ボビー・フィッシャーの拘束について
チェス前世界王者のボビー・フィッシャー氏が成田空港で拘束された。この話、ニュースで読んだときはさらっと読み流してしまったのだが、極東ブログの記事に触発されて調べてみると、いろいろと裏がある話らしい。英語が読める方には、このThe Atlantic Online の記事がよくまとめてある(少々長い)が、少し古いし、日本での事情はわかりにくい。ニュースの概略は極東ブログのほうを読んで頂くとして、感想だけ書く。(私こそフィッシャー氏について書く任はないわけですが)
あのボビー・フィッシャー氏が、大っぴらに反米、反ユダヤの発言をしているとは知らなかった。ネット上の「公式サイト」で9/11のインタビューを聴いたのだが、これでは表舞台には出られないだろう。アメリカでも、ヨーロッパでも。彼自身もユダヤ人なのだが、こういうメンタリティは珍しくはない。
いままで日本にいることはアメリカ当局は知っていたはずなのだが、今の時期に拘束されるというのは、何かあるのだろうか。ここからは陰謀論めくのだが、フィッシャー氏は有名人だし、こうなってはある意味大物の思想犯だから、現政権が見せしめとして拘束したということもあるのかもしれない。(フィッシャー氏がユーゴスラビアで試合をしたのはブッシュ父が大統領の時だった。)あれだけの反米発言をしたのだったら、今の常識的には言い訳できないだろうけれど、一方、アメリカ内外に自分の言論のために自分の身分が拘束されると思って恐怖を感じている人は多いのではないのだろうか。アメリカに住んでいる外国人としてはそれは人ごとではない。
それとは別に、日本政府というか入管はそんな米国に意図的に協力したのだろうか。finalventさんが示唆しているように、現在日本で流れているニュースと直接関係するようなバーターが成立しているのだろうか。もし、日本がアメリカの言う通りに動いているとしたら、何ともやりきれない気持ちにはなる。しかし、たとえその(現実にはありえないと思えるような)危惧が事実だったとしても、自国民の生命はあらゆる手段をつかって守るという日本政府の姿勢は仕方ないというか、むしろ賞賛すべきことだと私は思う。逆に、フィッシャー氏が日本に外国人として住んでいて、こういう運命になった過程を見ていると、外国人として海外に居留するというのはなんと心細いことだろうかと改めて思う。
彼の狂気は、finalventさんが書いているように、何か人を「狂わせる」というか、苛立たせるものがある。彼の「公式サイト」、多分日本での支援者が作っているんだろうが、見ていると切ない気持ちになってくる。(何でE-mailをプリントアウトして、画像スキャンしてHPに載せなきゃならないの? 日本での支援者とはどんな人だったのか、彼とはどういう関係だったのだろうか。)さらに、チェスでの天才ぶりとの対比、また、彼の人生が冷戦の最前線で国際政治に巻き込まれたことなどを考えると、彼の狂気は世界の歯車仕掛けの核心にふれているのではないか、狂っているのは自分の方ではないか、と思わせるものがある。我々凡人は鈍感だから気付かずに生きていけるが、天才だからこそ感じてしまった何か、というか。彼には文学でしか扱えないような狂気の世界に近いものを感じる。そう考えると心が深く揺り動かされる。でも、別の見方をしてみれば、日常を生きている我々にとっては、この手の狂気はごくありふれたものでもある。とくに、この手の狂気は、周りの人々を不幸にする。世界は曲がっているかも知れないのだが、そういう世界に生きているわれわれには、そういう不幸からどう立ち上がるかとか、それが無理ならどこに希望を見つけていくかということに興味があるのではないだろうか。例えば、映画 "A Beautiful Mind" のエンディングは文学的には感心しないけれど、日常を生きている自分としてはそれも認めたいと思う。それが、彼の狂気の闇に蓋をすることであっても。とにかく、この事件にはいろいろと考えさせられたのでした。
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Tracked on Jul 21, 2004 4:40:42 PM
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Tracked on Aug 2, 2004 3:05:47 AM
Comments
余分なトラックバックを消していただいてありがとうございます。
ところでコメント欄なんですが、おそらくスタイルシートのフォント指定からみなのですが、Macからだと、文字化けして書き込めません…。
Posted by: takeshi | Jul 21, 2004 10:32:10 PM
>takeshiさん
いらっしゃいませ。コメントですが、上のコメント自体は文字化けしていないようですが…。エディタかワードか何かで下書きしたのをカット&ペーストしたら文字化けした、ということでしょうか。このサイトでは文字コードの内部処理はユニコード (UTF-8) で行っているはずです。(だからどうかと聞かれてもよくわからないのですが。)私もマック使い (OS 10.3.4) ですので、マックだから書き込めないということはないと思います。
Posted by: むなぐるま | Jul 21, 2004 10:49:02 PM
あ、上記ポストはPC(Windows 2000/IE6)からのものです。
書き込めなかった(文字化けしていた)のは、OS 9.2のIE5.17からで、自分のところ(MovableType)では、スタイルシートの、textarea他のエリアでのフォント指定にOsaka(OS XのIEだと"ヒラギノ~"、Safariだと"Hiragino~")の指定を入れていなかったときに同様の現象が出ていました。
こちらはTypePadのようですので、同様の原因かと思ったのですが。
すみません。本題と関係のない話題で…
(むなぐるま註:二つのポストをまとめさせて頂きました)
Posted by: takeshi | Jul 22, 2004 3:41:57 AM
了解しました。今のところはこちらとしてもどう対応していいかわかりませんので、今後の課題としようと思います。何かアドバイスがありましたら(takeshiさん以外でも)コメント欄かメールでお知らせ下さい。また、もし投稿がありましたらメールで送って下さればこちらで追って貼り付けますので。
Posted by: むなぐるま | Jul 22, 2004 9:10:28 AM