『華氏911』リンク集
『華氏911』についてだが、前のエントリから自分の考えはあまり変わっていない。現在のアメリカを写すスケッチとしては面白い素材がたくさん入っているから、それだけでも見る価値はある。(映画評をいくつか読むと「映画の一番説得力のある場面は、ムーアが素材そのものに語らせているところ」という意見が多かったが、その通りだと思う。)また、マイケル・ムーアという人物自体、保守とリベラルで真っ二つに分裂した今のアメリカをよく表していると思う。ただ、この映画を「事実」と思ってしまう人というのは、反ブッシュに凝り固まって物事が見えなくなっている人か、日頃よっぽどニュースを見たり、新聞を読んだり、ものごとを考えたりということをしない人だと思う。日本でも話題になると思うので、少し距離を置いて観察してみて下さい。(特に、朝日系のメディアが絶対大騒ぎするだろうから。)
また、日本人の視点から見たら、ムーアのアメリカ中心的な視点も鼻につくと思う。例えば、「有志連合 (coaltion of the willing)」には、パラオ、コスタリカ、アイスランドなど、ろくに軍隊もない国も入っていますよ、という場面があるのだが、そこでのパラオの紹介の仕方なんて、「ちびくろサンボ」真っ青の、ステレオタイプ丸出しの表現の仕方だった。こんなの、アメリカ黒人やらヒスパニック相手には訴訟が怖くて絶対やれないだろうが、外国人だったら平気なのだ。こういうのには日本人はもっと怒ってもいいと思う。
それから、マイケル・ムーアは、いつもその時思ってることをあまり考えずに言う人だから、結構ぼろも出ている。このSalonの記事によると、9/11テロが起こった直後、彼はこう言ったらしい。
Am I being asked to believe that this guy who sleeps in a tent in a desert has been training pilots to fly our most modern, sophisticated jumbo jets with such pinpoint accuracy that they are able to hit these three targets without anyone wondering why these planes were so far off path?これはオサマ・ビンラーディンを犯人扱いした政府発表を疑問視しているわけだが、実際この通りだったのは周知の通り。映画を見たら、この人がジャーナリストとしてはけっこういい加減だということは納得してもらえると思う。
さて、この映画についてのアメリカの論調をまとめようと思ったのだが、なかなか読み応えのある批評がいくつかあるので、面白い記事へのリンクと紹介にとどめておく。
ちなみに、あるトピックについての英語のニュースを検索するのに、最も手軽なのがGoogle News。ここで検索すると、世界中のあらゆる新聞、雑誌、ネットマガジンから関連記事を見つけることが出来る。ただ、ヒット数が多すぎるのが難点。こういう時役に立つのが、Slate.comのサイト内検索。そもそもSlate自体が結構読み応えのあるサイトなのだが、このサイトでは毎週各新聞・雑誌の記事をダイジェストしながら紹介するコーナーがあるので、ムーアの映画のような話題性の高いトピックの場合は、主要メディアへのリンク集としても使える。『華氏911』でも
Michael Moore Returns
Moore Politicizing
の2つの記事がヒット。アメリカ国内メディアでの反応が大まかにつかめてとても便利。以下は、このサイトで紹介されている記事とこのサイト独自のコラムを中心にまとめた。
まずは、メジャー新聞・雑誌の映画評。
FILM REVIEW; Unruly Scorn Leaves Room For Restraint, But Not a Lot (New York Times)
'Fahrenheit 9/11': Connecting With a Hard Left (Washington Post)
A First Look at "Fahrenheit 9/11" (Time)
Eviction Notice (Village Voice)
Fahrenheit 9/11 (Roger Ebert - Chicago Sun TImes)
けっこう好意的なものが多いのは、映画評論家の人達に民主党支持者が多いから?
"Fahrenheit 9/11": Nay! (Salon.com)
Proper Propaganda (Slate)
この二つは内容のある批評。興味のある方は一読を。特に後者は私の印象に近いかも。
Libel Suit 9/11 (Slate)
ムーアが「この映画を貶す奴は名誉毀損で訴えてやるぜ!」と評論家たちをテレビ・新聞などのコメントで公然と脅しているという話。この記事では、「マイケル・ムーアは事実を曲解している」といった程度では名誉毀損にならないと言うことはああいう映画を作った本人が一番よく知っている、と書いていますが。また、ムーアを「百万長者のハリウッドの有名人」と考えれば彼の行動パターンが理解できるというのも、重要な視点かも。名誉毀損と言えば、
Unfairenheit 9/11: The lies of Michael Moore. (Christopher Hitchins - Slate)
この著者がムーアとのテレビでの公開討論を申し込んでいるらしい。ムーアはテレビ出演は自分の思い通りの構成にならないものは出演しないらしく、実現の確率は低いが。ともかく、ヒッチンスはムーアとは犬猿の仲。この批評も実に辛辣。興味のある方はぜひ一読を。特に、次の箇所なんか、英語で知識人がけんかを売るときの見本みたいな文章です。
To describe this film as dishonest and demagogic would almost be to promote those terms to the level of respectability. To describe this film as a piece of crap would be to run the risk of a discourse that would never again rise above the excremental. To describe it as an exercise in facile crowd-pleasing would be too obvious. Fahrenheit 9/11 is a sinister exercise in moral frivolity, crudely disguised as an exercise in seriousness. It is also a spectacle of abject political cowardice masking itself as a demonstration of "dissenting" bravery.ムーアはヒッチンスを名誉毀損で訴えるのだろうか?
Under the Hot Lights (Newsweek)
著者はニューズウィークの政治コラムニスト。この映画の事実関係に関する検証記事。この映画を見て「本当?」と思った人は一読を。まとめると、映画に出てくるサウジ王家との関係やら、軍事産業との癒着などは、この人に言わせれば、まあよくあることで、違法行為といえるほどではない、となるでしょうか。例えば、ブッシュ政権との癒着が取りざたされるカーライル・グループのスポークスマンによると、傘下のユナイテッド・ディフェンス社は110億ドルのロケット・システムの契約を取っていたが、ブッシュ政権によってキャンセルされて大損している、とか。でも、アメリカ政府とロビイストの関係をそもそも知らない人にはムーアの言っていることはショックかも。まあ嘘ではないわけだから。でも、民主党が政権を取ったからと言ってロビイストがいなくなるわけではなく、別のロビイストが政権に近づくだけなのだが。
Movies: European Idol (Newsweek International)
ムーアがヨーロッパで人気があることに関するルポ。
Fahrenheit 9/11: Crying, Laughing, Shouting at the Screen (The Village Voice)
ニューヨークで『華氏911』を見た人の反応。ニューヨークはもともと反ブッシュの人達が多いので、みんなこの映画をほめまくってます。だからといって(南部・中西部に多い)ブッシュ支持者がこの映画を見て意見を変えるとは思えないけどね。というか、ブッシュ支持者はそもそもこの映画を見ないか、見ても保守系コメンテーターの意見をラジオかFox News で聴いて相殺するでしょう。
'Fahrenheit 9/11' is bell tolling for many mainstream journalists (San Francisco Chronicle)
映画に負けず、プロのジャーナリストもがんばれよ、というコラム。
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