日朝関係:妥協の代償
日朝首脳会談が終わって、どうも小泉首相がいろいろと妥協しすぎたんじゃないかと思わせるニュースが多く入ってきている。今後の日朝交渉には朝鮮総連の代表が同席するとか、朝鮮総連の全体大会で首相の挨拶が代読されたとか、首脳会談の合意で「在日朝鮮人の差別をしない」という文面が盛り込まれた、とか。(もちろん差別はいけないことだが、勝谷誠彦氏などによると、これをきっかけに朝鮮総連の違法行為の取り締まり、引き締めができにくくなるということらしい。)それから、会議自体も、いろいろと儀礼的な面において小泉首相はことごとく軽く扱われたということも。
ここで大事になってくるのは、小泉首相が「北朝鮮の現体制がどれだけもつのか」という問題をどう考えているのか、ということだと思う。
この前の記事のコメントでのさぬきうどんさんのやりとりの中で、シカゴ大学教授のブルース・カミングス氏の、「北朝鮮は、たんなる共産主義国家ではなく、儒教的な道徳規範に基づいた国家なので、そう簡単には崩壊しないのではないか」という見解を紹介した。この学者はアメリカでは随一の朝鮮近代史の学者という定評がある人なのだが、近著のamazon.comのレビューを見てみると、読者から「北朝鮮に媚びている」「冷静な分析というよりは、感情に流された意見」などというコメントがついている。(この本は未読なのでこれらの評価が正当かはわからない。)しかし、この学者に親北派・媚北派というレッテルを貼る前に考えてみたいのは、彼が投げかけている「北朝鮮の現体制がどれだけもつか」という問題である。北朝鮮の姿勢はどうあれ、その問題そのものは一考の価値がある。もし、拉致問題は根本的には何らかのregime changeでしか解決しないのならなおさらのことだ。
もし金正日の政権があと1、2年しかもたないということならば、圧力をかけ続けて、政権の終わりを早めればよい。でも、経済的にどうであれ政権がこれから10年、20年ともつならばどうなるだろう。また、金正日政権がつぶれても、北朝鮮あるいは中国主導の形で朝鮮統一となったら、これもまたやっかいだろう。西尾幹二氏は、これから100年の東アジア情勢をどう見るかが大事と最近書いているが、着眼しているのはまさにこの点だろう。
実は、小泉首相は、政権がすぐにつぶれないと判断し、現在残っている問題だけは自分の手で解決したかったというのがその動機の第一だったのではないだろうか。どんなに強行策を取っても政権がつぶれないならば、朝鮮総連がどんなに悪であれ、とりあえずエンゲージしなければことが進んでいかない。しかし、もし長期的につきあっていくという方針だったら、外交儀礼のようなことはなおさら大事にしなければいけないのではないだろうか。また、朝鮮総連の違法行為の取り締まりも、筋を通すという意味では大事だと思う。
今回の小泉訪朝でしたさまざまな妥協の代償は何だったのだろうと考えざるを得ない。アメリカの意向があって動いているのかもしれないが、イラク情勢を始め、今のアメリカの政権の北朝鮮政策はいまひとつ読みにくい。でも、西尾氏が示唆しているように、自民党内にもなんとか拉致問題を幕引きしたい人々がいて、小泉首相がその意向を受けて動いているというという可能性はあるんだろうか。ここまでくると、自分の頭でよく考えてみるしかない。
追記:North Korea Zoneの最新の記事にいくつか面白そうな記事が紹介されている。
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