レーガン・ジュニアの弔辞
今日午前、クリントン元大統領の肖像画のお披露目がホワイトハウスであったのだが、そこでブッシュ大統領がクリントン氏に向けたスピーチが話題になった。クリントン氏のことを、「暖かく、情熱的な人柄」であり、「公共政策について幅広い知識を持ち、助けを必要としている人々に対して情け深く、アメリカ国民が大統領に求める前向きな精神を持っていた」などと言ってべた褒めしたのだ。(CNN, NYT)
普段は何か批判されるとクリントン政権時代の政策のせいにすることが多いブッシュ大統領としては、このほめ言葉は何とも不思議。ほめ殺しなのか、はたまた民主党の大統領候補ケリー氏とは仲が良くないとされるクリントン氏に「敵の敵は味方」とばかりに援護射撃したのか、なんとも不思議なスピーチだった。どちらにせよ、クリントン氏はケリー氏に比べたら国民的人気、カリスマは段違い。もうすぐ自伝が出版されるのだが、その出版記念ツアーが大統領選挙よりも注目を集めてしまうのではといわれている。クリントン氏に注目が集まれば集まるほどブッシュ氏にとっては都合がいいことには間違いない。
いっぽう、先週の金曜日、レーガン元大統領の葬儀での実の息子、ロン・レーガン・ジュニアの弔辞が話題になっている。
その中で、新聞記事に引用され、テレビの政治番組などで何度もリプレイされているのはこの一節。
Dad was ... a deeply, unabashedly religious man. But he never made the fatal mistake of so many politicians wearing his faith on his sleeve to gain political advantage.
この部分が、現大統領にたいするあてこすりだというのだ。
先週一週間は、金曜日の国葬まで、一週間の間アメリカ国中レーガン氏を偲ぶムードで満ちていた。レーガン大統領は国民的人気のある大統領だったが、この一週間は「アメリカにオプティミズムを回復した大統領」「冷戦を終わらせた大統領」としてその功績を高く評価する特集番組が相次いだ。(国内政治的には、共和党の党是を大きく変更し、現在の方向性を決定した大統領とも言われる。保守的な社会政策など、リベラル層とは相容れない政策を持っていたのだが、この一週間はそうした批判のトーンは自粛気味だった。)
現政権がこのレーガンに対する好意的な世論を早速政治的なアドバンテージに変えたいと思うのは当然で、ブッシュ氏再選の選挙本部のウェブサイトでは、早速レーガン大統領の演説集を載せて、ブッシュ氏をレーガン氏の正当な後継者と位置づけようとしていた。しかし、レーガン家の人々は、現大統領に批判的は人々が多い。実際、ロン・ジュニア氏は1年以上前のsalon.comのインタビューにおいて、現ブッシュ政権を痛烈に批判している。このインタビューを読むと、ロン・ジュニア氏は政治的にはかなりリベラルで、父とは毛色が違う感じ。現在はMSNBCのニュース番組のリポーターをしているが、今のところ政治家になる希望はないといっている。
イラク戦争などの外交政策はもちろんなのだが、一番の問題は、実はES細胞を研究目的に使うかどうか、という問題だ。現政権では、ES細胞の研究利用は生命の尊厳に関わるとして、資金的にも利用できる細胞の数にしても制限が多い。一方、レーガン夫人のナンシー氏は、レーガン大統領自身がアルツハイマーであることを公表して以来アルツハイマー病治癒のための研究のサポートを続けており、ES細胞の研究利用の制限をはずすよう、運動してきた。現政権がES細胞の利用に消極的なのは、ブッシュ政権を支えるいわゆるキリスト教右派が、クローンなどのバイオテクノロジー、また人間の生命誕生のプロセスに科学的に介入することに反対しているため。BBCのこのニュースがこの辺りのいきさつをよくまとめてある。ロン・ジュニア氏の弔辞に戻ると、「父は敬虔な人だったが、自分の信仰を政治利用しなかった」というのは、キリスト教右派におもねるブッシュ大統領へのあてつけだったというわけ。また、先日のローマ法王謁見の際、アメリカ国内のカトリック層に自分の政策を支持するよう働きかけて欲しいと根回ししていたというニュースも関係しているのだろう。(この件についてはandrewsullivan.comのブログに詳しい記事がある。)
ブッシュ大統領の支持率が下がってきて、秋の大統領選にも厳しい見込みが出ている中、なかなか大統領の味方が見つからない様子。クリントン氏をほめたのも、先週のこのニュースと関係があるのだろう。(どう関係があるかというとうまく言えないのだが。)
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