ムーアの「華氏9/11」がパルムドール受賞。
でぶで、粗野で、欲張りで、馬鹿で、野心的で、無知なアメリカ人のマイケル・ムーアがカンヌ映画祭の最高の賞を受賞してしまった。リンクはこちら (CNN、英語)。
まあ、映画自体は彼の「ボウリング・フォー・コロンバイン」よりも劣っているというし、彼の政治スタンスがフランスの審査員に受けたということだろう。(追記:審査員9人のうちアメリカ人が4人、フランス人は1人とのこと。)アメリカでの評価は分かれている。Slate.comに主要新聞の評がまとめてある。
ブッシュ政権を弁護していうわけではないが、アメリカの世論が真ん中でまっぷたつに割れている現在、彼のような批判では、保守派は耳をふさいでしまうだろうし、リベラルは前に聞いたことある批判ばかりだし、あまり意味がないとは思うのだが。ムーアを担ぎ上げてるフランスだってイラク戦争では国益に従って動いただけで、反戦の大義があるとは思えないし。
先日マイケル・ムーアについての皮肉たっぷりのコメントを引用したクリストファー・ヒッチンスが、これもSlate.comに、ムーアや囚人虐待事件で激しく追及を続けているThe New Yorkerのサイモア・ハーシュへの批判を書いている。彼らは、テロにどう対抗するかという対案を決して出さないから、そのときの結果だけ見て批判をするのはご都合主義ではないか、という批判だ。
アメリカのイラク戦争の経過を見ていて、もう少し何とかならなかったものかなとは思うし、囚人虐待問題は最悪の事態だ。でも、現実問題、アメリカが撤退しても中東などでテロがなくなるとは考えにくい。アメリカがイラクから即時撤退したら、イラク国内は内戦状態になり、混乱が続くだろう。たとえばこの前の首切り事件のような事態が横行することになる。そう考えると、ここでアメリカに負けてもらっては困るとも思う。一方で、アメリカの負け戦には関わらず、傍観しているのがいいという考え方もある。アメリカの覇権主義が終わっても結構という考え方もあるし、アメリカはこの戦争を機に衰退の一途をたどるから、どうしても仕方がないという悲観的な見方も私の知り合いの間では聞かれる。まあ、現状に不満があるならば、具体的にどうしたらいいのか、大局的な見地に立った意見を読んでみたいとは思う。
ともかく、現在の世界情勢の混乱が、映画祭にも影響している、という話でした。
p.s. 今日紹介した記事のうち2つはSlate.comのもの。このサイトは、アメリカの政治や文化などについて、なかなか面白い記事を揃えているウェブマガジンである。元トルシエの通訳だったフローラン・ダバディ氏のブログでも紹介されていた。ダバディ氏はブッシュの失言録がお気に入りのようだが、このサイトにはアンチ・ケリーのMickey Kaus氏によるkausfilesもある。kausfilesの過去ログを見れば、ケリー氏の過去の問題やスキャンダルが山ほど出てくるので、そちらに興味がある向きは参考にするといいだろう。
p.p.s. 『イノセンス』は早く見てみたい。でもその前に『攻殻機動隊』を見なくては。
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Comments
ここでアメリカに負けてもらっては困るとも思う。
アメリカが負けないことで何が得られるのでしょうか?
アメリカが同じ姿勢でいればいるほど憎しみの連鎖が深く長くつづいていくと思います。
アメリカが行っている行為は犯罪です。
アメリカがイラクから即時撤退したら、イラク国内は内戦状態になり、混乱が続くだろう。たとえばこの前の首切り事件のような事態が横行することになる
アメリカが居るから内戦状態になっているのです。
そのような事件が横行するのもアメリカが居るからです。
民間人が虐待されるのもアメリカが居るからです。
国連主導の統治が進むことを望みます。
Posted by: miyagawa | May 22, 2004 10:15:48 PM
> miyagawaさま
ご訪問ありがとうございます。
イラク戦争に関しては、誰もが意見を持っていると思いますし、その意見も深い信念になってしまっていることが多いのでなかなか議論にはならないと思いますが、一応答えてみることにします。
>アメリカが負けないことで何が得られるのでしょうか?
>アメリカが同じ姿勢でいればいるほど憎しみの連鎖が深く長くつづいていくと思います。
>アメリカが行っている行為は犯罪です。
アメリカが負ける、ということとアメリカが同じ姿勢でいる、ということは同義ではありませんね。アメリカの政府も、今は必死になって出口戦略を練っていることでしょうが、その中には、現状の路線を維持するというものもあれば、路線変更しても最低限の威信を保って名誉ある撤退をするというものもあるでしょう。
現在、保守派の論客、元軍人、ジャーナリストにも、現状路線の変更やむなしという声が出ています。
では、アメリカが負けないとはどういうことかと言いますと、例えば反テロの戦争(鎮圧でも取り締まりでも言葉は何でもいいですが。)9月11日のテロはブッシュ政権の結果ですか?違いますね。テロリストにとっては、アメリカの存在自体が犯罪なのです。そんなテロリストの言いなりになってはやはりまずい、と思います。
ブッシュ政権の政策(いわゆる「予防戦争」も含めて)と、反テロの戦争を切り離して考えるべきときに来ていると思います。ただ、反テロの戦争には大義があると考えるし、この考えに反対する国は少ないでしょう。
それから、
>アメリカが居るから内戦状態になっているのです。
>そのような事件が横行するのもアメリカが居るからです。
>民間人が虐待されるのもアメリカが居るからです。
これは、この前の人質事件で「自衛隊がイラクにいるから誘拐された」というのと似たロジックですね。
現在、アメリカ軍が暫定のイラク政権の警察を訓練しているが、その訓練がうまくいかなかったり、反乱軍になったりしているわけで、軍隊が存在しないわけです。軍事力の空白がイラクにできたらどうなりますか? 部族間の内戦が激化したり、トルコやイランなどの隣国が侵入したりして、政情が一気に不安定になることは間違いないと思います。今は米軍が駐留しているから他国が絡むことはありませんが。
国連主導の統治といいますが、残念ながら、今のイラクにあえて行こうという国はないと思いますよ。
私も、アメリカの権力というのは、世界情勢を不安定にしている要素のうちの大きなものだと思います。ただ、「アメリカが撤退すればすべて解決する」というのはあまりに現実離れしていると思います。個人的には、現在流通しているいわゆる反米論は、感情論ばかりで、ではどのような世界像を描くのか、という視座が欠けているように思います。
今回は長く書きましたが、このコメントの場でこのような議論を続けるつもりはこちらにはありませんのでご了承下さい。
Posted by: むなぐるま | May 22, 2004 10:53:30 PM