【NYT】アメリカ政治は部族社会
アメリカは今年が大統領選挙の年ということで、メディアも国内外の情勢が各候補の支持にどうつながるか注目して世論調査を発表したりしている。イラク情勢は予断を許さないし、国内でも失業率がなかなか改善しなかったりガソリンの値段が上がったりと、政権の支持率に影響を及ぼしそうな事件が多く起こっている。しかし、その割に世論調査の数値は動かない。ブッシュ氏とケリー氏の支持率が共に40%前後で「接戦」を演じ、第三党候補のネーダー氏が一桁。もちろんアメリカの大統領は選挙人の総数で決まるから、選挙の勝ち負けを知るには個々の州(特に"swing states"と呼ばれる接戦の州)の情勢を分析すべきなのだが、国民の支持傾向という面で全国の支持率を見ると、大事件があってもあまり変化がない。
この点について、デーヴィッド・ブルックスがNYTのコラム(6月5日付)で面白い論を展開している。最近の政治学の研究によると、アメリカ人は一般に若い頃の支持政党を一生変えないということらしい。普通、親が支持していた政党の支持者になり、ウォーターゲート事件などの大事件があっても支持政党を変えない。つまり、自分の政治思想に合った政党を支持するのではなく、とりあえず「自分と似たような人々」が所属している政党に自分も属し、その政党が喧伝する政治思想を信奉するようになるという。アメリカでの政党は、同じ政治思想を持つ人々の集まりではなく、むしろ一種のクラブのようなものだというのだ。
さらに、一度そのクラブに属してしまうと、自分の属するクラブに都合の良いフィルターを通して現実を見るようになってしまうと言う。ブルックスは次のようなデータを紹介している。1988年、レーガン政権が終わったとき、インフレ率が下がったかどうかを有権者に聞いた。実際は下がった(13.5%→4.1%)のだが、民主党の熱烈な支持者のうち「下がった」と答えたのはわずか8%にすぎず、50%は「上がった」と答えた。民主党員は、経済が悪化しているという先入観のため現実を見る目が曇っていたというわけだ。一方、共和党支持者のうち「下がった」と答えたのは47%と、現実を冷静に見ていた。しかし、クリントン政権の末期に同じようなアンケートを採ったところ、今度は共和党員が経済情勢を否定的に曲解していたということだ。
ブルックスはこのような状況を指して、アメリカ政治の状況を「部族社会」と呼んでいる。こう考えると、世論調査を取っても数字がほとんど変わらない現状がうまく説明できる。ブッシュ大統領の支持者は、昔から共和党員であり、共和党的世界観でニュースを見ているから、ブッシュ氏支持はそう簡単にはゆるがないというわけだ。民主党側も状況はあまり変わらない。さらに、ブッシュ氏は、イラク政策にせよ、国内政策にせよ、アメリカ全体よりも自分の支持層に向けた政策を取り続けているというのがもっぱらの評判だ。ブッシュ氏の演説を聞いていても、舞台がどこであれ、聴衆が誰であれ、アメリカ国民の40%の自分の支持者に語りかけているという感じがする。共和党支持層は「自分の仲間」という意識を強めるし、民主党支持層はブッシュ氏への嫌悪感を強める。そんなわけで、11月の投票までに何が起ころうと、政党支持が二極化している現状が変わらない限りこのまま接戦が続くだろう。
次の選挙の結果はともかく、このように国内が二極化している状況は気になる。自分の意見に反対する人々を議論を通して理性的に説得できる可能性が低いという現実が、なにをやっても無駄という雰囲気を生み始めている気がする。こうした現状は非常に困ったものだと思うのだ。
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Tracked on Jul 5, 2004 10:32:20 PM
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