むなぐるま

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April 14, 2004

"Fog of War" を見に行った

"Fog of War"を近所の独立系の映画館で見てきた。この映画は、前にこの記事で書いたように、ケネディ・ジョンソン政権の時の国防長官だったロバート・マクナマラへのインタビューを中心に構成したドキュメンタリー映画。感想を箇条書きしてみる。

○東京大空襲などの非戦闘員の殺害について「カーティス・ルメイ将軍が言っていたように、われわれがもし軍事裁判で裁かれていたら戦犯になっていただろう」と言ったところでは、さすがに映画館がざわついた。それにしても、ルメイというのは悪人だ。こんな奴に勲一等旭日大綬章を授与した政府って一体…。

○ベトナムについて、ジョンソン大統領との意見の不一致を理由に辞任したくだりでは、自分は早期撤兵を主張したのに大統領に反対されたという言い方で、大統領の責任だという見解を示しながら、自らの戦争責任、あるいは辞任後に反戦運動に関わらなかった理由については口をつぐんでいた。この映画がマクナマラの最後の自己弁護といわれて批判されているのはこの辺りが理由かもしれない。

○マクナマラという人は、フォードの再建を手がけて社長にまで上りつめ(乗用車にシートベルトを標準装備するようになったのは彼の功績)、そこから国防長官に抜擢されたのだが、経営手腕に長けた切れ者だったんだろうし、それなりの自信も自負もあったんだろう。だからこそ、「理性のある首脳たちがかかわっていたにもかかわらず、キューバ危機が核戦争にならずに回避できたのは運だった」という言葉には重みがあると思った。

○タイトルにもあるFog of Warという言葉には、戦争は複雑であり、人間一人の理性ではとうてい理解しきれないものだという彼の哲学がこめられている。今日本のメディアでは人質事件について「情報が錯綜している」といっているが、戦争では情報が錯綜するのが常態なのだろうと思う。確実な情報が入ってこない中、断片的な情報を元にいろいろ推測するのは楽しいが、そのうち99%は後で全く無意味になってしまうと思うと、私のような部外者が情報をいちいち追っかけるのは時間の無駄だと改めて思った。まあ、戦争という現実に当事者として関わることが少なかった日本にとっては、これはちょうどいい学習機会なのかもしれない。

○英語には、よく「百聞は一見にしかず」と訳される"Seeing is believing"ということわざがあるが、マクナマラは「SeeingもBelievingも間違いであることが多い」と言っている。人間というものは変わらないし、戦争もなくならない。しかも、理性を尽くしても人間は間違いを犯し続けるという彼のメッセージには説得力がある。
帰りの車内でラジオをつけると、ブッシュ大統領が記者会見で「この反テロ戦争は、つねに攻め続けなければならないんだ」と言ってイラク戦争を正当化していた。人類はキューバ危機・ベトナムの時代からあまり進歩していないのだと考えると愕然とした。

○特殊技術で、マクナマラはインタビュアーに向かって話しているのだが、あたかもカメラに直接話しかけるような映像になっている。マクナマラも感情が高ぶってくると声を荒立てたり、指を振ったりして、臨場感があふれるインタビューになっている。また、カメラの背後からは監督のイーロール・モリスがこれまた大声で質問を投げかけていて、あたかも何十メートルも離れて絶叫し合っているような感じで面白かった。

○音楽はPhilip Glass. 妙に合っていた。

結論:第二次大戦(太平洋戦争)、ベトナムの歴史の証言としても、また現在のイラク戦争を考えるヒントとしても、アメリカ政府の中枢にいた人物がかなり率直に語っているという点で貴重な証言だと思う。また、戦争というものについてのかなり核心をついた問題提起としても面白かった。

この映画、すでにDVD版の発売が決定しており(5月11日発売)、amazon.comから予約できる。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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