも是非上映してもらいたい。3月10日は東京大空襲の記念日だ。
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