むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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July 26, 2004

米民主党大会:マイケル・ムーアを隠せ!

今日は米・民主党大会が開幕。4日間の大会中にジョン・ケリー氏が党の大統領候補に正式に指名され、指名受諾演説をする。言ってみれば民主党が自分達の大統領候補をお披露目するパーティーだ。
 ニュース番組を見ていると、この党大会の民主党の戦略は、まだ候補を決めていない中道・無党派層をターゲットにすると言うことらしい。
 熱心な民主党支持者は今更言われなくてもケリー氏に投票するから、約20%といわれる、候補を未だ決めかねている層を説得しようという作戦だ。そこで、演説などでは、ケリー氏の軍歴や外交経験を強調し、「強いリーダー」というイメージを前面に出す。政策的には、財政赤字の削減など中道的な政策については言うが、例えば同性婚などリベラルな政策は言及しない。あからさまなブッシュ大統領の人格攻撃もしない。
 保守・穏健派の人々には、ブッシュ大統領の政策には反対だが、自国の大統領を「嘘つき」やら「戦争犯罪人」と呼ぶラジカル左翼の言葉には反発する人々が多い。特に、今年の前半は、反ブッシュ感情が先行し、民主党支持者のボルテージは上がったが穏健派からはかえって反感を呼んでいた。その反省からか、この党大会では、かなり穏健なトーンにしようということになっているらしい。今日はカーター、クリントン元大統領、ゴア元副大統領が演説したが、演説の内容をみると、本土防衛やら外交などのテーマが目立った。ケリー氏が大統領になっても、軍人、政治家としての経験をフルに生かしてテロに対しての戦いは全力で続けますよ、というメッセージを送り、国民に安心感を与えようとしている作戦が浮き彫りになる。
 イラク戦争についても、(朝日新聞の期待に反して?)反戦のメッセージはそれほど聞かれないだろうし、むしろ、「強いアメリカ」のレトリックを聞くことになるだろう。実際、ケリー氏も副大統領候補のエドワード氏も、上院議員として大統領にイラク戦争開戦の権限を与える決議に賛成票を投じているが、このことが民主党候補としての弱点というよりは、穏健派を安心させるポイントになりうる、というムードなのだ。クリントン元大統領の演説のハイライトで、「強さと知恵は矛盾しない」という一文があった。これはもちろん現大統領への強烈な当てつけなのだが、それ以上に、ブッシュ大統領の「強さ」とケリー候補の「小賢しさ」を対比しようとする共和党の戦略を牽制しているのだ。とにかく、「反戦」というメッセージは聞かれなかったから、そのようなメッセージを期待している向きには期待はずれに終わるだろう。民主党の岡田党首が民主党大会を見に来るそうだが、「民主党は自衛隊撤退を公約に参院選を戦いました」とか言ったらとても場違いだろうな。
 それにしても、今日のクリントン氏の演説を見ていて、この人は政治の天才だなと思った。「今我が国は分裂しているが、我が国の歴史では危機の時にはいつも団結した」、つまり、民主党こそがこの国を一つにまとめられるというのは、中道層にアピールするのにぴったりのメッセージだと思った。また、あれだけの政界の大物で、大金持ちのエリートなのに、(あの南部のアクセントのせいか)庶民に伝わる言葉を持っている。あるコメンテーターは、彼のレトリックは南部メソジストの牧師の語りだと言っていたけど、確かに独特のリズムがあるし、黒人文化の匂いもする。また、ステージ上の存在感、ロックスターのようなカリスマ性もある。ちょっと自己中心的なのが鼻につくけれど。でも、「ブッシュ大統領も、チェイニー副大統領も、私も、ベトナム戦争に行かなかった。ケリー氏も行かないというチョイスはあったが、『私を送ってくれ』と志願した」とかさらっと言えてしまうのが、天才的だと思った。政治ショーの演出家としては最高級の技術をもっている人だ。
 このような穏健派に売り込む方針のなか、極左やリベラルの政治家などはこの党大会ではそれほど大きな役割を与えられていない。あるコメンテイターによると、「変人の親戚は隠しておけ」ということらしい。この影響を受けているのがマイケル・ムーア氏である。今日は『華氏911』が1億ドル突破というニュースが入ってきて、民主党のヒーロー扱いをされてもおかしくないと思うのだが、ムーア氏の大統領批判はやりすぎだと思っている穏健派の反感を買わないように「ムーアを隠しておけ」という指示が出ているらしい。それでもニュース専門局のインタビューを受けて、いつもの通りのブッシュ・バッシングを繰り返していたが。

追記:今アメリカのテレビで話題になっている大統領選風刺FLASH. 見ていない方は必見。ケリー氏が何かあると「俺には3つも勲章があるぜ!」というのは今日のエントリのテーマとも共通するわけですが。

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Tracked on Jul 27, 2004 5:36:53 PM

Comments

お久しぶりです。
民主党大会のレポート、ありがとうございました。
クリントン前大統領の演説の上手さは、ヨルダンのフセイン前国王の葬儀での演説をNHKでみて実感しました。その時、クリントン大統領の弁舌は本当にずば抜けていると思いました。
むなぐるまさんのご指摘、他の凡百のメディアが全く捉えない、しかしすべて抜き切った(こんな言葉があるのでしょうか?)分析と報告だと思います。
失礼ですが、今後のレポート(大統領選挙を中心に)を楽しみにしています。よろしくお願いします。
最後に、日本のテレビ(フジTV系)では、中村座(中村勘九郎一座)のニューヨーク公演を大々的に扱っていましたが、アメリカでの反応はどうだったのでしょうか。私は、最近歳が歳なので、教育テレビなどで、日曜の夜、歌舞伎などをみると、歌舞伎のあの派手さに感じ入ってしまうのです。今は市川海老蔵の襲名披露の舞台が続いていますから。
私は決して歌舞伎ファンではないし、歌舞伎座に行ったこともなく、一度も生の舞台を見たことがありません。

Posted by: I love さぬきうどん | Jul 27, 2004 2:32:57 PM

>I love さぬきうどんさん
コメントありがとうございます。励みになります。これからも宜しくお願いいたします。
 NY歌舞伎の反応については追っておりませんでした。こういう内容も本来は書きたい内容なんですが…。

Posted by: むなぐるま | Jul 28, 2004 10:32:46 AM

素晴らしい~~~!
私も同じような事を感じましたが
これからも 遊びに来させてください!

今晩 Larry Kingの番組にクリントンさん
出演ですね。楽しみです。

Posted by: ジュエリ | Jul 31, 2004 6:47:10 PM

>ジュエリさん
コメントありがとうございます。超亀レスですが。(というか、まだ見てますか?)
共和党大会についてはまた何か書きたいと思います。

Posted by: むなぐるま | Aug 24, 2004 5:02:59 PM

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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