むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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May 29, 2004

ニューヨーク・タイムズ:コラムニストたち

このサイトをはじめの頃から読んで下さっている訪問者の方はもう知っておられると思うが、ニューヨーク・タイムズのコラムニストの中で私が特に面白いと思っているのはデーヴィッド・ブルックスである。彼は長年保守系(ネオコン系)雑誌、The Weekly Standardの編集者をつとめていたが、去年の9月からNYTのコラムニストになった。リベラルが多いNYTのオピニオン欄で、ウィリアム・サファイアと共に保守系コラムを連載している。また、公共放送PBSのNewsHourにゲストコラムニストとして参加したりしている。
この前、彼の近著 "On Paradise Drive" がNYTの書評欄で紹介された。書評者はこれも有名コラムニストのマイケル・キンズリー。

まず、ブルックスについてはこう言っている。

For several years, in the world of political journalism, David Brooks has been every liberal's favorite conservative. This is not just because he throws us a bone of agreement every now and then. Even the most poisonous propagandist (i.e., Bill O'Reilly) knows that trick. Brooks goes farther. In his writing and on television, he actually seems reasonable. More than that, he seems cuddly. He gives the impression of being open to persuasion. Like the elderly Jewish lady who thinks someone must be Jewish because ''he's so nice,'' liberals suspect that a writer as amiable as Brooks must be a liberal at heart. Some conservatives think so too.

「リベラルのお気に入りの保守論客」とはよく言われるところ。(ちなみに、「保守のお気に入りのリベラル論客」といえばFox Newsのアラン・コームスであろう。)保守というとFox Newsのビル・オライリーのように、問答無用なところがあるが、ブルックスの場合、きちんと自分の立場を論理的に説明する。最新の社会現象についてもよく調べて書いているし、NYTの中でも場違いな感じはしない。でも、この書評の終わりでキンズリーが言っているように、ブルックスも本当に保守か? と思わせることがある。ついこの前は同性婚支持のコラムを書いていたし。例えて言えば朝日新聞に福田和也が連載を持っているようなものか。(福田和也が本当に保守か? という問題も含めて。)

私がこのコラムニストが好きなのは、アメリカの保守系の論客がどのように理論武装するか、よくわかって面白いから。アメリカの政治評論家は、政治思想に根ざして理論的に考えられる人が多く、日本人にはよくわかりにくいアメリカ特有の保守思想も、それなりに理の通る考え方をしているのである。彼の意見に同意することは実際はそんなに多くないが、その理論武装の部分が読んでいて面白いのである。また、スタンスの全然違うリベラルの読者に保守的な議論をふっかけるレトリックにも興味がある。

さて、この書評、NYTのコラムニスト事情の紹介にもなっている。もう少しキンズリーの書評から引用しよう。

There is a prize for being the liberals' favorite conservative, and Brooks has claimed it: a column in The New York Times. With Brooks, The Times continues its probably unintentional experiment in reinventing the political column. First came Frank Rich, who added culture, high and low, to the traditional tired stew of Washington concerns. Maureen Dowd added psychiatry -- trying to understand politicians as real people, usually not to their advantage. Thomas Friedman added parables, circling the globe in search of small but sturdy anecdotes to support huge structures of metaphor.

ここでは、NYTのコラムニストの特徴をよくまとめている。私の印象も含めて簡単にまとめると、
フランク・リッチ − 文化ネタ、政治 (この前マイケル・ムーアの新作映画の評を書いていたのはこの人)
モーリーン・ダウド − 政治家の人物紹介 (リベラルの人たちの心情をストレートに代弁している人。最近はブッシュ大統領への憎悪の一点に集約されるが。)
トーマス・フリードマン − 身近なエピソードを通して語る国際政治ネタ。(根はリベラルだと思うが、同時多発テロ以来、結構ネオコン寄りになってきた。ローカルな例を使って国際関係の現象を語るテクニックは確かにうまいが、時々危ういなと思うこともある。そんな点も含めて、日本で言うと船橋洋一のコラムに内容もスタンスも似ていると思う。)
これに、長年一人で保守論陣を張ってきたウィリアム・サファイア、経済ネタで日本でも有名なポール・クルーグマン、もと日本支局長のニコラス・クリストフ、それからニューヨークのローカルな話題についてよく書いているボブ・ハーバートで、コラムニストが勢揃いとなる。

このようにコラムニストのポジションがわかってくると、個々のコラムを読んでアメリカの論断の流れのようなものがつかめてきて面白い。この人がここまで言うのか、と考えたりする意味で。たとえば、最近ゴア元副大統領が演説で辛辣なブッシュ批判をして話題になったが、その演説の絶叫スタイルがあまりに大人げないというので、筋金入りのリベラルのモーリーン・ダウドもちょっと引いた、とか。あと、フリードマンを読んでいると、アメリカの国際関係のジャーナリストのちょうど中道の人がどう考えているかの目安にはなる。

また、NYTのオピニオン欄はそれに加えて寄稿欄がある。だれでも寄稿すれば載るというのではなくて、ある程度その道の専門家と言える人々の中から選ばれるようだ。日本絡みでは『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワーや、昭和天皇の伝記を書いたハーバート・ビックスなどの寄稿が載っているのを見たことがある。どちらもピューリッツァー賞受賞者なので一応権威があるのだが、他に誰かいないものか。

ニューヨークタイムズの社説・オピニオン欄は、簡単な登録をすればすぐ読めるので、興味のある方は読んでみてはどうだろうか。

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» [書評]敗北を抱きしめて Embracing Defeat from HPO:個人的な意見 ココログ版
敗北を抱きしめて by ジョン・ダワー 思ったよりも長くかかったが、ようやく読了 [Read More]

Tracked on Sep 26, 2004 12:16:41 AM

Comments

むなぐるまさん、こんにちわ、ごぶさたしております、

ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」を読みました。ダワーがNYTに寄稿しているとは知りませんでした。やはり、米国においてダワーはかなりリベラルだという評価なのでしょうか?

Posted by: ひでき | Sep 26, 2004 12:16:12 AM

>ひできさん
 ダワーは昔から日本研究では優れた歴史家という評価でしたが、日本で言う論壇デビューのきっかけになったのが、ピューリッツァー賞受賞の「敗北を抱きしめて」だったわけです。

Posted by: むなぐるま | Sep 26, 2004 5:20:16 PM

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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