むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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May 29, 2004

「日本発の映像、音楽を世界へ」

読売新聞の社説(5月28日)から。日本発の映像・音楽・出版などのコンテンツ発信を支援しようという話。

「日本発コンテンツ」を世界に発信しようと、内閣府の知的財産戦略本部が、「コンテンツビジネス振興政策」をまとめた。
 制作資金が調達しやすい仕組みを作るなど業界の基盤整備や、人材育成、資金面を含めた海外展開の後押し、といった十項目が並ぶ。映像デジタル技術の研究開発、活用推進も掲げている。
 政策支援のため、今国会では、議員提出で、「コンテンツの創造、保護及び活用の促進法」も成立した。

映画に絞って言うと、いちばんややこしいのが著作権関係である。
たとえば、日本の映画をアメリカで(合法的に)上映しようとすると、日本のオリジナルの配給会社に連絡して、北米での上映権をどの会社が持っているか確認して、今度は北米の配給会社に連絡して上映する段取りを詰めることになる。この辺のプロセスが入り組んでいて非常に面倒。人の入れ替わりが激しい業界だし、秘密主義なんかもあったりして、必要な情報が手に入るまで一苦労する。映画会社が協力して権利関係の情報や上映可能なフィルムを一括して提供する情報センターみたいなものをつくれないものだろうか。

(ここに書いたのと似たような役割を果たしている団体としては、国際交流基金の文化部が、16ミリの映画字幕つきフィルムを送料のみで提供するというサービスがある。このサービスも、上映権は別に映画会社と交渉しないといけないし、提供する映画のリストは映画会社の方の要請で公開していないとのことで、制約も多い。)

コンテンツの著作権というと、著作権を守ることばかり考えてしまうが、権利関係の手続きを簡略化して合法的に視聴したい人たちに著作物が手に入りやすくすることも大事だと思うのだがどうだろうか。例えば、アメリカではアップルのiTunes Music Storeをはじめデジタル音楽ビジネスが着実に地歩を固めているが、このビジネスモデルで一番ネックになるのはやはり権利関係。iTunes Music Storeを日本でも展開するという話はあったと思うが、どうなったのだろう。

それから、もう一つ、シンプルなことなのだが、新作映画に英語字幕を付け、字幕付きのフィルムやDVDを入手しやすくすることも、日本映画の人気を高めるのに結構効果があると思う。最近の新作映画は、海外映画祭に出品するときにプロに依頼して字幕を付けていることが多いので、字幕付きのフィルムはどこかにあるはず。また、字幕のテキストがあるのだから、DVDに英語字幕を付けるのも比較的容易だろう。字幕をつけるだけで、海外に紹介される可能性がある作品の総数が大きくなるわけだから、有効な手段だと思うのだが。この社説に書いてある政府のプロジェクトのようなものを通して、英語字幕を付けるのに補助金を出すとかしたらいいと思う。

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日朝関係:妥協の代償

日朝首脳会談が終わって、どうも小泉首相がいろいろと妥協しすぎたんじゃないかと思わせるニュースが多く入ってきている。今後の日朝交渉には朝鮮総連の代表が同席するとか、朝鮮総連の全体大会で首相の挨拶が代読されたとか、首脳会談の合意で「在日朝鮮人の差別をしない」という文面が盛り込まれた、とか。(もちろん差別はいけないことだが、勝谷誠彦氏などによると、これをきっかけに朝鮮総連の違法行為の取り締まり、引き締めができにくくなるということらしい。)それから、会議自体も、いろいろと儀礼的な面において小泉首相はことごとく軽く扱われたということも。
ここで大事になってくるのは、小泉首相が「北朝鮮の現体制がどれだけもつのか」という問題をどう考えているのか、ということだと思う。
この前の記事のコメントでのさぬきうどんさんのやりとりの中で、シカゴ大学教授のブルース・カミングス氏の、「北朝鮮は、たんなる共産主義国家ではなく、儒教的な道徳規範に基づいた国家なので、そう簡単には崩壊しないのではないか」という見解を紹介した。この学者はアメリカでは随一の朝鮮近代史の学者という定評がある人なのだが、近著のamazon.comのレビューを見てみると、読者から「北朝鮮に媚びている」「冷静な分析というよりは、感情に流された意見」などというコメントがついている。(この本は未読なのでこれらの評価が正当かはわからない。)しかし、この学者に親北派・媚北派というレッテルを貼る前に考えてみたいのは、彼が投げかけている「北朝鮮の現体制がどれだけもつか」という問題である。北朝鮮の姿勢はどうあれ、その問題そのものは一考の価値がある。もし、拉致問題は根本的には何らかのregime changeでしか解決しないのならなおさらのことだ。

もし金正日の政権があと1、2年しかもたないということならば、圧力をかけ続けて、政権の終わりを早めればよい。でも、経済的にどうであれ政権がこれから10年、20年ともつならばどうなるだろう。また、金正日政権がつぶれても、北朝鮮あるいは中国主導の形で朝鮮統一となったら、これもまたやっかいだろう。西尾幹二氏は、これから100年の東アジア情勢をどう見るかが大事と最近書いているが、着眼しているのはまさにこの点だろう。

実は、小泉首相は、政権がすぐにつぶれないと判断し、現在残っている問題だけは自分の手で解決したかったというのがその動機の第一だったのではないだろうか。どんなに強行策を取っても政権がつぶれないならば、朝鮮総連がどんなに悪であれ、とりあえずエンゲージしなければことが進んでいかない。しかし、もし長期的につきあっていくという方針だったら、外交儀礼のようなことはなおさら大事にしなければいけないのではないだろうか。また、朝鮮総連の違法行為の取り締まりも、筋を通すという意味では大事だと思う。

今回の小泉訪朝でしたさまざまな妥協の代償は何だったのだろうと考えざるを得ない。アメリカの意向があって動いているのかもしれないが、イラク情勢を始め、今のアメリカの政権の北朝鮮政策はいまひとつ読みにくい。でも、西尾氏が示唆しているように、自民党内にもなんとか拉致問題を幕引きしたい人々がいて、小泉首相がその意向を受けて動いているというという可能性はあるんだろうか。ここまでくると、自分の頭でよく考えてみるしかない。

追記:North Korea Zone最新の記事にいくつか面白そうな記事が紹介されている。

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ニューヨーク・タイムズ:コラムニストたち

このサイトをはじめの頃から読んで下さっている訪問者の方はもう知っておられると思うが、ニューヨーク・タイムズのコラムニストの中で私が特に面白いと思っているのはデーヴィッド・ブルックスである。彼は長年保守系(ネオコン系)雑誌、The Weekly Standardの編集者をつとめていたが、去年の9月からNYTのコラムニストになった。リベラルが多いNYTのオピニオン欄で、ウィリアム・サファイアと共に保守系コラムを連載している。また、公共放送PBSのNewsHourにゲストコラムニストとして参加したりしている。
この前、彼の近著 "On Paradise Drive" がNYTの書評欄で紹介された。書評者はこれも有名コラムニストのマイケル・キンズリー。

まず、ブルックスについてはこう言っている。

For several years, in the world of political journalism, David Brooks has been every liberal's favorite conservative. This is not just because he throws us a bone of agreement every now and then. Even the most poisonous propagandist (i.e., Bill O'Reilly) knows that trick. Brooks goes farther. In his writing and on television, he actually seems reasonable. More than that, he seems cuddly. He gives the impression of being open to persuasion. Like the elderly Jewish lady who thinks someone must be Jewish because ''he's so nice,'' liberals suspect that a writer as amiable as Brooks must be a liberal at heart. Some conservatives think so too.

「リベラルのお気に入りの保守論客」とはよく言われるところ。(ちなみに、「保守のお気に入りのリベラル論客」といえばFox Newsのアラン・コームスであろう。)保守というとFox Newsのビル・オライリーのように、問答無用なところがあるが、ブルックスの場合、きちんと自分の立場を論理的に説明する。最新の社会現象についてもよく調べて書いているし、NYTの中でも場違いな感じはしない。でも、この書評の終わりでキンズリーが言っているように、ブルックスも本当に保守か? と思わせることがある。ついこの前は同性婚支持のコラムを書いていたし。例えて言えば朝日新聞に福田和也が連載を持っているようなものか。(福田和也が本当に保守か? という問題も含めて。)

私がこのコラムニストが好きなのは、アメリカの保守系の論客がどのように理論武装するか、よくわかって面白いから。アメリカの政治評論家は、政治思想に根ざして理論的に考えられる人が多く、日本人にはよくわかりにくいアメリカ特有の保守思想も、それなりに理の通る考え方をしているのである。彼の意見に同意することは実際はそんなに多くないが、その理論武装の部分が読んでいて面白いのである。また、スタンスの全然違うリベラルの読者に保守的な議論をふっかけるレトリックにも興味がある。

さて、この書評、NYTのコラムニスト事情の紹介にもなっている。もう少しキンズリーの書評から引用しよう。

There is a prize for being the liberals' favorite conservative, and Brooks has claimed it: a column in The New York Times. With Brooks, The Times continues its probably unintentional experiment in reinventing the political column. First came Frank Rich, who added culture, high and low, to the traditional tired stew of Washington concerns. Maureen Dowd added psychiatry -- trying to understand politicians as real people, usually not to their advantage. Thomas Friedman added parables, circling the globe in search of small but sturdy anecdotes to support huge structures of metaphor.

ここでは、NYTのコラムニストの特徴をよくまとめている。私の印象も含めて簡単にまとめると、
フランク・リッチ − 文化ネタ、政治 (この前マイケル・ムーアの新作映画の評を書いていたのはこの人)
モーリーン・ダウド − 政治家の人物紹介 (リベラルの人たちの心情をストレートに代弁している人。最近はブッシュ大統領への憎悪の一点に集約されるが。)
トーマス・フリードマン − 身近なエピソードを通して語る国際政治ネタ。(根はリベラルだと思うが、同時多発テロ以来、結構ネオコン寄りになってきた。ローカルな例を使って国際関係の現象を語るテクニックは確かにうまいが、時々危ういなと思うこともある。そんな点も含めて、日本で言うと船橋洋一のコラムに内容もスタンスも似ていると思う。)
これに、長年一人で保守論陣を張ってきたウィリアム・サファイア、経済ネタで日本でも有名なポール・クルーグマン、もと日本支局長のニコラス・クリストフ、それからニューヨークのローカルな話題についてよく書いているボブ・ハーバートで、コラムニストが勢揃いとなる。

このようにコラムニストのポジションがわかってくると、個々のコラムを読んでアメリカの論断の流れのようなものがつかめてきて面白い。この人がここまで言うのか、と考えたりする意味で。たとえば、最近ゴア元副大統領が演説で辛辣なブッシュ批判をして話題になったが、その演説の絶叫スタイルがあまりに大人げないというので、筋金入りのリベラルのモーリーン・ダウドもちょっと引いた、とか。あと、フリードマンを読んでいると、アメリカの国際関係のジャーナリストのちょうど中道の人がどう考えているかの目安にはなる。

また、NYTのオピニオン欄はそれに加えて寄稿欄がある。だれでも寄稿すれば載るというのではなくて、ある程度その道の専門家と言える人々の中から選ばれるようだ。日本絡みでは『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワーや、昭和天皇の伝記を書いたハーバート・ビックスなどの寄稿が載っているのを見たことがある。どちらもピューリッツァー賞受賞者なので一応権威があるのだが、他に誰かいないものか。

ニューヨークタイムズの社説・オピニオン欄は、簡単な登録をすればすぐ読めるので、興味のある方は読んでみてはどうだろうか。

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May 25, 2004

ケリー+マケイン

昨日のブッシュ大統領の演説は、今までの政策に変更なしと強調していたのだが、Slate.comでは早速、現実を直視しないということで"Magical History Tour"などと揶揄されている。その一方、民主党陣営では、ケリー氏の副大統領候補にマケイン上院議員を選ぶという意見が加速している。
なんとヒラリー・クリントン氏がマケイン氏支持を表明した。
ヒラリー氏のコメント。

I've spoken with Senator McCain and he assures me he's not interested, but you know, we'll see what happens.

民主党内に向けたアドバルーンの意味もあるのだろうが、これはひょっとするかもしれない。ちなみに、副大統領候補の本命は指名争いを演じたエドワーズ上院議員といわれているが、私はフロリダのグラム上院議員という線もあるのではと思う。フロリダ出身で、選挙の行方を決する州で選挙戦を有利に運べる上、上院情報委員会に属し、外交・軍事・諜報活動などに通じているから、チェイニー副大統領相手に外交面での失点を攻撃するには適任だと思うから。

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「亀井秀雄の発言」

拙サイトが「亀井秀雄の発言」で紹介されました。
「同時代への発言」ページの目次から、「マスメディアの『テロリズム』No. 3」をクリックすると読めます。先日紹介した亀井氏の「2ちゃんねる」論の続きも読むことができます。特に、戦前のプロレタリア文学の「壁小説」と絡めた「2ちゃんねる」論は非常に面白いです。また、サイトの他のエッセイも、海外における日本文学の研究、また歴史教科書問題など、読みごたえのあるものが多数あります。

「亀井秀雄の発言」を見て来られた訪問者の方へ。
私のニューヨークタイムズの人質事件報道についてのエッセイはこちらです。
 また、文学関係者の方は、日本文学の海外紹介について書いたエッセイ(ここここ)もご一読ください。日本文学の翻訳事業は、非常に意味があると思っています。ぜひご支援ください。(「支援」といっても文化庁の事業ですので一般人に何ができるというわけではないのですが、日本の文学作品が翻訳され、さらに出版され続けることの重要性をできるだけ多くの人に知っていただきたいと思っています。)

 ご意見、ご感想はコメント欄かメールで。
(一部編集済)

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May 24, 2004

北朝鮮列車爆破は暗殺未遂?

朝鮮日報(英語)によると、北朝鮮当局は、先月の列車爆破事故は反政府勢力による金正日暗殺未遂だったと結論づけた模様。
なお、犯行には携帯電話が用いられたため、平壌では5月19日から、20日からは北朝鮮全域で携帯電話の使用が禁止されているらしい。
(via North Korea Zone)
ということは、小泉訪朝中の地下鉄爆破も同じ勢力が絡んでいるのだろうか。

p.s. 大統領の演説は少し見たが、あれじゃやらなくても同じだった。

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サブタイトルを変えてみた。

最近の"The Simpsons"のエピソードから取りました。

言うまでもなく、"The Simpsons"はアメリカの長寿アニメ番組。ずいぶん長いこと続いていますが、高い人気を維持している。

このエピソードは、ミスター・バーンズが町のメディアを買い占めて、それに対してリサがガリ版新聞で戦うというストーリー。リサは町のメディアには流れないニュースを自家製新聞で伝え、ミスター・バーンズに抵抗する。ミスター・バーンズは、金と権力にものを言わせてリサにありとあらゆる圧力をかける。リサは負けそうになるのだが、最後には町中の人がリサを見習って自分の頭で考え、自家製の新聞を書き、配達するようになって、ミスター・バーンズもついに負けを認めてしまう。エンディングでは、そんな町の大勢の人たちが、自分の手作り新聞を配達するシーンを背景に、父のホーマーがこの一言を言う。「大物一人が全部のメディアを操るかわりに、千人もの変わり者が自分の役にも立たない意見をコピーして(配って)るよ」

私は"The Simpsons"のファンではないのだが、このエピソードは社会風刺が効いていて面白かった。FOXの番組ながらルパート・マードックを名指しで皮肉るシーンがあって、これも感心。
でも、このせりふ、blogの世界をよく表していると思いませんか?

参考:NYTの記事; 番組最後の場面のテキスト起こし+おまけ(誰も考えることは同じですね)

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追記:マイケル・ムーアなど。

ダバディ氏の「見てから自分の意見を考えてください」というご意見はごもっとも。映画を実際に見る前にいろいろと論評するのは確かに意味がないので、この映画についての意見は、実際に見るまで保留します。
(しかし、アメリカ国内では配給会社の問題があるので見られるのはいつになることやら。)

New York Timesのほうには、Frank Richによる『華氏9/11』の映画評が載った。(英語、nytimes.comの登録が必要。)結構好意的で、これを読むと、確かに政治的に彼に賛成するかどうかはともかく見るに値する映画、という感じがする。

でも、この前のエントリーにも書いたのだが、今のアメリカ、40%はブッシュを強く支持する保守派、40%はブッシュ不支持のリベラル派で、この80%は何があっても意見を変えることは考えられない。で、どちらにも転ぶ可能性があるのは残りの20%だけ。真ん中の20%の争いだから、民主党のケリー氏が共和党のマケイン上院議員を副大統領に指名するという掟破りの一手を使うのではという噂が絶えないわけである。(今日の政治討論番組では、ケリー=マケインの組み合わせは99%実現不可能だが、もし実現したらブッシュ=チェイニーに間違いなく勝てるという意見で一致していた。)

この2派の対立は根が深い。保守派はブッシュ批判を「リベラル・メディアの陰謀だ」といって耳をふさいでしまうし、リベラルの大統領に対する感情は軽蔑や嫌悪を超えて憎しみに近いものがある。この分裂には、たんなる政策の問題を超えて、政教分離の問題(要するに宗教がどれだけ政治に絡むべきか)、文化戦争、教育問題などが絡んでいて、すぐには解決しそうにはない。アメリカの一番の問題は、この2つのグループの間に全く対話が成り立っていないことにある。私の友人には(大学関係と言うこともあって)リベラルな人が多く、ブッシュ大統領の政策を厳しく批判するのだが、もしそれだけ不満があるんだったら、なぜ2000年にブッシュに投票し、今回もブッシュに投票するだろう人々に届くメッセージを考えようとしないのだろうかと思う。

アメリカ以外の先進国での反米主義は、アメリカのリベラル派とは話が合うと思う。でも、問題は、国民のうち保守的な40%はこの種の批判には耳すら傾けないことにある。この人たちは、マイケル・ムーアの顔を見るだけで「ああ、例の左翼の」と言って話すら聞かないと思う。

反米の人たちに聞きたい。この保守派の40%の人たちに、どんな言葉で語りかけますか。
その答えが見つかったら、ノーベル平和賞ものだと思うのだが。

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May 22, 2004

日朝首脳会談

今回の会談は、急に浮上してきた話で渡航制限・経済制裁などの条件が整う前の訪朝だったので、日本としては切れるカードが限られていたのが問題だったと思う。ではなぜ予定より早まったのか。一つは、現在の世界情勢を見ての判断。アメリカとしては、在韓米軍をイラクに派遣というニュースが象徴的に示すように、イラク情勢で北朝鮮どころではないから、日本に事態を進展させるよう圧力があったのかも知れない。もう一つは、小泉氏独自の判断。参院選前にポイントを稼ぐため、とか。もし後者だったとしたら、今回の訪朝は誤算だったと思う。でも前者だったとしたら、仕方のないところかもしれない。
また、ジェンキンス氏の問題も、現在のアメリカは囚人虐待事件などで軍紀の乱れが問題になっているから、過去の軍紀違反を恩赦するというのはなかなか難しいんだろうと思う。それがブッシュ大統領の政治判断で何とかなるような問題か、というのはよくわからない。

何ともいえない結末だったが、希望はあると思う。なるほどと思ったのが、安倍晋三氏の「入港禁止法案、成立方針変えず」という趣旨の発言。これからも交渉が続いていくわけで、カードを増やしておくのは意味がある。これからも、不明者調査などで進展がなかったら、圧力をかければいいのだから。

北朝鮮が外交で日本を手玉に取っている(ように見える)のはなんとも歯痒いが、小泉氏は限られたオプションの中でよくやっているように思う。現状で、他にどんな手が取れたかはわからないし、過去の自民党の政治家だったらここまで持ってこれなかったのは明らか。また、現在の民主党では小泉氏の代わりになるとは決して思えない。

ともかく、蓮池さん、地村さんのご家族には早く日本に慣れて、幸せな家族生活を始めてほしいと思う。そして、曽我さんの家族、また何百人といわれる特定失踪者の行方など、拉致問題が完全解決する日が来るまで、この問題を幕引きさせてはならない。

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ムーアの「華氏9/11」がパルムドール受賞。

でぶで、粗野で、欲張りで、馬鹿で、野心的で、無知なアメリカ人のマイケル・ムーアがカンヌ映画祭の最高の賞を受賞してしまった。リンクはこちら (CNN、英語)。
まあ、映画自体は彼の「ボウリング・フォー・コロンバイン」よりも劣っているというし、彼の政治スタンスがフランスの審査員に受けたということだろう。(追記:審査員9人のうちアメリカ人が4人、フランス人は1人とのこと。)アメリカでの評価は分かれている。Slate.comに主要新聞の評がまとめてある

ブッシュ政権を弁護していうわけではないが、アメリカの世論が真ん中でまっぷたつに割れている現在、彼のような批判では、保守派は耳をふさいでしまうだろうし、リベラルは前に聞いたことある批判ばかりだし、あまり意味がないとは思うのだが。ムーアを担ぎ上げてるフランスだってイラク戦争では国益に従って動いただけで、反戦の大義があるとは思えないし。

先日マイケル・ムーアについての皮肉たっぷりのコメントを引用したクリストファー・ヒッチンスが、これもSlate.comに、ムーアや囚人虐待事件で激しく追及を続けているThe New Yorkerのサイモア・ハーシュへの批判を書いている。彼らは、テロにどう対抗するかという対案を決して出さないから、そのときの結果だけ見て批判をするのはご都合主義ではないか、という批判だ。

アメリカのイラク戦争の経過を見ていて、もう少し何とかならなかったものかなとは思うし、囚人虐待問題は最悪の事態だ。でも、現実問題、アメリカが撤退しても中東などでテロがなくなるとは考えにくい。アメリカがイラクから即時撤退したら、イラク国内は内戦状態になり、混乱が続くだろう。たとえばこの前の首切り事件のような事態が横行することになる。そう考えると、ここでアメリカに負けてもらっては困るとも思う。一方で、アメリカの負け戦には関わらず、傍観しているのがいいという考え方もある。アメリカの覇権主義が終わっても結構という考え方もあるし、アメリカはこの戦争を機に衰退の一途をたどるから、どうしても仕方がないという悲観的な見方も私の知り合いの間では聞かれる。まあ、現状に不満があるならば、具体的にどうしたらいいのか、大局的な見地に立った意見を読んでみたいとは思う。

ともかく、現在の世界情勢の混乱が、映画祭にも影響している、という話でした。

p.s. 今日紹介した記事のうち2つはSlate.comのもの。このサイトは、アメリカの政治や文化などについて、なかなか面白い記事を揃えているウェブマガジンである。元トルシエの通訳だったフローラン・ダバディ氏のブログでも紹介されていた。ダバディ氏はブッシュの失言録がお気に入りのようだが、このサイトにはアンチ・ケリーのMickey Kaus氏によるkausfilesもある。kausfilesの過去ログを見れば、ケリー氏の過去の問題やスキャンダルが山ほど出てくるので、そちらに興味がある向きは参考にするといいだろう。

p.p.s. 『イノセンス』は早く見てみたい。でもその前に『攻殻機動隊』を見なくては。

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May 20, 2004

マイケル・ムーア

「滑稽なのはあかぬけていて、洗練されてるヨーロッパ人なんだよね。まあ私もそのあかぬけていて、洗練されてるヨーロッパ人の一人として言うんだけど。彼らは、アメリカ人はでぶで、粗野で、欲張りで、馬鹿で、野心的で、無知だと思っている。それで、自分たちの仲間として、自分たちの代弁者として選んだアメリカ人が、これらの特徴をすべて体現しているんだから。」

—クリストファー・ヒッチンス (MSNBCの番組にて。via andrewsullivan.com

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May 14, 2004

更新はあくまで不定期ですので。

民主党の党首交代やら小泉訪朝やら、日本の政局も動いてきましたね。米国の方も捕虜虐待疑惑で毎日目が離せない状況で、コメントしてみたい事柄もいくつかあるのですが、この数週間ほどは、更新がさらに不定期になります。ご了承下さい。
 しかし、小泉訪朝はどのような結末になるのやら。北朝鮮・拉致問題関係のニュースを追っているBlogサイト、新・ニッポンからの通信を紹介しておきます。

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May 08, 2004

亀井秀雄氏、「2ちゃんねる」を発見。

亀井秀雄氏のウェブサイトにイラク人質事件報道の分析が載っている。(via 酔夢ing voice
亀井氏は近代日本文学研究の大御所的存在。氏の研究書は博識と緻密な読みでいつも非常に学ぶところが多いのだが、このサイトでは日本のメディアの言説、それから大学人の「アピール」などが、氏の文学研究と同じような緻密さで読み解かれている。本業でどれだけ「批判的に読む」訓練をしていても政治的発言になると突然単純なレトリックに堕落してしまう学者が多い中、このサイトでの亀井氏の姿勢は模範的である。(もちろん、自戒の意味を込めて言うのだが。)

また、亀井氏のような立場の学者がこういう形で小森陽一氏らの「アピール」を批判することは非常に有意義だと思う。内容に賛成、反対というレベルでなく、研究者が自分の政治的立場を批判的に考えることが出来ていないという現状に対して警鐘を鳴らす、という意味において。

また、亀井氏が最近2ちゃんねるを「発見」したというくだりも面白い。2ちゃんねるそのものには批判的ではなく、むしろ知識人が2ちゃんねるを毛嫌いする理由に興味を持たれているようだ。

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May 06, 2004

ブッシュ氏の「拷問部屋」発言録

Slate.comで、コラムニストのWilliam Saletanがブッシュ大統領の「拷問」に関する発言をまとめている。このリストには、今回のイラク人「虐待」事件についてのコメントに加えて、1年前の終戦宣言以来「サダムがいなくなったおかげで、イラクにはもはや拷問部屋はなくなった」と言った演説が数多く含まれている。
今まで拷問・レイプはフセインの専売特許と言ってきた手前、今回の事件ではアメリカの面目が丸つぶれである。Saletanのコラムは、ブッシュ発言と今回の事件の経緯を時系列に並べただけだが、その皮肉がかえって鮮明になっている。

(もちろん、「虐待」と「拷問」は別物である。ラムズフェルド国防長官は今回の事件は「拷問とは言えないだろう」という見解を出している。一方、先日紹介したThe New Yorkerの記事はタイトルから「拷問」と言っている。もし、この記事が示唆している通り、この事件に諜報員が関与していて、情報を引き出すために意図的に虐待が行われたとしたら、情報を引き出すための拷問という用語の方が適当だろう。このへんの用語もこれからの争点になる。)

さて、アメリカのタカ派がイラク戦争を支持する理由として、独裁のイラクを「解放」するためというのがあった。その背景には、アメリカの方が民主的で、自由な国だという前提がある。しかし、今回の事件は、アメリカの占領がイラクの独裁政権と実際はそれほど変わらなかったという印象を与えてしまった。大量破壊兵器に続き、アメリカは戦争を正当化する理由をまた一つ失ってしまったのだ。しかし、「アメリカはイラク人に民主主義を教える義務がある」という思想を方向転換するのはなかなか難しい。今回の事件の反応を読んでいると、アメリカ保守派の反応として、「アメリカではこのような事件が起こると公開で調査し、違反者は裁かれるところがアラブ諸国とはちがう」というような見解がいくつか見られた。ここまではただの見解で、確かにそうかもしれないのだが、それに付け加えて「この事件を機会にして、アラブ諸国の人々に民主主義とはなんたるかを教えてあげよう」と言う人々がいるのは驚きである。別の記者は、ブッシュ大統領が、アラブテレビ局へのインタビューで、「このテレビを見ているアラブの人々にわかって頂きたいのは、アメリカではこれらの人々は調査の上裁かれることだ」と繰り返し言うのは、事態を収拾するという点から見れば、かえって言い訳がましく、高圧的な印象すら与えてしまうのではないかと指摘している。こんなときに言葉の端々に現れるアメリカの自己中心的な世界観には、どうしても違和感を覚えてしまう。

もうひとつ、この記事で興味深いのは、今年の1月21日の時点でCNNが虐待疑惑についてすでに報じていること。今回これだけ反響が大きかったのは、やはり写真の威力が大きかったからだろうか。

追記:ブッシュ大統領が謝罪しましたね

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May 05, 2004

タグバ報告書:全文公開

アントニオ・タグバ少将によってまとめられた、イラク人虐待事件に関する米軍内部の報告書の全文がこちらで公開されている。(via andrewsullivan.com)
3分の1ほどいったところに、調査者がまとめた虐待行為の一覧がある("Punching"で検索して、最初のヒットから下)。一部新聞で報じられているような内容はこの報告書にすべて出ているので、これらの件については捜査が進行中ということで間違いない。また、捜査はさらに広がる様相を見せている。

昨日、今日と、The New Yorkerに暴露記事を書いたサイモア・ハーシュがテレビに登場している。この人、日本でいうと文芸誌のような位置づけのThe New Yorkerにおいて、一人でテロ・戦争関係の調査ルポを書いている人。過去にもタカ派のリチャード・パールがイラク戦争を通して直接利益を受けていたのではないかと指摘して、パールに「アメリカ人でテロリストに一番近い男」と呼ばれたジャーナリストである。テレビ番組での論調は、だいたい雑誌の記事と同じだが、出演中、笑いを押し殺せないような仕草を何度か見せていた。「どうだ、この一件では勝っただろ」と思っているに違いない。一般の、軍の正義を信じている素朴なアメリカ人がテレビを見たら、こいつは不謹慎な、アメリカ軍の足を引っ張る奴と思うだろう。でも、軍の組織的関与があったかなかったかという点に関しては、組織的関与を指摘している彼の方がいまのところ優勢に見える。一方、Wall Street Jounralに政権側の立場から反論するコラムが載ったが、いまいち説得力がないように思えた。

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May 04, 2004

A catastrophe.

イラクの旧アブグレイブ刑務所のイラク人虐待事件。知れば知るほど暗澹たる気分になってくる。
事実報道については、この事件が明るみに出る発端となったCBSテレビの "60 Minutes II"での報道や、The New Yorkerにでたサイモア・ハーシュの記事の内容が日本語のメディアでも紹介されている(たとえばここここ)。

今日のタイトルに書いたように、この事件はアメリカの対外イメージに壊滅的な打撃となるだろう。なぜか。
 CBSテレビのリポートでは、米陸軍のキミット旅団長が「一部の兵士たちの行動で15万人の米兵全体を判断しないでほしい」と訴えている。つまり、この虐待は一部の兵隊が勝手に行ったものであり、軍は組織的に関与していないというわけだ。しかし、The New Yorkerの記事に引用されている米軍の内部報告によると、この虐待は突発的なものではなく、むしろCIAなどの諜報機関によって、情報収集のために組織的に行われた拷問だったとされている。前の陸軍将校の「一部の兵隊の勝手な行動」という言い訳はもちろん通用しなくなる。また、これは氷山の一角で、似たような報告がこれからも次々出てくる可能性もある。米陸軍で、捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約違反が繰り返し起こっているとしたら、人権侵害行為、戦争犯罪とも言える事態である。
 また、写真や、The New Yorkerに報告されている虐待はどの文化でも言語を絶する行為だが、特にイスラムの文脈ではその屈辱が数倍にもなることばかりである。同性愛などはイスラムでは禁止されている性行為だし、またイラク人男性が裸で屈辱的な行為をしているのを女性の米兵が見てへらへらと笑っているというのは、マッチョなイスラム文化では傷口に塩を塗るようなもの。The New Yorkerの記事に引用されている大学教授は、これらの虐待があまりにもアラブ世界の人々の屈辱感覚のツボを押さえているので、アメリカ人はたんなる無知でイラク兵を虐待しているのではなく、イスラムの宗教や文化を理解した上で彼らにとって最も屈辱的かつ苦痛な行為をさせたとアラブ世界で受け取られるのではないかと危惧している。事実、(あくまでもIFの話だが)アメリカの諜報員が、情報を効果的に引き出すために拷問を指導していたとしたらありえることだ。
 アメリカ人はアラブ文化に無知というイメージは今までもあったが、もしこの見方が定着すると、アメリカ人はアラブ文化を理解した上で一番屈辱的なやり方でケンカを売っていることになる。このケンカ、アラブの過激派が買わないわけがない。もともと、アラブの人たちはアメリカが自分たちの土地にいるというだけで屈辱を日常的に感じている。(ちなみに、小島信夫の「アメリカン・スクール」という短編小説は、米軍占領期に日本人が感じていた似たような屈辱感覚をユーモアと皮肉を交えながら実に的確に描いている。)この事件はアラブ人が感じている屈辱感を裏付け、強化するものになる。アラブのテロリスト集団は、この感情をバネに一般のアラブ人に自分たちへの反米テロへの支持を訴えていくだろう。そうなったら、アメリカが「イラク戦争はイラクの庶民を自由にするために始めた」とかいうたてまえは吹っ飛んでしまい、アメリカとアラブ世界の関係はほとんど修復不可能になる。
 事実関係はこれからどんどん明らかになるだろう。現在事実とされていることが否定されたり、この事件がそれなりに理解できる文脈が明らかになることはあるかもしれない。しかし、イメージ戦争という観点から言うと、これらの写真がアメリカに与えてしまったダメージは計り知れない。もう取り返しがつかないレベルかもしれない。この事態、アメリカはどう収拾するつもりなんだろう。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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