2004年夏・アメリカのビザ事情
今日はアサヒ・コムの記事にコメント。あまりひどい記事ではないですよ。まあ、記者がニュースの本質をつかんでいる跡も見えないわけですが。
ビザ申請はまず指紋から 在日米大使館 (asahi.com 7月21日)
米国大使館は20日、テロ対策の一環としてビザ申請者からバイオメトリックス(生体認証)技術を使って電子的に指紋を読み取る新しい出入国管理システムを導入した。
米連邦捜査局(FBI)の犯歴データベースなどと照合、面接にすすめるかどうか、7〜8分で結果が出る。対象となるのは留学生、研究者、ジャーナリストなど。90日以内の商用や観光目的の渡航者は必要ない。従来3週間ほどかかったビザ発給が2日に短縮されるという
このアサヒ・コムの記事だけでは、短すぎていいニュースなのか悪いニュースなのかよくわからない。アメリカの入国管理は、9/11以後どんどん厳しくなっている。テロ犯人が学生ビザで入国し、ビザ失効後も不法滞在を続けていたことから、最初は学生ビザの取り締まりがとくに厳しかったのだが、最近は他のビザにも影響が出てきている。そういう流れの中、この夏にいくつかビザ申請の手続きが変わっている。その詳細は在日本米国大使館のウェブサイトのビザサービスのページを見ればわかるが、この全体像の中でとらえないとこの記事はよくわからない。
まず第一に、アメリカ国務省の政策により、今後発行されるすべての情報に生体情報を取り入れることが義務づけられることになった。アサヒ・コムの記事はこの政策の一環である。この政策により、ビザと本人の生体情報が入管で確認されることになり、今までより確実な身分証明が行われることになる。もちろん、指紋を採られるということにはどうしても不快感が伴う。でも、指紋を採られるのと、たとえば眼の光彩をスキャンするのと、パスポートを身分証明証をいつも持ち歩くのと、どう違うのかを考えると、あまり違いないような気がする。まあ、この心理的な印象は人により意見の分かれるところだろう。また、政府が個人の動きを逐一記録しているのが気に入らない、という向きもあろう。が、今回の措置はパスポート偽造しようとしている人でもなければ実質的な変化がないような気がする。アメリカはすでに機械で読み込み可能なパスポートを義務づけていて、パスポートの出入国の動きはすでにきっちり記録されているし、データの情報化も進んでいる。そういう意味では、アメリカ政府が自分の出入国記録を握っているのがいやだという人は、アメリカに入国しないほうがいい、というような状態になっている。もちろん、今回のボビー・フィッシャーの事件を見れば、アメリカの同盟国も情報交換しているから同じことだろう。結局、今住んでいる国から出ないくらいしか方策はない。
この件に関連して、米国内からのビザ更新サービスが廃止された。ジャーナリスト、学者などはアメリカ国内からビザの更新が出来なくなった。米国大使館のページによると、これは、新規ビザを生体情報を取り入れた新しいものにするための措置だと説明している。私はもう学生ビザではないので学生ビザの事情に疎いのだが、去年には学生ビザはすでに国内での更新は出来なくなっていたのではないだろうか。これは、私のように労働ビザを更新しなければならない者にとっては、面倒が又一つ増えたことになる。しかし、ここで効いてくるのが、上の生体情報取り入れによるビザ審査手続きの短縮化である。大使館ウェブサイトによると、いままではアメリカの大使館でビザ申し込みをすると6週間かかったのが、現在は1週間程度で処理できている、ということだ。今まで、私のように労働ビザをアメリカ国内で取得した人は、一度国外に出ると入国ビザの申請をしなければならず、短期帰国が事実上不可能になっていたのだが、電子化によって手続きが短縮するのなら、それも実現可能になる。更新ごとに帰国するのは面倒だが、一時帰国(短期滞在)自体が出来るようになったのはプラスという見方も出来る。
さらに米国大使館のビザサービスのページを見てみると、学生ビザの取得には$100の手数料がかかるようになったとか、9月には観光旅行者を含むすべての入国者から生体情報を取りますよ、とか、ある意味不愉快なニュースが並んでいる。とくに入国管理については、9/11以降、正直言って外国人は歓迎されていないよな、ということを肌身に感じるように感じることが多くなった。しかし、だからといって、アメリカが外国人をあからさまに締め出すまでにはまだ至っていない。外国で暮らしているとこの辺りの問題には非常にナーバスになったりするのだが、ここは合理的に考える必要があるというか、合理的に考える訓練をしなければいけないと自分に言い聞かせている。だいたい、入管で引っかかるようなことをしていなければ、時間とお金はかかってもいつかはビザが手にはいるのだ。特に、日本人は心配する必要はないと思う。それは、私の周囲にいる本土中国人の学生や学者たちが今まで通り生活している(ように見える)ことからもわかる。アメリカとの外交関係で言えば、中国との関係の方がやばいはずなのだが。(折に触れて、本土中国人の留学生は、日本人の学生に比べてしぶといというか、生命力があると感じることが多いのだが、それはまた別の機会に。)確かに、ビザの手続きに1、2ヶ月かかったり、ビザ更新の度にバカにならない手数料を取られたり、ビザ関係でストレスがたまることは多い。しかし、こういう時に浮かび上がってくるのは、なぜ自分は留学/海外生活しているのか、外国人としての不便な暮らしを強いられながら自分が得ているものは何か、というような実存的な問題だったりする。
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