むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

« March 2004 | Main | May 2004 »

April 30, 2004

「元人質、誘拐犯への同情を示す」

昨日は元人質の郡山サン、今井サンの記者会見があった。これについての海外の通信社の記事がなかなか面白い。どれも、元人質が国民や政府から批判されているという前提で書いているのだが、その扱いが微妙に違う。
ロイター電(たとえばこれ)の方は、自らの行動を弁護した点を強調しているが、APでは、2人が誘拐犯を弁護している点に注目している。英紙ガーディアン(電子版)に載った版の書き出しでは、

They were menaced with guns and knives and held hostage for more than a week. Still, two Japanese who were kidnapped in Iraq expressed sympathy for their captors Friday, calling them ``soldiers'' and ``resistance'' fighters in their first public comments since their release.

短い文章だが、この事件に対して日本の多くの人が感じている違和感の一部を的確についていると思う。誘拐され、何日間も軟禁されても、なお犯人の行動に同情できるというのは、普通の誘拐事件では考えにくい事態。それから、このAPの記者は、彼らが犯人を「兵士」とか「レジスタンス」とか呼んでいるという、重要な単語のチョイスもまっさきに指摘している。元人質の政治的立場がこうして世界に伝えられるのは意味があると思う。彼らは人質と言うよりは人間の盾なのだから。ニューヨークタイムスのオオニシ記者はどう伝えるのだろう。
 ちなみに、毎日新聞の英語版に載った記事の見出しも"Ex-hostages tell press that captors just 'ordinary Iraqis'"となっている。本紙の方でも「元人質、誘拐犯は『普通のイラク人』と記者団に語る」とでも見出しをつけてほしいものだ。

今日のアメリカのニュースは、イラク刑務所の虐待事件でもちきり。戦争では、軍紀が乱れてこういう状態になることは珍しくないとは思うが、これはアメリカの対外イメージに大打撃だろう。

| | Comments (4) | TrackBack

April 27, 2004

ニューヨークタイムズの人質事件報道

日本のテレビニュース(ネット配信)で人質事件についての続報を見てみると、「『自己責任』論への批判が海外からも起こっています」と言っている。それで少し調べてみると、次の記事を発見。
Freed From Captivity in Iraq, Japanese Return to More Pain (New York Times)

結論から言うと、この記事、ニューヨークタイムズ(NYT)の日本報道のお決まりのパターンを踏んでいる。
1:興味を引きそうな最新の時事ネタを紹介。
2:「この現象には文化的な背景があるんですよ」といって、安易なステレオタイプに結びつけた説明を加える。
3:読んでいるアメリカ人は、昔習った日本のえせ知識で日本の最新情報を理解できて、「日本ってヘンな国だな」という偏見をさらに強化する。さらに、「それに比べてアメリカはまだましだ」と思わせる書き方をしているので、自尊心を少しくすぐられていい気分になる。

 私がアメリカに来た1990年代前半から、このパターンで書かれた記事は数知れず。NYTの日本記事を批判したもあった。不思議なのは、日本人ではなく、他の人種や国籍の人間についての記事だったら抗議殺到するはずの記事が、日本についてだったら平気で載ってしまうこと。前述の本の例で言うと、「日本の女性がポルノ漫画を読むのは、隠れたレイプ願望があるから」とかいう記事が、沖縄での米兵レイプ事件の数日後1か月半後に出たこともあった。

で、この記事。4月23日付けで、NORIMITSU ONISHIという記者が書いている。この記事の現状認識(上の1)は、「人質となった日本の若い民間人が今週帰国したが、待っていたのは黄色いリボンの抱擁ではなく、国中の非難に満ちた冷たい視線だった」という冒頭の一文に集約できる。この記者は、この人質事件以前には存在しなかったとされる犯人の団体の不可解な背景や、日本人が関与していると思われる様々な証拠については一言も語らないから、多くの日本人が、この事件全体に不透明なものを感じていたということは伝わらない。また、人質の親族が左翼系の団体と密接に連携して、「人質救出」を盾に派手な反戦活動を繰り広げたことも書いてない。

代わりに、この記者は「彼らは『お上に逆らったから』罰せられたのだ」という説を展開する。(上の2)

普段は超洗練された日本の都会に隠れているが、この島国を何百年と統治してきたのはタテの結びつきである。何かの危機の時には、それが表面化する。元人質の罪は、国のイラクへの渡航規制を無視したことだった。階級がないというが実質的にはタテ社会の日本では、okami、つまり「上にあるもの」に逆らうことが罪であるのだ。

上に書いたような事件の特殊な背景を無視したら、このような陳腐な文化論で説明するしかないだろう。日本の歴史には、「反逆」とか「下克上」の例もたくさんあると思うが。まあ、「反日的分子は…」という国会議員もいるのだから、国民は出過ぎたまねをするべきではないと思っている役人や国会議員も多少はいることだろう。でも、全般的に見て、政府も外務省も、彼らの救出に対してできることはしたし、(大部分の)国会議員は下手なことは言わない。

また、「自己責任」論は、どちらかというと一般国民から草の根的に起こってきたのではないだろうか。その時の中心的な感情は「出しゃばって…」というものとは別のものだったと思う。やはり、この3人が、最低限の安全策を取らずに出て行ったことが大きいのではないか。18歳の子供が出て行くのにしっかりした団体のサポートもなく、親は何をしていたのか、というのはどこの国の人にとっても実にまっとうな問いだと思うが。また「プロ市民」というべき団体が関与していた(らしい)ことにうさんくささを感じていた部分も大きいと思う。しかし、この記事ではその辺の背景説明はしない。記事が複雑になってしまうからだ。

話がそれるが、「自己責任」論が出てきた背景には、日本政府が、今回のような事件が起こった場合にあまりオプションを持っていないため、今後似たような事件が起こらないように予防策を張っているという側面もあると思う。今回の事件で、政府やよくやったと思うが、今回のような場合、どうしても国際機関を通しての圧力とか、地元の部族との交渉、あるいはアメリカ頼みということになる。自力で救出部隊を派遣というわけにはもちろんいかないし、他の外交手段も限られてくる。その意味で、日本は狙われたら脆くて、後は運頼みという部分がある。小泉首相や福田官房長官が「自己責任」というのは、それこそ「お上のお達し」という印象を与えかねないが、それはテロ防止の手段が限られていることの裏返しだと思う。

また、この手の説明で問題なのは、これで「わかったような」気分になってしまうことだと思う。実際、この記事を読んだ保守系のコラムニストが、戦死した元アメフト選手の記事で、日本を引き合いに出して、「この選手は日本に行ったら悪人扱いされるだろう。…元人質の三人は現在日本で最も嫌われている人々である。…イラクの人々が豊かで自由な国をつくるのを助けに行った人に日本では敬意を表すると思うもしれないが、そうではない。日本では、いいことをしたらほめられるのではなく、出過ぎたことをしたとして批判されるのだ」などと書いている。こうして、アメリカのコラムニストの間で単純な日本のステレオタイプが増幅されていくのである。

そして、このNYTの記事は、アメリカにさりげなくリップサービスをする。(上の3) 「解放された人質たちを、公に賞賛した政府が一つだけある。それはアメリカだ」と言って例のパウエル国務長官の発言を引用したり、「タテ社会」がいやになった若者は「何か型にはまらないものを求めてマンハッタンのイースト・ヴィレッジにたむろしている」なんて書いてニューヨークの読者に親近感を感じさせたりしている。身近に感じさせるために、読者との接点を求めるのはいい。でも、「アメリカは日本よりすばらしい」と毎回のように結論づけることはないだろう。

***

この日本人人質事件の記事は、NYTでありがちな自己中心的な、偏見に満ちた視線の典型といえる。もちろん、ここに書いたような問題はどこにでもあること。日本の海外についての記事も似たり寄ったりのものもあるだろう。ただ、ここで私が取り立てて問題にするのは、すでに書いたように、このような記事が米国のいわゆるクオリティ・ペーパーに載ってしまうこと、このような記事が起点となって、アメリカでの日本への偏見が増幅されること、そして、日本のメディアが尻馬に乗って「海外のメディアではこんなことを言っていますよ」と言ってキャンペーンを張ることである。特に最後の一点は、元の記事の一面性や偏見を考えると、日本のメディアが無批判に「海外メディア」の権威をたてに利用しているのはなんとも愚かに思える。

また、もう一つ注意したほうがいいのは、この一件を通して、元人質が海外メディアの日本班にとっての「反逆のヒーロー」となる可能性があること。ある日本人を、その人の客観的な評価は横に置いて、ただ「日本の体制に反抗している」という理由だけで海外のメディアが祭り上げることがある。前に、TIME ASIA誌で小田実が「アジアのヒーロー100人」か何かに選ばれたことがあった。その意味で、
10 Questions For Jumpei Yasuda (TIME ASIA)
という記事で安田純平氏が早速取り上げられているのは、いやな予感がする。

追記:沖縄レイプ事件とNYTの記事の関連について。記事が出たのは95年11月5日。沖縄の12歳の少女が米兵にレイプされた事件からちょうど1か月半後のこと。訂正しました。でも、ペリー国防相が11月1日に謝罪したり、7日には容疑者3人が罪状を認めるなど、事件の余波が広がっているときにでた記事。悪意があったかどうかはともかく、無神経という謗りはまぬがれられないだろう。ちなみに、この記事の著者は、現在NYTのコラムニストのニコラス・クリストフ。

追記2(2004年9月22日)「また『プロ市民』というべき団体が関与していた(らしい)ことにうさんくささを感じていた部分も大きいと思う。」と言う一文にソースがないとご指摘をいただきましたので少し調べました。
人質事件こう着 “命 後回しにするな” 救出求め国会デモ 撤兵など訴え (しんぶん赤旗)
この記事は、人質事件発生後の4月13日に国会前で行われたデモについて伝えていますが、記事にはこのデモを「呼びかけた」団体として、全労連安保破棄中央実行委員会有事法制は許さない!運動推進連絡センター、国民大運動実行委員会の四団体を挙げています。ご参考までに。また、この件についてWikipediaのエントリがよくまとめてあります。
 それから、誤解をなくすため、「(らしい)」という部分を削除しました。

| | Comments (10) | TrackBack

April 21, 2004

ウッドワード:続報

今日はウッドワードの、"Hardball"という番組でのインタビューを見た。
印象に残った言葉。ブッシュ大統領は、インタビューで、
「(アメリカには、)諸国民を自由にする義務がある」
と発言していたとのこと。インタビュアーのクリス・マシューズが、「じゃあ、ネオコンの思想を受け入れちゃったってことですね」と言うと、ウッドワードは「そうだ」と答えていた。この人のことだから、心からそう信じて言っているのだろう。

それから興味深かったのは、チャック・ヘーグル上院議員(R-NE)が出演して、「徴兵制の復活を議論すべきだ」と言っていたこと。少し驚いたが、アメリカは戦時体制だと考えると、納得がいく。今はアメリカは志願制だが、兵隊の多くは大学の学費が出せないような貧しい家庭の出身が多い(ジェシカ・リンチもそうだった)ことを考えると、金持ちにも戦争を自分のこととして考えさせようという意図もあるんだと思う。まあ、現代の軍組織は専門化しており、素人が入ってもすぐに役に立つとは思えないが。

| | Comments (0) | TrackBack

azur を使ってみた

青空文庫最適ビューアの"azur"、今日からダウンロード開始。早速試してみた。

シンプルかつ機能的というのが第一印象。ブラッシュメタル調のインターフェースで、ボタン数などはかなり絞り込んである。いくつかHTMLと.ttz (T-Time)のファイルを試してみたが、問題なし。挙動もきびきびしているし、安定している。
 やはり、このソフトの目玉は、JIS X 2013の文字コードに対応していること。これは、2000年に規定された文字コードで、第三、第四水準漢字がJISコードで扱えるようになっている。Mac OS XではOS 10.1から、JIS X 2013には標準対応しており、同梱のヒラギノフォントで約2万字を表示できるのだが、ソフトの側の対応がなかなか追いついていなかった。ATOKも、最新のATOK 16でようやく変換候補にこれらの漢字が出るようになった。そんなわけで、"azur"ではJIS X 2013に対応と聞いて、期待していた。

早速、青空文庫サイトの「明日の本棚」のページから、いくつかのファイルをダウンロードして試してみる。このページには、JIS X 2013を利用して打ちこまれたファイルがいくつか試験的に公開されている。鴎外の「護持院原の敵討」や白秋の「濃霧」で試してみると、すべての漢字が綺麗に表示されている。(Carbon版のT-Timeでは文字化けしてしまっていた。)鴎外の「鴎」(メの代わりに、品)はもちろん、白秋のファイルに使われている旧字体の文字もすべて普通に表示されている。もちろん、アンチエイリアスの効いた、綺麗なフォントで。シンプルだが、こう表示してくれるといいと想像していた通りに表示できる。とりあえず大満足だ。

追記:内藤さんのご指摘により、鴎外作品の誤字を訂正しました。

| | Comments (0) | TrackBack

April 18, 2004

ウッドワードのイラク本

『ブッシュの戦争』の著者であるボブ・ウッドワードが、きょうCBSの"60 Minutes"に出演。火曜日に出版される、ブッシュ政権がイラク戦争に至る過程を描いた"Plan of Attack"についてインタビューを受けていた。時間がないので細かくは書けないが、短いインタビューのなかでこの本で明らかにされた驚くべき「新事実」について語っている。(CBSの番組サイトはこちら。番組の内容が詳しく紹介されている。)

その「新事実」の一部を箇条書きしてみる。

○2002年の春の段階で、米軍はイラク戦争の準備を進める指示を受けており、その出費は議会の許可なくアフガン戦争のための特別予算から出された。

○CIA長官のテネットは、ブッシュ氏に「大量破壊兵器があるといえるのか。こんな証拠じゃ大衆は納得しないぞ」と言われ、「スラム・ダンクですよ」と、100%大丈夫だという確証を大統領に与えていた。

○開戦したのは2003年3月だったが、1月の段階で大統領は開戦を決断していた。チェイニーやラムズフェルドは決断につきすぐに知らされたが、パウエル国務長官にこのニュースが伝えられたのはそのしばらく後だった。

○パウエルがこの決断について知る前に、サウジの駐米大使がホワイトハウスに直々に呼ばれ、イラクの戦争計画についてチェイニーとラムズフェルドから詳細な報告を受けた。また、サウジ王家は、ブッシュ再選のため、選挙直前に石油生産量を増加することにより、価格を下げてアメリカ経済を助けることを約束した。

○パウエルが大統領に開戦について聞いたとき、「どういう結果を引き起こすかわかっていますか。(陶器店と同じで)自分で壊したものは引き取らなければならないんですよ」と言って不快感を示したが、最終的には「良き兵卒」としてブッシュ氏を支えることを約束した。(ウッドワードは「パウエルの言った通りになりましたね」と付け加えた。)

『ブッシュの戦争』は半分くらい読んだが、けっこうドラマチックな脚色がしてある。とくに、最高レベルの会議などの会話を、目の前で見たかのように再現しているので、どこまで本当だろうかと疑ってしまう。しかし、とくに『ブッシュの戦争』では政権トップの人物に直接取材したりと、政権からかなり生の情報提供を受けている。(そのため、前の本はブッシュ政権の擁護をしていると批判された。)この本は、どちらかというとブッシュ政権に批判的な内容だと推測できる。本が出たら読んでみたい。ともかく、先日のポール・オニール元財務長官、リチャード・クラーク氏に続いて、イラク戦争に関わる政権内部の様子を暴露する本として、アメリカ世論にインパクトを与えることは間違いないだろう。

追記:アメリカのamazon.comでは、この本が売り上げランキング1位になっている。

| | Comments (0) | TrackBack

April 16, 2004

「『日本にも新世代育つ』 仏紙が3邦人の行動を弁護」

朝日新聞の記事。こんな記事がアサヒ・コムのトップ記事になっている。

たぶん、朝日新聞としては、「自己責任」論が席巻する現在のメディアで、なんか元「人質」をポジティブな目で捉えた記事を探してたんだろうな。「身内」をかばう気持ちはわからないでもないので、朝日に対する反応は省略。
 問題は元記事になった『ル・モンド』の論説。

軽率で無邪気すぎるかもしれないが、ネクタイ・スーツ姿と夜遊びギャルの間に、激変する社会に積極的にかかわろうとする者がいることだけは分かった。彼らは自分なりに世界を変えたいと考えている。
タイトルからして、「新世代」だって。私の知人の日本学の教授が、「アメリカのメディアでは、『伝統に反抗する新しい世代』というレトリックは日本を語るのに昔から繰り返し使われてきた。なぜ今になってもみんな飽きないんだろう?」って言っていたけれど、これもそのおなじみの論調をなぞっているだけ。欧米人の日本ウォッチャーは、明治時代から、日本に「近代化」「民主化」「改革」(つまり「西洋化」)を期待するか、その過程で失われる「伝統」を惜しんでみるか、そのいずれかを繰り返してきた。明治維新が戦後の民主化になり、NGOになっただけ。日本は、いつまでたっても大人になれない永遠の12歳なのだ。  推測するに、どうせ、現場に出ないでオフィスにこもっている支局長がTVのニュースを見ながら自分の思想に合った記事を思いついて、そのまま書いたんだろうな。NGOの活躍などと言うが、別に若い世代だけが活躍しているわけではなく、昔から地道な活動を続けている団体は日本にもいくつもある。

しかし、こういう、具体的なデータも検証も論理的考察もない片手間クズ記事が、フランスの一流紙に載って影響力を持ってしまうというのが、欧米メディアの現実なのである。

 同じ朝日だが、船橋洋一氏の今回のコラムには賛成せざるを得ない。テロの温床をなくすことを理由の一つのして始められたイラク戦争が「テロリストの思うつぼ」だった、というのは、現状を見ると否定できない。では、そこからの「出口戦略」とは何なのだろうか。

| | Comments (0) | TrackBack

運がよけりゃ

昨日、学生劇団による『マイ・フェア・レディ』を見に行った。それにしても、アメリカの学生が演ずる演劇・ミュージカルなどは、非常にレベルが高い。大学の演劇専攻の学生はともかく、高校生の制作の劇に行ってもほとんど外れがない。昨日のものも、主演のエライザ役の学生が張りのある、すばらしい歌声の持ち主で、感心した。
 恥ずかしながら、『運がよけりゃ』(クレージーキャッツ?)の本歌がこのミュージカルのナンバーとは知らなかった。

| | Comments (0) | TrackBack

April 15, 2004

Mac OS Xにも対応! 「青空文庫」ビューア "azur"

「青空文庫」のファイルに対応したWebブラウザ"azur" が発表された。(aozora blog 経由。)Azur(Aozora Unique Reader)というのはなかなかクレバーなネーミングだ。


青空文庫のファイルはHTML、.TXTのほかに.EBK(エキスパンドブック)形式で提供されているが、.EBKおよびその発展型である.TTZのビューアであるVOYAGER社のT-TIMEは、長年開発が止まっていた。Mac版はCarbonなのだが、バグがあったりJIS X 2013の漢字が表示できなかったりといろいろ不便だった。ソフトが更新される様子もないので、VOYAGERはMacを切り捨てたのかと思っていた。
(電子本のファイル形式についての説明はこちら。)

azurは、基本的には縦書きWebブラウザなのだが、青空文庫の注釈タグに対応しているとのこと。特筆すべきなのは、azurの、Mac OS X版が開発されていること。Jaguar(OS 10.2)以降対応というから、多分、Apple社のブラウザ、Safariのレンダリングエンジンを使っているのだろう。Safariは速いし、かなり正確にレンダリングできるようになってきたから、期待できる。また、将来はJIS X 2013にも対応するとある。OS XはヒラギノフォントとJIS X 2013にOSで対応しているのだから、その機能をフルに生かしたソフトになってほしいものだ。

Macの美しいフォント表示で青空文庫を読めるのが楽しみだ。ダウンロードは今月22日からとのこと。

| | Comments (0) | TrackBack

無関心な大統領

人質救出とのこと。よかったですね。

今日のNew York Timesの社説は、「無関心の代償」と題してブッシュ大統領を批判している。
この数日の9/11委員会の証言により、政府が同時多発テロを防ぐために十分に対策をしなかったことが明らかになっている。面白いのは、この社説でも書いているとおり、政府の過ち(特にCIAやFBIの諜報機関)はクリントン政権もブッシュ政権でも同じように起こっているのだが、この社説ではそれを特にブッシュ氏の性格というか、知的傾向になぞらえていること。リベラルなNew York Timesはこの委員会の内容をブッシュ批判に使うが、保守はクリントンの批判に利用している。最近のアメリカの政治言論は党派性があまりにあからさまで、あきれることが多い。

さて、この大統領には、知的好奇心があまりないというイメージが定着しているが、実際そのような印象を裏付けることは多々ある。一度思い込んだら、多少の反対意見などで意見を変えない。また、この政権はそのことをポジティブにとらえている様子がある。この前も、大統領のアドバイザーが「この大統領は政治的圧力によって政策を変えたことがありません!」と力説していた。これを聞いた、ウォルター・クロンカイトという著名なジャーナリストが、「ブッシュ氏は信仰が篤いというが、神からの圧力があったら意見を変えるんですかね」と発言していた。このへんはどうなんだろうか。面白い質問だと思う。

でも、自説を曲げないことがそんなにいいことなのだろうか。「信念の人」というと聞こえがいいが、むしろ、現実に柔軟に対応することが政治化には求められることもある。(自民党の首相などはとくにそればかりの人々が多かったが。)「無関心」というと、またイメージが変わってくる。この人、知的好奇心というものは本当になさそうだ。ある小学校を訪問したときに、子どもに向かって、「私は、いまさら学校にはもどりたくないよ。関心もないし…」と言っていた。子どもに対してのメッセージとしてはどうかと思うが、多分本当に心からそう思っているのだろうから仕方ないかもしれない。

| | Comments (0) | TrackBack

April 14, 2004

日本人人質事件:追記

私は日本のTVやニュースが見られる環境にないので、この問題を普通の日本人がどう捉えているかいまいちぴんとこない。ネットなどを見る限りでは、メディアは大騒ぎしているが一般庶民はけっこう醒めた目で見ているということらしいが、もしそうだとしたら至極まともだと思う。

| | Comments (0) | TrackBack

"Fog of War" を見に行った

"Fog of War"を近所の独立系の映画館で見てきた。この映画は、前にこの記事で書いたように、ケネディ・ジョンソン政権の時の国防長官だったロバート・マクナマラへのインタビューを中心に構成したドキュメンタリー映画。感想を箇条書きしてみる。

○東京大空襲などの非戦闘員の殺害について「カーティス・ルメイ将軍が言っていたように、われわれがもし軍事裁判で裁かれていたら戦犯になっていただろう」と言ったところでは、さすがに映画館がざわついた。それにしても、ルメイというのは悪人だ。こんな奴に勲一等旭日大綬章を授与した政府って一体…。

○ベトナムについて、ジョンソン大統領との意見の不一致を理由に辞任したくだりでは、自分は早期撤兵を主張したのに大統領に反対されたという言い方で、大統領の責任だという見解を示しながら、自らの戦争責任、あるいは辞任後に反戦運動に関わらなかった理由については口をつぐんでいた。この映画がマクナマラの最後の自己弁護といわれて批判されているのはこの辺りが理由かもしれない。

○マクナマラという人は、フォードの再建を手がけて社長にまで上りつめ(乗用車にシートベルトを標準装備するようになったのは彼の功績)、そこから国防長官に抜擢されたのだが、経営手腕に長けた切れ者だったんだろうし、それなりの自信も自負もあったんだろう。だからこそ、「理性のある首脳たちがかかわっていたにもかかわらず、キューバ危機が核戦争にならずに回避できたのは運だった」という言葉には重みがあると思った。

○タイトルにもあるFog of Warという言葉には、戦争は複雑であり、人間一人の理性ではとうてい理解しきれないものだという彼の哲学がこめられている。今日本のメディアでは人質事件について「情報が錯綜している」といっているが、戦争では情報が錯綜するのが常態なのだろうと思う。確実な情報が入ってこない中、断片的な情報を元にいろいろ推測するのは楽しいが、そのうち99%は後で全く無意味になってしまうと思うと、私のような部外者が情報をいちいち追っかけるのは時間の無駄だと改めて思った。まあ、戦争という現実に当事者として関わることが少なかった日本にとっては、これはちょうどいい学習機会なのかもしれない。

○英語には、よく「百聞は一見にしかず」と訳される"Seeing is believing"ということわざがあるが、マクナマラは「SeeingもBelievingも間違いであることが多い」と言っている。人間というものは変わらないし、戦争もなくならない。しかも、理性を尽くしても人間は間違いを犯し続けるという彼のメッセージには説得力がある。
帰りの車内でラジオをつけると、ブッシュ大統領が記者会見で「この反テロ戦争は、つねに攻め続けなければならないんだ」と言ってイラク戦争を正当化していた。人類はキューバ危機・ベトナムの時代からあまり進歩していないのだと考えると愕然とした。

○特殊技術で、マクナマラはインタビュアーに向かって話しているのだが、あたかもカメラに直接話しかけるような映像になっている。マクナマラも感情が高ぶってくると声を荒立てたり、指を振ったりして、臨場感があふれるインタビューになっている。また、カメラの背後からは監督のイーロール・モリスがこれまた大声で質問を投げかけていて、あたかも何十メートルも離れて絶叫し合っているような感じで面白かった。

○音楽はPhilip Glass. 妙に合っていた。

結論:第二次大戦(太平洋戦争)、ベトナムの歴史の証言としても、また現在のイラク戦争を考えるヒントとしても、アメリカ政府の中枢にいた人物がかなり率直に語っているという点で貴重な証言だと思う。また、戦争というものについてのかなり核心をついた問題提起としても面白かった。

この映画、すでにDVD版の発売が決定しており(5月11日発売)、amazon.comから予約できる。

| | Comments (0) | TrackBack

April 12, 2004

日本人人質事件:勝手に総括

この3日ほど、人質事件を追っかけていてかなり時間を無駄にしてしまった。

今回の事件を勝手に総括すると、日本政府、世論が情報戦に振り回されてしまっていることが一番の問題だと思う。今日のほら貝・エディトリアル(4/11)を読んでいて思ったのだが、この事件の犯人について不可解なことが多いというよりは、不可解な犯人に振り回されてしまってしまっているわれわれこそがおかしいのではないかと思う。

ほら貝の記事を読んでわかるのは、アルジャジーラという放送局は、実は入ってくる情報を裏も取らずに垂れ流している、情報ソースとしては信頼性の低いメディアということだ。解放を発表したファックスを巡る疑惑についてはネットのあちこちで書かれているが、有田芳生の酔醒漫録(4/11)によると、イラク国内は通信インフラがまだまだ復旧しておらず、ファックスなど送れる状況ではないらしい。もし犯人が戦闘の続くファルージャに居るなら尚更だろう。だとしたらこのファックスはどこから送られてきたのか。この点をアルジャジーラは明らかにしていない。また、「自衛隊撤退せねば人質殺害」と報道された声明にしても、素性の知れない男に生放送で話させておいて、後になって「信用がおけない」と否定してしまった。(asahi.com)。問題なのは、こんな、信用のおけないメディアの報道に日本国中が一喜一憂していることである。日本のメディアに基本的な中東情勢についての知識がなく、現地に独自のネットワークを持っていないこと、また、このような事件になるとセンセーショナルなテレビをはじめとして国中がすぐ沸騰してしまうことがその原因といえるだろう。

政府は比較的慎重に対応しているが、政治家たち(特に民主党)が過敏に反応しているのも、海外から見たら、テロに踊らされているように見えるだろう。テロ対策で最も大事なのは、テロリストの政治主張を決して聞かない、ということだと思う。(テロリストと人質解放のための交渉をしないわけではない。)家族や市民運動家は「自衛隊を派遣したから、日本人が危険にさらされている。だから自衛隊を撤退せよ」というが、テロの側からしたら、もしテロで世論を動かし、政策を左右できるとわかったら、妥協してテロをやめるどころか、テロはいっそう増えるだろう。スペインでは総選挙の結果が鉄道爆破テロによって左右されたが、その後スペインでテロが止んだだろうか。先週から頻発した人質事件のうち、人質が死んだと報道されたのはドイツ人である。ドイツはイラク戦争反対ではなかったか。一方、イギリス人の民間人は無事が確認された。

だからといって、アメリカのいわゆる「反テロ」戦争すべてに賛成すべきだといっているのではない。テロと政治が因果関係で結ばれること、またそのような印象を国外に与えることが問題なのだ。

この大騒ぎのおかげで、日本が今後テロリストの格好のターゲットにならないかと心配である。3人を誘拐するだけで、東京で何千人規模の反政府デモが起きたり、政府や世論がこれだけ動揺するなら、またやってやろうと考えないだろうか。おまけに自衛隊は銃を持っていても先制攻撃されないと撃ち返せない「軍隊」である。日本が反テロ連合のweakest linkだと世界に知れてしまった宣伝効果は計り知れない。

9/11以来、アメリカではテロに対抗する一番の手段は、何もなかったかのように日常生活を続けることといわれたが、そのことは今回のようなケースによく当てはまると思う。情報収集・分析は悪くない。ただ、関心を奪われ、日常生活が狂いだしたら、すでにテロリストの術中にはまっているのである。私も、こういう時こそしっかり仕事をマイペースでしなければ。これからの個人的な課題だな。

それから、朝日新聞も、せっかくの休刊日なんだから、新聞配達の奨学生を休ませてあげてよ。

| | Comments (0) | TrackBack

April 09, 2004

イラク日本人人質事件:アメリカの無関心

昨日、今日と、ニュース番組などを見て情報収集しようと思ったのだが、アメリカのメディアではあまり扱いが大きくない。

New York Timesのサイトでは、サイトのホームページで「韓国人8人、日本人3人釈放」というヘッドラインが出てびっくりしたが、記事を読んでみたら「韓国人牧師ら釈放」とは書いてあっても日本人の情勢については書いていない。単なるミスなんだろうと思い訂正するようメールを書いたが、少なくとも2時間以上放置された後やっと訂正された。この辺りも、メディアというか、アメリカ国民の関心の低さの反映と思う。

なぜアメリカはこの件について関心が低いか。いくつか考えてみた。
1)ライス補佐官の9/11調査委員会の証言というビッグニュースがあって、その影に隠れてしまった。
2)イースターの祝日が近づいており、ニュース自体の流れが遅い。
3)アメリカのメディアが、テロの脅迫映像を流すことについて「テロを利することになる」として慎重になっている。
などがすぐに思いついたが、やはり一番大きいのは、アメリカ国民がこのような事態を直視したくないという心理があるんだと思う。少し考えれば、ブッシュ政権のイラク戦争を一貫して支持してきた日本政府が危機に陥るということはわかる。だからこそ、見ないですむのならば見たくないと思っているのではないだろうか。つい最近、イラクで働くアメリカの民間人の遺体が放送で流れたばかりで、このような厳しい現実にはうんざりという気分があると思う。

BBC Newsのようなヨーロッパのメディアが日本の一般市民の反応などを細かく報じながら「アメリカとしては一番おそれていた事態ですね」などと論評しているのとは対照的である。戦況がどんどん悪化する中、多くの国民が無意識に現実から逃避しつつあるのではないだろうか。好むと好まざるとにかかわらず、戦争はまだ続いているのである。

普通の国民はそれでいいが、大統領はどうなのか。今の大統領は、こういう重大な事態に直面すると引きこもって、部下に仕事を押しつける傾向がある。日本は何がどうあっても黙ってついて来ると思っているのだろうか。そうだとしたら、アメリカ政府は大きな間違いを犯していると思う。アメリカ政府の対応には不満があるが、テロリストに妥協するというオプションはありえないということは言うまでもない。

| | Comments (0) | TrackBack

Johnny Cash

Johnny Cashを発見してしまった。

この前、公共放送のラジオ番組で、CD5枚組ボックスセットの発売にちなんで、この10年間彼と一緒に仕事をしてきたリック・ルービンのインタビューを聴いた。それ以来少し気になっていたのだが、最近になって、iTunes Music Storeで"American IV"を試聴しているうちにハートを鷲掴みされてしまった。このアルバム、ポピュラーな曲のカバーが多いのだが、シンプルながら心を揺さぶるボーカルとギター。こんなに存在感のあるアルバムを聴くのは何年ぶりだろう。私はもちろん彼が若い頃のカントリーの曲は知らないが、このCDには圧倒されてしまった。

| | Comments (0) | TrackBack

April 02, 2004

クラーク氏のTVインタビュー

クリントン・ブッシュ政権でテロ防止担当の大統領補佐官を務めたリチャード・クラークの発言が波紋を広げている。クラーク氏が出演したTV番組についての記事および筆記録へのリンクを張っておく。(MSNBC.COM) 一番の目玉は、ブッシュ政権の国防担当者の多く(チェイニー、ライス、ラムズフェルド)が、就任直後から「イラクでの未完の仕事」を終えるという意図を持っていた、という発言。この番組は見たが、ブッシュ政権内の政策決定の内幕をかなり生々しく語っている。単純に言うと、彼はイラク戦争は反テロの戦いとは関係ないし、むしろじゃまになったという立場である。

| | Comments (0) | TrackBack

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

ウェブログ図書館 http://library.jienology.com/