むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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April 12, 2004

日本人人質事件:勝手に総括

この3日ほど、人質事件を追っかけていてかなり時間を無駄にしてしまった。

今回の事件を勝手に総括すると、日本政府、世論が情報戦に振り回されてしまっていることが一番の問題だと思う。今日のほら貝・エディトリアル(4/11)を読んでいて思ったのだが、この事件の犯人について不可解なことが多いというよりは、不可解な犯人に振り回されてしまってしまっているわれわれこそがおかしいのではないかと思う。

ほら貝の記事を読んでわかるのは、アルジャジーラという放送局は、実は入ってくる情報を裏も取らずに垂れ流している、情報ソースとしては信頼性の低いメディアということだ。解放を発表したファックスを巡る疑惑についてはネットのあちこちで書かれているが、有田芳生の酔醒漫録(4/11)によると、イラク国内は通信インフラがまだまだ復旧しておらず、ファックスなど送れる状況ではないらしい。もし犯人が戦闘の続くファルージャに居るなら尚更だろう。だとしたらこのファックスはどこから送られてきたのか。この点をアルジャジーラは明らかにしていない。また、「自衛隊撤退せねば人質殺害」と報道された声明にしても、素性の知れない男に生放送で話させておいて、後になって「信用がおけない」と否定してしまった。(asahi.com)。問題なのは、こんな、信用のおけないメディアの報道に日本国中が一喜一憂していることである。日本のメディアに基本的な中東情勢についての知識がなく、現地に独自のネットワークを持っていないこと、また、このような事件になるとセンセーショナルなテレビをはじめとして国中がすぐ沸騰してしまうことがその原因といえるだろう。

政府は比較的慎重に対応しているが、政治家たち(特に民主党)が過敏に反応しているのも、海外から見たら、テロに踊らされているように見えるだろう。テロ対策で最も大事なのは、テロリストの政治主張を決して聞かない、ということだと思う。(テロリストと人質解放のための交渉をしないわけではない。)家族や市民運動家は「自衛隊を派遣したから、日本人が危険にさらされている。だから自衛隊を撤退せよ」というが、テロの側からしたら、もしテロで世論を動かし、政策を左右できるとわかったら、妥協してテロをやめるどころか、テロはいっそう増えるだろう。スペインでは総選挙の結果が鉄道爆破テロによって左右されたが、その後スペインでテロが止んだだろうか。先週から頻発した人質事件のうち、人質が死んだと報道されたのはドイツ人である。ドイツはイラク戦争反対ではなかったか。一方、イギリス人の民間人は無事が確認された。

だからといって、アメリカのいわゆる「反テロ」戦争すべてに賛成すべきだといっているのではない。テロと政治が因果関係で結ばれること、またそのような印象を国外に与えることが問題なのだ。

この大騒ぎのおかげで、日本が今後テロリストの格好のターゲットにならないかと心配である。3人を誘拐するだけで、東京で何千人規模の反政府デモが起きたり、政府や世論がこれだけ動揺するなら、またやってやろうと考えないだろうか。おまけに自衛隊は銃を持っていても先制攻撃されないと撃ち返せない「軍隊」である。日本が反テロ連合のweakest linkだと世界に知れてしまった宣伝効果は計り知れない。

9/11以来、アメリカではテロに対抗する一番の手段は、何もなかったかのように日常生活を続けることといわれたが、そのことは今回のようなケースによく当てはまると思う。情報収集・分析は悪くない。ただ、関心を奪われ、日常生活が狂いだしたら、すでにテロリストの術中にはまっているのである。私も、こういう時こそしっかり仕事をマイペースでしなければ。これからの個人的な課題だな。

それから、朝日新聞も、せっかくの休刊日なんだから、新聞配達の奨学生を休ませてあげてよ。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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