むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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September 30, 2004

第一回大統領選討論

今日は仕事が終わらなくてまだオフィスです。

 今日の討論、両方ともよく準備していたと思います。一方、両者とも弱点をさらしていた部分もあり、これから数日かけて両陣営が分析していくでしょう。
 外交・防衛問題は私の専門ではないし、少し疲れていて余り集中して聞けなかったので、とりあえず印象だけ記しておきます。

○ブッシュ大統領は、最初の方は何か苛立ったような様子だった。疲れているのかもしれない。彼は、時々記者会見などでこういうことがあるのだが、イライラしているのが言葉の端々に現れて、短気に見えるし、こういう時に限って言葉に詰まったりする。ケリー氏に対しての反論で「(外交政策の批判は)敵に間違ったメッセージを送る」というのを繰り返していたが、いらついたような口調だったので、感情的な反論という印象を与えていたと思う。リラックスして来たのは最後の方で、「ケリー氏の人格は大統領に適格ですか」という、ある種のひっかけ問題が出たときも、ケリー氏を「家族を大事にする人」などとほめる余裕を見せた。あのペースで最初から行けば良かっただろう。

○その点ではケリー氏は最初から最後まで安定していたと思う。タフなイメージを表に出すのに成功していた。論点もけっこう豊富だったし、現政権の批判についても、「アメリカはイラクで90%の死傷者、90%の経費を負っている」とか、「(開戦時)イラクより危険な国は30から40あった」など、鋭いポイントが飛び出していたように思う。いろいろなブログをざっと見渡したところでも、議論に限って言えばケリー氏の判定勝ち、という様子である。(もちろん、どちらが勝ったかというのは、討論後の両党の反応も含めて決まってくるので、まだわからない。)

○外交・本土防衛はブッシュ氏が有利なトピックのはずだから、ブッシュ氏はもっとポイントを挙げるべきだったのか、それとも、ケリー氏は後を追っているのだから、KOパンチが出なかったと言うことはブッシュ氏が逃げ切ったというべきか。この辺を両党の代表がいろいろと論じ合っていくことになるだろう。

○私は、ケリー氏がころころと政策を変えているというのが、政治家の批判の対象になるとは思わない。そう言ったら、ブッシュ氏だって何度も政策を変えている。だから、ブッシュ大統領がケリー氏を "Flip-flop" などと言っている批判は、私にはあまり説得力がなかった。

○一方、ケリー氏が論点がぶれる、というのは言えると思う。次に何を言い出すかわからない、という不安があり、今日言ったことも分析していくといろいろと矛盾が出て来そう。アメリカにとって一番問題になりそうなのは、ケリー氏が、「先制攻撃の権利を放棄したりはしない」と言いながら、軍事行動には「国際社会のテスト」をパスしなければならない、と発言。自国の安全を守るためには国連の許可がなくても先制攻撃もして欲しい、と思っているアメリカ国民が反発することはないだろうか。

○ブッシュ氏は、ケリー陣営の「アラウィ首相は傀儡」発言を批判。また、ケリー氏が、イラク戦争に参加した国として、ポーランドを忘れていて、ブッシュ氏が訂正するシーンも。ブッシュ氏がポーランドで人気があるというのも理解できるだろう。

○ケリー氏の対イラク政策の中心は、サミットを開催して国際社会の協力をとりつけること、ということらしい。また、各国に戦費支出も、と言っている。日本の支出増大は必至だろう。一方、ブッシュ氏はイラク人による軍隊の訓練がメインだから、これ以上日本の負担が増えるということはないと思う。

○日本の方にとって、一番大きな問題は、やはり北朝鮮問題だろう。興味深いのは、ブッシュ大統領の外交は、イラク戦争のため一国主義、国際社会無視というイメージがあるが、北朝鮮に限って言えば、6か国協議の堅持、中国・ロシアとの協力など、実に手堅い政策をとっている。一方、ケリー氏はこの討論では「北朝鮮との直接対話」と繰り返していたが、それは金正日を利することにはならないのだろうか? また、外交の知識に乏しいと言われるブッシュ氏が、北朝鮮の核疑惑についてケリー氏の誤りを正すシーンがあった。北朝鮮問題に限って言えば、現状把握、戦略、どの面でもブッシュ氏の方が安定感があるといえる。

○ダルフール。ケリー氏は「ウガンダの過ちを繰り返してはいけない」と決意表明。ダルフールへの軍事介入はフランスや国連が反対しているのでは? 「独断的な外交」はしないはずじゃなかったの?

非常におおざっぱな印象としては、ケリー氏、意外としっかりしてる、という感じだったと思う。これを足がかりに、残り二回のディベートで今までの流れを変えることが出来る可能性はあると思う。

以上。これから帰って、寝る前にもう少し仕事…。

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September 29, 2004

大統領選討論の場外戦はすでに始まっている

明日は大統領候補による討論会。今日のNYTのオピニオン欄には、前回ブッシュ氏に選挙で敗れたアル・ゴア氏が「ブッシュ氏と討論する方法」という題で寄稿していて、ケリー候補に、「イラク戦争の真実を伝えれば勝てる」とアドバイスしている。明日の第一回の討論会は外交・軍事の質問が中心になるので、ケリー氏にとってはそのアドバイスを生かす最大のチャンスだ。また、討論会関連では、ブッシュ氏とケリー氏の過去の討論ビデオを分析した記事(The Atlantic)も興味深い。著者は日本でも一時期有名だったジェームス・ファローズ。
 しかし、討論がどう展開するかは勝敗にはあまり関係ないという考え方がある。

それは、討論のインパクトは実は討論後の各党の対応によるというのだ。NYTではポール・クルーグマンがそのような主旨のコラムを書いているし、また、ここ2、3日はTalking Points Memoでもそのような指摘がされている。TPMによると、4年前のブッシュ対ゴアの討論会では、一回目の討論の直後の印象ではゴア氏優勢と伝えられていたのに、その後共和党のキャンペーンが奏功してブッシュ氏有利となったという。4年前を思い出してみると、「ブッシュ氏は庶民的で親しみが持てる」「ブッシュ氏は予想よりよくやった」「ゴア氏には知的優越感から来る驕りがある」など、討論の内容とは関係のない印象批評をよく聴いたのを覚えている。そして、そのようなイメージが定着する中で、「ブッシュ氏はそこそこよくやった」「ゴア氏は傲慢だった」というイメージが形成されていったように思う。

こういう印象操作は、現政権支持で悪名高いFox Newsばかりではなく、各ニュースチャンネルに出演する共和党陣営のコメントなどが協力して似たような論点(Talking Points)を繰り返すことによっても強められる。この前のCBS疑惑では、CBSがリベラル偏向していると書いたが、ここで言っているのは、3大ネットワークで晩飯時に流れるイブニング・ニュースではなく、政治討論番組のこと。では、今のアメリカのメディアで保守とリベラルのどちらが強いか、というと、保守系のほうがルール違反をせずに上手にメディア戦略を練っているとはいえると思う。この前にCBSが犯したようなミスをFox Newsが犯したら今頃大騒ぎになっていることだろう。でも、Fox Newsに出てくるコメンテーターが共和党の論点を壊れたレコードみたいに繰り返しているのを見ると少々あきれることも多い。

さて、この「場外戦」に関して、少し興味深い動きがあった。ケーブルニュース局の一つである、MSNBCが、明日の討論会の特番で、世論調査担当のFrank Luntzを起用しないと発表したのだ。この人、この4年間、MSNBCの政治番組に「世論調査員」として、何か大きな政治イベントがあるとよく登場していた。彼の得意は "Focus Group" と呼ばれる生の擬似世論調査で、スタジオに少人数の「中間層」の市民を呼び、反応を聞くというもの。例えば、民主党大会のケリー氏の演説の時には、Focus Groupの人々にダイアルを持たせ、好感度なら一方、反発したなら反対にダイアルを回してもらう。そのダイアルの数字をケリー氏の演説に重ねて、どの部分が反応が良かったか、悪かったかが即時にわかるというわけだ。MSNBCの中継では一番興味深い部分ではあった。

この「世論調査員」のLuntz氏なのだが、実は共和党のアドバイザーでもあって、現在も共和党の候補や広報担当に助言を続けているという。このサイトがよくまとめているが、共和党のコメンテイターに、「イラク戦争について語る前に、必ず『9・11ですべてが変わった』と付け加えること」と助言をしたり、カリフォルニア州知事リコール選挙では、シュワルツェネッガー氏の演説も書いていたという。(今年の共和党大会ではシュワ氏の演説をべた褒めしていたというから、図々しい。)これだけ共和党との関係が深い人物なら、本来NBCは彼を「共和党」関係者と紹介すべきなのだが、この4年間そうしてこなかったのだ。一件中立の立場に見せて、彼が非科学的なFocus Groupの結果についてコメントするのだから、印象操作の余地は十分にあるとも言える。

そして数日前、MSNBCの討論会中継でもLuntz氏が"Focus Group"を使って登場することがわかり、リベラル系のメディア監視グループやブログがキャンペーンを展開。Luntz氏を降板させるか、氏の共和党コネクションを明らかにするよう、MSNBCとNBCに圧力をかけ続けた。結果、今日になって、MSNBCはLuntz氏を起用しないことを発表したという。TPMでは "A SUCCESS" というタイトルのエントリを書いて勝利宣言している。

4年前の選挙について今思い返してみると、私は、実は、ゴア氏が勝つと思っていた。政策はそれほどでもなかったが、ゴア氏の方が頭脳明晰で政策通なのは明らかだと思ったからだ。しかし、ご存じの通りの大接戦。なぜかなあと思っていたときに、このLuntz氏が「アメリカ内陸部の人々はブッシュ氏の親しみやすさに惹かれている」などと言っていて、ああ、そんなものかと思ったものだ。あれから中西部に住んでみて、ブッシュ氏の支持が根強い地域が多いことは実感としてわかったから、彼の言っていたことが間違いだとは思わない。しかし、今思うと、Luntz氏の印象操作に乗せられていたのかもしれない、とも思う。ともあれ、この件一つを取っても、討論の場外の情報戦はもう始まっていると言うことができるだろう。

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September 28, 2004

都会が地方を養っているアメリカ

アメリカ政府の財政と政治の関係について。
Red States Feed at Federal Trough, Blue States Supply the Feed
(TaxProf Blog; via Andrewsullivan.com)
前回の選挙でブッシュ氏を支持した州("Red State")は予算を多く受け取り、前回ゴア氏を支持した州("Blue State")はその逆だという。

連邦政府の予算割り当てが多い州(納めた税金1ドル当たりー太字はブッシュ氏を支持した州)

1. D.C. ($6.17)
2.
North Dakota ($2.03)
3. New Mexico ($1.89)
4.
Mississippi ($1.84)
5.
Alaska ($1.82)
6.
West Virginia ($1.74)
7.
Montana ($1.64)
8.
Alabama ($1.61)
9.
South Dakota ($1.59)
10.
Arkansas ($1.53)

連邦政府の予算割り当てが少ない州(納めた税金1ドル当たりー太字はゴア氏を支持した州)

1.
New Jersey ($0.62)
2.
Connecticut ($0.64)
3. New Hampshire ($0.68)
4. Nevada ($0.73)
5.
Illinois ($0.77)
6.
Minnesota ($0.77)
7. Colorado ($0.79)
8.
Massachusetts ($0.79)
9.
California ($0.81)
10.
New York ($0.81)

このデータ、もちろんブッシュ氏が自分の支持層に手厚い保護をしているという選挙対策的な理由もあるだろうが、それ以上に、都会対地方という構図もあるのではないかいう指摘がある。現在の政権は財政赤字が増加する一方で、伝統的に財政引き締めを支持するアメリカの保守政治とは相容れないといわれているが、じっさいにその支出の利益を受けているのは経済的に弱い田舎であって、そのツケを払わされているのが都市住民ということなのだ。だから、ブッシュ氏がいくら支出を増やしても自らの支持層からは文句が出ない。

さて、こうしてみると、この2、3年の共和党の政策は、日本のかつての自民党に似てきたのではないかといえる。地方を保護する予算を手厚くして地盤とする。財政均衡などにはあまり関心がない。一方、都会からは税金の持ち出しとなり比較的冷遇される。この構図を支えているのは、都市の一票が比較的軽くなると言う「一票の格差の不公正」である。アメリカの大統領選は単純多数決ではなく選挙人制だし、アメリカの上院(下院よりも多くの権限を持っている)では、議員はカリフォルニア州からメイン州まで各州二人ずつという、一票の格差という意味ではかなり極端な制度になっている。また、この制度を変えるための憲法改正には議会の2/3の賛成が必要だから、上院を通過するはずがない。

このような制度は、地方の発言力を強くするためであるといわれる。このしくみについては、はっきりソースがないのだが、ジェファーソン以来、都市住民というのはあまり政治判断という意味では信用できず、むしろ地に足のついた地方の住民が長期的に正しい判断をするという、ある意味保守的な原理に基づいたものだと聞いたことがある。都市住民と地方住民のどちらが正しい政治判断を下すかという原則論はともかく、とにかく現在のブッシュ氏のリベラルな財政政策は選挙力学的に理にかなったものといえるし、現代アメリカ政治のイデオロギーを考える意味でも面白い。

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September 26, 2004

アメリカのリベラル系ブロガー

New York Times 日曜版についてくる "Magazine" にアメリカの政治系ブロガーについての面白い記事が。 Fear and Laptops on the Campaign Trail (September 26, 2004) ダン・ラザーのメモ疑惑で注目を浴びたのは、リベラル・メディアの偏向にうんざりしている、どちらかというと保守系のブロガーだったが、この記事では、Daily Kos, Talking Points Memo, Wonketteの、有名リベラル系ブログの管理人たちに焦点を当てている。どれも、一日10万ヒット級の、政治ブログとしては最も人気のあるブログである。

メモ疑惑は、大手メディアがブロガーに負けた記念的事件として記憶されると思うが、その前には民主党大統領候補のハワード・ディーン「現象」があった。バーモント州の元知事という、大統領候補としては必ずしも恵まれないポジションにいながら、公式ブログをフル活用した草の根の組織化、それからネットを通しての小口・多数の献金集めにより、一気にレースの先頭に立った。(その後、彼の「スクリーム」演説が災いしてケリー氏に敗れたのは周知の通り。) この記事、メモ疑惑による「ネットは右寄り」という印象を薄めるためか、最近アクセス数を増やしているのはリベラル・民主党系のブログと書いている。「ラッシュ・リンボーが、トーク・ラジオを圧倒しているように、左派政治はブログで栄えている」ということだ。次の観察は興味深い。

It's almost as though, in a time of great national discord, you don't want to know both sides of an issue. The once-soothing voice of the nonideological press has become, to many readers, a secondary concern, a luxury, even something suspect. It's hard to listen to a calm and rational debate when the building is burning and your pants are smoking.

これだけ世論が分裂している現在、人々は反対の意見を聴こうとか、客観的に物事を見ようという気持ちにはなりにくい、とのこと。メモ疑惑のダン・ラザーなどは、このような熱い政治言論から距離を置いてきちんと客観的なジャーナリズムを続けると言うよりは、その流れに自ら乗ってしまい、自らのチェック機能を失ってしまった、ということかもしれない。

この記事、長いのだが、リベラル系3大ブログの管理人のプロフィールが面白い。Wonketteは、ワシントンのゴシップやら下ネタやらで有名。(このブログの内容は、ちょっと親には見せられない。)つい最近はある政治家の秘書がつけている私生活についてのブログを紹介して秘書がクビになる事件が起こった。管理人のAna Marie Coxは、大学院を辞めてから、いくつかの雑誌の編集者をしていたが結局続かずじまいだった。ところが、このブログを始めてからは、昔からの悪態をつくのが好きな性格がこのブログのペルソナとうまくマッチして、たちまち人気爆発。ブッシュ氏の公式サイトの「オリジナルなブッシュ再選ポスターを創ろう」という自動生成スクリプトを悪用して遊んだりして、左系の人気を集める。また、結構美形でもあることも手伝って、テレビの政治番組にもコメンテイターとして登場するようになった。今年の民主党大会では、MTVのレポーターを務めたりして、「シンデレラになれるかな」と思ったという。しかし、MTVからは電話がかかってこず、結局ブログからスターになると言うのは夢だったのか、と少しがっかりしているようだ。

Talking Points Memoは、典型的な「オーバードクター」タイプ。ブラウン大学で博士号(アメリカ史)を持っているが、アカデミックの世界になじめず。政治系雑誌の編集者だったが、結局合わなくて退職。理想家肌の彼は、いつも政治の現状に苛立っていたのだが、2000年大統領選のフロリダの大騒ぎを見て、怒りのはけ口としてブログを始める。民主党大会でも、いつもしわくちゃのズボンを履いていて、ダイエット・コークを飲みながら更新を続けていた。ブログ界ではけっこう落ち着いた、客観的な語り口で知られるが、それでも雑誌よりは自由に書いている。(彼は雑誌にも連載を持っているが、雑誌の原稿料はブログの広告収入よりずっと少ないらしい。)でも、ブログがこれからどうなるか、確信は持っていない。

Daily Kosの管理人は、民主党の候補の多くと連携していて、彼のサイトで下院議員候補の献金集めをすると、数日で数万ドル単位が集まるらしい。実は民主党本部の役員とぶつかることもあって、この記事にはKosの管理人と民主党の献金担当がケンカ寸前になる場面が描かれている。イラクでアメリカの派遣社員が殺されて焼死体が晒されたときに「ざまあみろ」と書いて、広告主の政治家が広告を引き揚げたりしたこともあって、ちょっと軽いタイプではあるが、彼のサイトは現在毎日30万ヒットを数えるらしい。

この記事を読んで驚くのは、アメリカの政治系ブログがけっこうな収入をあげていること。この3サイトくらいになると、年間10万ドル以上稼いでいるらしい。でも、Tシャツにジーンズというなりで、「仕事にしちゃうとつまらなくなるんだよね」などと言っている彼らブロガーの多くは、一昔前のネットバブルの経営者たちのようにも見える。また、この3人は20代後半から30代、ちょうど私と同じ年代なので、エリートコースに乗り損ねてブログにたどり着いたという、彼らのプロフィールにも共感できるものがある。ネットバブルはすぐに崩壊したわけだが、この新しい政治言論が定着するかどうか。まあ、日本のブログの近未来の可能性を見るような気がする。

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September 24, 2004

古賀潤一郎議員辞職

古賀潤議員が辞職願、学歴詐称問題で引責(読売)
このブログでも、古賀氏の学歴詐称疑惑が問題になっていたときにはいくつか関連エントリを書いた。(ここここ)ま、多少アメリカの大学のしくみを知っている人ならば、彼の言い訳は余りにも無理があるというのは明らかだったので、少し調べて書いたのだが、この事件からブログの世界に入ったと言っても過言ではない。という訳で、記念のエントリ。
 振り返って思うに、このブログ、学歴詐称とか、捏造とか、そういうテーマに反応することが多いと思う。柄谷行人氏が、検閲について、「裁判」とか「検閲」という言葉にすこしも興奮をおぼえない日本の文学者は不審に思える、と書いたことがあったが(「検閲と近代・日本・文学」)、「捏造」という言葉にもそういう魔力はあるような気がする。まあ、高尚な興味とはとても言えないのだが…。

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アメリカも注目するオーストラリア総選挙

ワシントン・ポスト紙の保守系コラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏が、今日(9月24日)のコラム "The Art of Losing Friends"でオーストラリアの総選挙について触れている。オーストラリアの総選挙は10月9日と、アメリカの大統領選が大詰めにさしかかってきたころで、アメリカの選挙にも影響を及ぼしそうな微妙な日付なのだが、アメリカがこの選挙に注目する理由は他にもある。クラウトハマー氏のコラムに沿って見てみよう。

クラウトハマー氏のコラムは、まず、過去100年間アメリカが戦った戦争で、常にアメリカの側で兵力を送って戦ったのはイギリスでもフランスでもなくオーストラリアだと指摘している。9・11テロの後も、もちろんオーストラリアはアフガン戦争、イラク戦争の両方で戦力を派遣している。しかし、ブッシュ大統領を支持してきたハワード首相の支持率はこのところ下降気味。先ほどあった党首討論会も手伝って、最新の世論調査では労働党のレイサム党首にわずかに後れをとっている。(ロイター

アメリカにとって問題なのは、レイサム氏は、選挙に勝った場合はイラクから撤兵することを公言していることである。過去の経緯を考えると、オーストラリアが撤兵するということの象徴的な意味は大きい。また、現場の兵隊の指揮も下がるだろう。ケリー氏とブッシュ氏のどちらが大統領になるとしても、イラク情勢が難しくなるのは間違いないだろう。

テロ組織もこの選挙に注目している。9月9日のジャカルタでの爆弾テロは豪大使館前で起こった。党首討論会の3日前というタイミングを考えると、スペインの総選挙前に列車同時爆破テロが起こったのと同じ状況である。スペインのテロは総選挙に影響を与えたが、オーストラリアの総選挙でも、テロの後にブッシュ氏を支持した現政権が不利になりつつある。もしハワード首相が退陣となると、またしてもテロの後にブッシュ氏を支持した政権が退陣することとなる。

ここまでの、オーストラリア首相選がもつ意味という意味では、あまり異論はないと思う。しかし、ここからクラウトハマー氏は、ケリー氏がオーストラリアの総選挙を政争の道具にしていると批判する。ケリー陣営は、豪メディアのインタビューに答えて、「ハワード政権がアメリカの政策を支持したために、オーストラリアは国際テロリストの大きな標的となった」(9/18)と発言し、また、オーストラリアでのテロの脅威は豪政府のブッシュ政権支持のために増大したか、と聞かれて「そういわざるを得ない」と答えた、という。(9/16)アメリカの最大の同盟国の一つをこのような形で軽視するのはまずいのではないか、とクラウトハマー氏は言っている。また、ケリー氏は「大統領になったらもっと多くの国にイラク再建に参加を呼びかける」というが、アフガン戦争、イラク戦争のときの同盟国だったイギリスのブレア首相やオーストラリアのハワード首相には冷たくし、アメリカを裏切ったフランスやドイツの参加を期待するケリー氏の姿勢を批判している。

以上、クラウトハマー氏のコラムの紹介。ここからは私見。
クラウトハマー氏の論調は一貫してタカ派だが、徹底したリアリストだともいえる。ともかくこのコラムの投げかけているケリー氏の外交の矛盾というのは、けっこう深刻な気がする。ケリー氏は「同盟国を大事にする」と言うが、これ以上ない同盟国のオーストラリアの現政権にはけっこう冷たいというのはどうなのか。また、もしハワード首相が退陣してオーストラリアがイラクから撤兵したら、イラクに派兵できる国がまた一つ減ることになる。ケリー氏は、イラク復興のためにもっと多くの国々を巻き込むの負担を要請する、と言っているが、どんどん状態が悪化する現在のイラクに喜んで派兵しようと言う国はないと思うのだが、どうするつもりなのだろうか。最近のケリー氏の言動を見ていると、選挙に勝つためならとにかく何でも言っておく、という姿勢が見える。特に外交、軍事ではけっこう近視眼でものを言っている気がする。これはもし勝った場合に世界が相当混乱する気がする。
 一方、ブッシュ大統領の外交は結構わかりやすい。同盟国は厚遇し、裏切り者は干す。ドイツも在独米軍撤退などでダメージを受けている。一方、日米関係がこれだけうまくいっているのは近年まれにみることである。
 まあ、そもそもハワード氏が米国支持で政治的リスクを負ってしまうのはブッシュ大統領の世界的不人気、ということが大前提にあるわけだが…。

それから、日本では、よく「アメリカの二大政党制では、政権交代しても外交・軍事政策はほぼ変わらない」といわれるが、今回の荒れた選挙戦ではそのルールも破られつつある、ということなのかもしれない。

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September 23, 2004

メモ疑惑:日米ジャーナリストの反応

日本でもCBSメモ疑惑の報道がちらほら出てきた模様。新聞でも産経新聞のこの記事が事情をよくまとめている。著者は古森義久氏。この記事では、大手メディアの信用が疑問視されているというポイントをよく押さえてある。
以下、古森氏の記事から引用。

 CBSは従来、政治報道では民主党リベラル派への共鳴を示し、とくにラザー氏は共和党保守のニクソン氏や先代ブッシュ氏を激しく追及し、衝突してきた。「CBSは党派性の上に立つ聖なるメディアという自負を主張してきたが、実は民主党寄りであることをこの事件が証した」(ジョージタウン大学のロバート・リヒター教授)というように、その政治偏向が暴走して今回の誤報を生んだという見方も広まった。
(中略)
 同事件のこうした政治的側面について保守系大手紙のウォールストリート・ジャーナルは「メディアの分岐点」と題する社説で今回の重大な誤報が全米向けテレビの民主党寄り偏向をあばき、なおかつ従来の「リベラルのメディア独占の終わり」を告げる、と論評した。実際にニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNなど、報道や論評の政治基調では民主党寄りを明確にする他の大手メディアまでがCBSの誤報を厳しく追及し従来の政治的姿勢の変化をも思わせるにいたった。
CBSの偏見については、今回に始まったことではないので、ここに書かれていることはおおむね正しい。ただ、リベラル・左派の人々はこういう大手メディアの「政治的姿勢の変化」については認めようとしないかもしれないが。

一方、TBS記者の金平茂紀氏もホームページ更新。
CBSニュースが全面謝罪ということに・・・・  (9/20付)
健全な自省力のゆくえ (9/22付)
CBS全面謝罪という事態に直面して、混乱している様子が伺われる。

きのうのワシントンポスト紙を読んでいて考え込んだ。ハワード・カーツらがCBSブッシュ軍歴報道に関する1ページ以上を割いた異例の検証記事を掲載していたのだ。CBS内部でいかにオンエアが優先され、警鐘が無視されたのかを、時々刻々と検証して伝えている。正直、恐ろしいと思った。記事の情報ソースは明らかにCBS内部にもあった。
ここで言及しているのはこの記事(登録必要)だと思うが、なぜ「正直、恐ろしい」と思ったのか興味深い。記事の情報ソースがCBS内部にあったということのどこが悪いのだろうか。正体不明のメモを看板報道番組で流した後、徹底調査する過程で、内部のプロセスがここまで短期間のうちに透明化されていることが「恐ろしい」のだろうか。メディア内部はいつまでもブラックボックスであればいいと思っているのだろうか。

アメリカでも大手メディアが、この問題をブロガーを後追いする形で追及していることについては、米国内でも反論がある。大きな視野に立てば、確かにそうだろう。この大統領選では、他にも重大な争点がたくさんある。しかし、ワシントン・ポストが大きなスペースを割いて検証しているのは、CBSが明らかな間違いについて10日以上も否定し続け、自浄能力を失っていたからではないだろうか。メディアの信用に関わる問題を大きく扱うワシントン・ポスト紙の姿勢は、日本の多くの新聞、TVメディアが見習うべきだと思う。

メディアの透明性ということに関して、サンノゼ・マーキュリーニュースのコラムニストが書いた次のような記事がある。
Bloggers key to tracking down truth in media
(日本語はこちら。なんとアサヒ・コムのサイト内にある。)
記事の中心は、ブロガーが大手メディアに影響力を持ってきたのかどうか、について。新聞ジャーナリズムに関わる者として、彼はブロガーの影響力にはまだまだ懐疑的なのだが、次のようにまとめている。

 このエピソードから誤った教訓を導かないように注意しつつも、ブロガーらの純粋な成果をおとしめないようにしようではないか。彼らの「オープン・ソース」ジャーナリズムは特筆に値する。
(中略)
 メディアの監視も新しいことではない。だが最新のものは、業界にいる我々が我々自身や仲間うちについて行う大部分において礼儀正しい報道とはまったく違うものだ。今起きていることは、時に教訓的で、常に手ごわい。
 ジャーナリストは、他者に対して透明性を高めることを要求してきた。我々の仕事を公の場で分析する多くの人々の能力、それもほぼリアルタイムで行う能力のおかげで、今度は他者が我々に対してより多くを要求している。我々もそれに慣れていかなければならない。
大手メディアが信頼を確保するためには、他者に求めるのと同様の透明性を自らも確保すること、という原則に立って、ブロガーが大手メディアをチェックするという現実に大手メディアの方が慣れていかねばならない、という結論部分については、さすがだと感心する。日本の大手メディアには、ブロガーがメディアのあり方を変えているという現実認識、また、透明性を確保することが視聴者・読者の信頼を勝ち取る鍵である、ということがわかっていないように思う。

金平氏のコメントに戻るが、アメリカのメディア識者のコメントをひきながらこう書いている。

また、BLOGが主要メディアを負かした、とかいう「俗説」を笑い飛ばしていたが、今や主要メディアがBLOGから影響を受けていることは否定できない、とごくごく真っ当な意見を述べていた。健全な自省力を見た気がした。
「健全な自省力を見た」と完全に人事なのだが、金平さん、その現実は日本でもすでにやって来ているのではないですか? TBSにも「自省力」があるのか問われている、とだけ書いておこう。

ついでに、ワシントン・ポスト紙から、今回の事件についてのブロガーの活躍をまとめた記事を紹介しておきます。(9/20)
誰か訳してくれるといいのですが…。

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September 22, 2004

メモ疑惑:民主党とCBSの関係は?

月曜日にCBSとダン・ラザー氏がメモの扱いについて誤りを認め、独立調査機関による調査を決めてから、焦点はこの件に絡んでCBSとケリー選挙本部が連絡を取っていたかどうかに移っている。この事件、大手メディアでは特にワシントン・ポストが頑張っているのだが、今日のこの記事(登録必要)によると、今のところ、事実関係として当事者が認めているのは、 ○「60ミニッツ」プロデューサーのメアリー・メイプスが、ケリー陣営のジョー・ロックハート(クリントン政権で大統領報道官を務めた)に、メモを提供したビル・バーケット氏に電話するよう依頼した。その時に、メイプス氏は、バーケット氏のことを「CBSを助けてくれている人」と呼び、「60ミニッツ」の番組のストーリーについても言及した。 ○ロックハート氏はバーケット氏を誰か知らないまま、彼に電話をかけ、短時間話した。「60ミニッツ」の番組については話さなかった。 ○バーケット氏は、元上院議員でケリー氏の友人のマックス・クリーランド氏とも電話で話した。

メイプス氏は、メモの提供とメイプス氏がバーケット氏をケリー陣営に紹介したことについて、取引があったことについては否定している。ケリー陣営も、ロックハート氏に事情を聞き、特に問題はなかったという認識を示している。一方、ブッシュ陣営は、バーケット氏のメモとCBSの番組はケリー陣営の選挙運動と連動していたのではないかと追及している。

この問題については、もう少しはっきりするまで様子を見たい。CBSがメモが捏造と認めるかどうか、というのは比較的わかりやすいが、この捏造メモとケリー陣営が関係していたか、となると、事情は複雑になってくる。ブッシュ陣営は、この件を当然ケリー氏攻撃の材料にしてくるが、彼らの言うことを鵜呑みにすることはできない。ブッシュ陣営だって、あの「高速艇退役軍人の会」なるグループとの関係には怪しいものがある。情報が限られている現在の段階では、踏み込むのはフェアではないだろう。

さて、このメモ疑惑、「ジャーナリズムは、自らの先入観に合ったストーリーを造るためには事実を見る目も曇るか?」という問題をはらんでいるだけに、日本の大手マスコミは扱いに慎重になるだろうと思っていたら、予想通り、News 23の報道ではコメントなしでスルーだったようだ。(さぬきうどんさん、情報提供ありがとうございます。)このブログでも、メモ事件について書いて以来アクセス数が激増している。新聞・TVなどの大手マスコミにとって、都合の悪いニュースは飛ばしていればいい時代は終わった。

追記:Slate.comから、ダン・ラザー氏の奇行録とも言うべき記事。タフというイメージは昔からあったが、単に攻撃的な人柄なのかもしれないと思わせる、数々の奇行。名キャスター、ウォルター・クロンカイトの後釜にはなったが、結局クロンカイト氏にはなれなかったラザー氏、という人物像が浮かび上がってくる。

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September 20, 2004

ブッシュ氏再選なら来年イラク撤退?

イラク情勢だが、ボブ・ノーヴァックのコラムが話題になっている。ブッシュ政権内部で、準備ができていてもいなくても選挙後の来年イラク撤退、というシナリオが描かれている、というもの。ノーヴァックは、今夏、「イラクがニジェールからウラニウムを買い入れようとしている」という大統領発言を批判したジョセフ・ウィルソン氏の妻がCIAエージェントだとコラムに暴露して、大統領近辺から意図的なリークを受けたのではないかという疑惑の渦中にあった人。どちらにせよ、大統領のインナーサークルに特別のコネクションを持っているといわれている。その人の、この発言はどう読むべきだろうか? 支持層への意味深なメッセージか? 怪しい発言に変わりがないが、「現状維持」一本槍のブッシュ氏の表向きの発言と逆なだけに、気にはなる。

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現実への謙虚さは失いたくないものだ。ジャーナリストでもブロガーでも。

今日、CBSが一転過ちを認め、謝罪した。文書の提供者は噂されていた元テキサス州兵のビル・バーケットだが、彼が捏造したのではなく、別の文書提供者から渡された、ということらしい。今日のイブニング・ニュースでラザー氏がバーケット氏にしたインタビューを流すとのこと。そのインタビューで、バーケット氏が「CBSを意図的にミスリードしました」と言うらしい。CBSとしては、独立の調査機関を雇い真相究明するとしている。

ラザー氏も誤りを認める声明を発表。「今知っていることを番組制作時に知っていたとしたら、文書をあのような形で放送することはなかっただろう。しかし、使ってしまったことは事実で、そのことについては謝罪します。」しかし、このミスは「不偏不党、恐れることのない調査報道、というCBSニュースの伝統」にのっとったものであり、悪意のあったものではない、とも言っている。

最低限の謝罪、という印象。間違いを認めるというのはニュース機関にとってマイナスではあるが、独立調査機関の調査というのにはしばらくかかるから、これでしばらくは乗り切ろうということなのかもしれない。でも、明らかな疑惑が発覚してから全否定だったこの二週間弱は何だったのか。今回の事件で失われた信用、また、「リベラル偏向」というイメージを裏付けてしまったことのダメージは大きく、これくらいの謝罪で消えるほどのものではないと思う。

一方、TBSの金平記者。このサイトでは、まだラザー氏を弁護している。(9月15日付)

問題の本質は、ブッシュ大統領が州兵時代にまともに服務していたか、それとも、親のコネや影響力を行使してアンフェアなことをしていたか、ということなのだが、今やメディアは、ネットワークTVのある意味の「権威」ダン・ラザー及び「60ミニッツ」攻撃に腐心している。他人の不幸じゃなくて試練は蜜の味、というわけだ。夜8時からの『60ミニッツ』は、それでもCBSは踏ん張っていた。decency(品性)は失いたくないものだ。この国でも日本でも。
残念ながら、彼は、今回の事件の「本質」が、金平氏自身のような報道に携わる者の公正、不偏不党という原理原則にかかわることでもあるということを全くわかっていない。その上、この問題でCBSの批判をする人々は、ジャーナリストでもブロガーでも「他人の試練は蜜の味」という「品性がない」人だと、批判者の人格攻撃に切り替えている。
 まあ、私のようなブロガーでも、ラザー氏のような「権威」が失墜するのは滑稽だと思っている人は多いと思うし、特に、この事件はラザー氏の現実離れした否定が続いたから、いつ謝罪するかという意味で、ある意味自動車事故を面白がるような悪趣味の部分はあるかもしれない。しかし、可笑しいのは、他人の不幸ではなくて、メディアに関わる人々のあからさまな偏見、またそれに気付かない厚顔無恥ぶりだろうと思う。それには、もちろん、自分の偏見を棚に上げて、正当な批判をしている人々の「品性」をも問うこのTBS記者も含まれるのだが。

しかし、この人の使命感というか、正義感というか、何ともすごいと思う。多分、ブッシュ政権は「悪」であって、ジャーナリズムの使命を、ブッシュ政権のような「悪」と戦うことであると、一点の疑いもなく信じているのだと思う。だから、そのためには手段を選ぶ必要はない、ということなのだろう。
 現実問題として、現在のアメリカのニュース・言論界では保守系・政権擁護系の声が強まりつつある。とくに、番組編成やパーソナリティの選択で保守的な偏見を表に出したFox Newsの経済的成功により、他のニュース局の内容が右傾化しているという指摘がある。また、ネットワーク局は結局はオーナーの大企業(ディズニー、GE、Viacom)などの都合の悪いことは言わないのではないか、といわれる。ラジオではもっと寡占化が進んでいて、内容への干渉がひどいという指摘がある。そのなか、リベラル側からの政権批判をする人は苦しい立場に置かれていて、日頃から苦しんでいるから、今回の事件も「勇気ある反抗」と思うのだろう。
 では、金平氏の正義感は正当化されるのだろうか。
 まず第一に、もし自ら手段を選ばないことにしてしまったら、ジャーナリストとしての役割は崩壊する。ニュース番組に権威が与えられているのは、事実の正しさ、意見の公平さについて、一般市民よりも高いスタンダードを与えられているから。もしそれを捨て去ってしまったら、TBSニュースも朝日新聞の記事もマイケル・ムーアの映画も変わりはない。
 それから、今回のようなお粗末な報道こそ、保守系メディアに塩を送るようなことではないのだろうか。
 また、このような人に限って、自分の掲げる「正義」に目がくらんで現実が見えていないと言うことが往々にしてあると思う。現実は多くの顔を持っているのに、最初から正義感のフィルターを持ち込んだら現実を見誤るんじゃないだろうか。昨今の「ブッシュ叩き」の雰囲気にしても、私はどうしても乗り切れなくて、現実の様々な顔を見ようとしてきた。困ったことに、ブッシュ氏のステレオタイプは当たっているものが多い部分もあるし、彼の政策には彼の支持者でも賛成しかねるものが多いと思う。しかし、現実に謙虚にものを見つめたいとは思っている。その辺の最低限の抑制は失いたくないものだ。
 匿名でブログをつけるというのは非常にささやかな営みである。私には権威も何もなく、過去に書いた文章しかアイデンティティのよりどころがない。だからこそ、人格攻撃や無責任な放言などはしないように、最低限のマナーは心がけているつもりだ。そんなわけで、ある特定の条件の下に文章を書く訓練としては、非常に勉強になっている。

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September 17, 2004

"Jon Stewart manufactures news"

お堅いニュースメディアが「捏造報道」で揺れる中、自ら「嘘ニュース」を公言するテレビ番組がある。お笑い専門の "Comedy Central" というケーブル局で流している "The Daily Show" である。司会はコメディアンのジョン・スチュアート。この番組、ニュース番組のようなセットなのだが、内容は時事問題をネタにしたコメディとトーク。日本で言えば爆笑問題のような存在だろうか。しかし、この番組がなかなか侮れない。大学生では「この番組がニュース源」と言う学生が増えていると言うし、この番組の政治的影響力を見越してけっこう大物政治家が登場する。この前もジョン・ケリー氏が登場したし、副大統領候補のジョン・エドワーズ氏はこの番組で大統領選出馬宣言をした。

ウェブサイトから番組のハイライトを見ることができるのだが、これが面白いし、結構質が高い。クリップを再生するとまず番組のCMが流れる。工場で働いているお兄さんが出てきて「オレたちはタンスを造る。ジョン[・スチュアート]はニュースを造る」と言って、堂々と「捏造ニュース」であることを公言する。しかし、その内容がシリアスでないとは決して言えない。その証拠に、このサイトの "George W. Bush: Words Speak Louder than Action" というクリップを見て欲しい(要ブロードバンド)。これは傑作。ブッシュ政権がいかにアフガン・イラク戦争の現状を言葉でいいくるめてきたか、正直これほど上手くまとめた映像を私は見たことがない。また、マイケル・ムーアの映画と違って、自らをコメディと割り切っているからこそ現状の厳しい批判たりえている、という面もあると思う。さて、民主党の大統領候補や彼のスタッフがこの番組のライターと同じ、いや半分も知恵があったら、今頃選挙戦は民主党の圧勝のはずなのだが。

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CBSの対応が遅れている理由は?

メモ疑惑について。(一部ブロガーではRathergateと、上付文字を使って呼ばれているようだ。意味はわかりますよね。)今日は今のところは大きな進展なし。ただ、アメリカの風刺漫画業界でもこのネタが流行している。このページでは新聞の一こま漫画を中心に50点もの漫画が載せられている。アメリカの新聞に風刺漫画はつきものだが、この絵を見ているだけでも現在この問題がどれだけ庶民の間に伝わっているか、雰囲気が感じられるだろう。
 また、同じサイト(Ratherbiased.com)のニュースページでは、最新動向がよくわかるようになっている。ウォッチャーの方々は、是非。

 一方、保守系のWall Street Journalのオピニオン欄(2004/9/17)には、Biasという本を書いてラザー氏やCBSの「リベラル偏向」を指摘したバーナード・ゴールドバーグ氏が寄稿している。(登録必要)このサイト、1日すると記事が入れ替わってしまうので、要点をまとめておこう。
○1996年、CBSで働いていたゴールドバーグ氏がラザー氏と決別してCBS批判のオピニオン記事をこの新聞に書いたときのエピソード。ラザー氏はこの日のことを未だに恨みに持っていると多くの人に語っているらしい。
○それほど自分の名誉を気にするラザー氏が、今回ばかりはじっと黙って批判を受けているのはなぜか。
○一番手っ取り早いのは、捏造文書を提供したソースを明かしてしまうこと。別に名前を出す必要はなく、「政府筋」とか、「調査に関わっている警察筋」などというほのめかしでソースの大まかな所在を明かすことはよくある。そうすれば視聴者もどれだけ信憑性があるか想像が付くし、ジャーナリストの倫理観にも反しない。
○しかし、今のところ、CBSの報道局は、ニュース記事の「傍証」となりそうな偏ったニュースばかり流して、ソースを明かそうとしない。それどころか、CBSを批判する人々を「党派心の強い政治勢力の圧力には負けない」と、批判する人々の政治的意図を疑うようなことを言っている。
○しかし、逆に、もしラザー氏の情報提供者が「党派心の強い政治勢力」だとしたら、それこそスキャンダルであろう。もしそうだとしたら、その時こそそれに便乗どころか、喜んで協力したCBSとラザー氏の信用は地に墜ちる。

確かに、1週間以上経っても訂正すらしないCBSの姿勢にはあやしいものがある。しっぽはどこかで切らなければいけないのだろうが、それがラザー氏一人なのか、CBS全体を巻き込むのか、はたまたソースが明かされてケリー陣営にまで絡むのか。私自身、特に今年はCBSは結構いい報道をしていると思った。日曜日の「60ミニッツ」では、政権のテロ担当のリチャード・クラーク氏やら、元財務長官オニール氏の現政権批判のインタビューを報道したり、ボブ・ウッドワード氏にイラク戦争前後のブッシュ政権の内幕を語らせたりと、スクープ級の番組がいくつか続いた。こう書くとブッシュ政権批判の番組ばかりという印象だが、ライス安全保障補佐官のインタビューなどを流し表面上のバランスは取っていた。しかし、今回は明らかに勇み足である。だからこそ、CBSやラザー氏が黙って自らの信用が失墜するのを見ているというのには、首をかしげるものがある。

また、事実チェックをしたブロガーたちが右翼の政治勢力だというラザー氏の批判は的はずれだと思う。大手メディアがネットで批判されて、何か黒幕が背後にあるように言うのはおかしい。日本で言えば「2ちゃんねるに書き込むのは右翼」とかいうのと同じだろう。もちろん、保守系ブロガーで今回の事件について煽っている人々はいる。でも、経験的に言って、大手マスコミ(ジャーナリスト・評論家)が批判されてネットの人々にかみつく時というのは、大手マスコミの側の大衆を馬鹿にした態度と、事実関係のチェックの甘さ、そして常識のなさがあらわになることが多いように思う。

まあ、ブッシュ氏の軍歴疑惑については、私の前のエントリを読んでもらえばわかるが、かなり怪しい部分がある。その意味ではラザー氏の言っていることは否定しない。それに、アメリカの報道のミスということでいえば、リベラル偏向ばかりではない。イラク戦争に関して言えば、「大量破壊兵器」はなかったわけだが、新聞やらTVやらはすべてブッシュ政権の大本営発表に乗せられてしまい、ニューヨーク・タイムズ紙やらワシントン・ポスト紙やらが自己批判記事を書く羽目になっている。上にリンクした多くの政治漫画の一つに、「うちはあんな嘘くさい文書にはだまされないね」と澄ました顔をしたライバル局のニュースキャスターの後ろに、「WMD」やら「フセインとアルカイダの関係」と書いた紙がゴミ箱に捨ててある、というのがあった。マスコミにとっては失態続き、というところだろう。また、ブッシュ政権自体、現実を言葉でいいくるめるようなことが必要以上に多い、ということは指摘しておくべきだろう。
 とにかく、今年の選挙は、マイケル・ムーアの映画、「高速艇退役軍人の会」のテレビ広告、数々の内幕暴露本、そして捏造ニュースなど、さまざまなメディアのなかで真実も嘘もごっちゃになって展開されているのは事実だろう。はて、どうしたものだろうか。

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September 16, 2004

ダン・ラザー祭り続報

(9月16日、末尾に加筆した。)
昨日の晩、CBSが声明を発表。(pdf)同日の「60ミニッツ」の番組で、当時テキサス州軍で勤めていた86歳の秘書がインタビューを受け、「私はこの文書はタイプしていないけれど、この文書に含まれている情報は正しいわ」と発言。CBS報道局としても「文書は捏造だったが中身は正確」と微妙にスタンスを変えた様子。一方、文書の正確性については「引き続き調査」するとしながら、「レポートの大筋については批判を受けていない」と、基本的にはレポートを撤回していない。(CBSのサイトではこちらの記事も載せている。)
 CBSが「捏造だったが正確」という言い訳で逃れられると考えているんだったら相当甘いね。一方、ラザー氏はワシントン・ポスト紙のインタビューに答え、「もしこの文書が私たちが信じているようなものではなかったら、このストーリーは撤回する」と発言している。いや、そうじゃなくて、もう捏造と確定しているんですが…。この辺でも、ブロガーの数手後を行く大手メディアのメンタリティが浮き彫りになっている。

当初は傍観していたAndrew Sullivan もすっかりキレてしまった模様。一方、CBSの地方ネット局ではダン・ラザーのニュース番組や「60ミニッツ」を放送しない局まで現れてきているなど、波紋は広がる一方である。

一方、だれがこの文書を捏造したかだが、ワシントン・ポスト紙のこの記事によると、この文書はテキサス州アビレーン市のコピー店 "Kinko's" からファックスされたということらしい。この事実から、店の所在地から約21マイルのところに住んでいる元テキサス州兵勤務のBill Burkett氏の名前が浮上している、とのこと。また、NYTでもかなり大きな扱いでこの件に関する記事を載せている。

この事件、これだけで収拾がつくはずもないので、これからも追っていくつもり。

興味深いのは、この件でラザー氏辞職など大きな動きがあった場合、日本の大手メディアがどれだけ反応するか、ということ。「ブッシュ氏に対する憎しみのあまり、ジャーナリストとしての判断基準が狂って捏造文書を報道してしまいました」なんていう記事をたとえば朝日新聞が載せるということはとても目に浮かばないのだが。捏造事件・恣意的な報道・リークには事欠かない朝日新聞にとっては古傷が痛む事件だろう。それとも、「ラザーさんには同情します」とか言うのだろうか。また、同罪とまで行かなくても同じ傾向の日本のメディア関係者は大勢いるから、こういうニュースは大手メディアでは慎重な扱いになることだろう。そういうことを気にせずに書いて発信できるというのがBlogの利点の一つではある、と改めて思うのだ。

追記(9月16日):この事件が日本でどう報じられているか少し調べてみると、TBSのワシントン特派員である金平茂紀氏が個人サイトでコメントしていた。タイトルからして「CBSのダン・ラザーが怒りで声が涸れていたこと」と、すっかりラザー氏に同情している。本文でも、こう書いている。

さて、CBSニュースはこの「ねつ造説」に対して、真っ向から正攻法で反論した。ダン・ラザーの声は涸れていた。怒りのあまりだろう。すさまじい勢いで検証報道をやっていた。筆勢鑑定家やら当時の上官の知己やら総動員して「ねつ造」説に根拠がないことを証明していた。
最も大きなポイントは、ベトナム戦争当時のタイプライターでは打てない小文字の「th」があるという主張だが、CBSニュースは1968年当時からそれを打てるタイプライターが実在していて、当のホワイトハウスが公表した文書のなかにも小文字の「th」があることをしっかりと反証していた。今のような時代では「ねつ造説」もねつ造できる。それこそコンピュータグラフィクスを駆使したり、有力メディアの記者にねつ造説をリークすれば、またたくまに「ねつ造説」だけが拡がる。そういう意味では、CBSニュースの根性は見上げたもんだ。
この「検証報道」だが、呼んできた鑑定家が調べていたのは署名だけであって、タイプライターについての疑惑は少しも晴れていないことがブロガーたちによって指摘されている。また、CBSが雇った4人の文書鑑定家のうち、2人はすでにABCニュースに出演して「慎重を期すためもう一度調査を」とアドバイスした、と発言、CBSと距離を取り始めている。
 また、上付のできるタイプライターはあったという説だが、これも専門家が、ネット上で、Word文書の上付と1970年代のタイプライターで打ち出せる上付との違いについて細かく論証している。
 しかし、私が一番問題だと思うのは、個々の論点について自分の頭で考えないで「今のような時代では『ねつ造説』もねつ造できる」なんてさらっと書いてしまうところである。この記者の方も、自分の信念というか、信条に基づいてブッシュ大統領再選に反対しているのだろうが、だからといってジャーナリストとしての公平な視点を失ってしまっては仕方ないと思う。「声は涸(ママ)れていて」などと、情熱的なラザー氏に感情移入しているのだろうが、こんな分裂したアメリカ大統領選挙だからこそ、熱いハートを持っていてもクールな頭で観察を続けなければいけないのではないだろうか。

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September 15, 2004

ブッシュ大統領の軍歴疑惑(2)ダン・ラザー祭り

9月8日、CBSニュース「60ミニッツ」で、この軍歴疑惑についての番組が組まれた。担当はCBSの看板キャスターのダン・ラザー。大統領選挙前の微妙な時期のこのレポート、内容もすごいのだが、まもなく番組内の一部資料が捏造されたという疑惑が起こり、多くのblogで取り上げられて「祭り」になっている。今のところCBSは「報道の内容には自信を持っている」と言い張っているが、これが本当に捏造なら、大物ジャーナリストのラザー氏の辞任は必至の大スキャンダルになっている。この事件について誰か日本のブロガーが書くと思ったのだが、今のところこの件を取りあえげているblogは見あたらないので簡単に記録しておく。

この番組では、ブッシュ氏の州兵入隊で便宜を図ったとされるバーンズ氏とのインタビューに加え、1972年当時の勤務実態についての新証拠として、ジェリー・キリアン准将が書いたとされる数点のメモが「新たに発見」された、と伝えた。この人は84年に亡くなっているのだが、このメモがすごい内容で、
○ブッシュ氏に身体検査を受けるよう直接命令が下っていること(本当ならブッシュ氏は軍紀違反に問われる)
○ブッシュ氏を訓練のドリルから外すべきという指示
○ブッシュ氏の勤務に関する内部報告で、いい成績を付けるよう上の方から圧力がかかっているとし、キリアン氏が「邪魔が入って仕事が出来ない」と不満を漏らしているこど
などが書かれている。特に、最後の、内部報告を甘くつけるよう指示が下ったという1973年8月18日付けメモ(pdf)は、本物なら大変な証拠になる。また、この軍歴疑惑はこれまでもさんざん話題になっているので、ここで新証拠が出ると言うこと自体、かなりのインパクトがある。
 しかし、この番組が放送された直後、このメモが捏造ではないか、という疑念を投げかけるブロガーが続出。保守系ブログのPowerlineなどが次々に矛盾を指摘した。詳細については、すでにこのメモ疑惑だけでWikipediaのエントリが出来ているのでそちらを参考にしてもらいたいが、まとめると、このメモには、フォントの横幅の微調整、日付のthの上付きの不自然さ、など、当時のタイプライターでは不可能な技術が多く使われていたのだ。決定的だったのは、このメモの画像が、Microsoft Wordのデフォルト設定で書いてプリントアウトしたものと寸分違わないことがわかったこと。(CBSメモとWord文書を重ね合わせた画像はこちら。)この画像を見てしまうと、このメモは捏造だったとほとんどの人が確信するだろう。ともあれ、ブログの世界で多くの矛盾が指摘され、番組放送24時間後にはブログの世界では捏造「確定」となってしまった。一方、CBSとしては、「報道の内容には自信を持っており、この番組の内容を保証します」と一貫して否定。そのうち、CBS関係者が「ブロガーなんて自宅からパジャマを着て書いているだけだろ」と言ったりしてブロガーの怒りを買う事態になるなど、大手ブログのinstapundit.comなどが中心となってブログ界で「祭り」状態が続いている。
 大手メディアも、ワシントン・ポスト紙やライバルのABCニュースなどが後追いで報道し始める。CBSニュースの権威は丸つぶれで、この後どういう風に事後処理するか、CBSからの反応を誰もが息をのんで待っている状態である。今のところ、ラザー氏は報道内容について訂正・謝罪する様子は全く見せていない。CBSの今日(15日)の記事では、「疑惑が残る」と言っているが、まだ記事の否定はしていない。また、今日付でCBSの社長が「調査中」という声明を発表している。いずれにせよ、この2,3日で大きな動きがあるかもしれない。
 ここで注意しておきたいのだが、CBSが捏造をしたというわけではないだろう。むしろ、CBSがどこかからこの捏造文書をリークされた、ということなのではないか。それをチェックしきれなかったのはCBSの責任だが、捏造文書を流したリーク元が気になる。もしこれがケリー陣営に絡む人物だとしたら、ケリー氏の選挙キャンペーンは致命的打撃を受ける。

この事件、大手メディアの資料の取り扱いのずさんさもそうだが、それに対して24時間のうちに事実チェックしてしまったブロガーの実力、また、ブログという存在がメディアの世界で無視できない存在になっていることを象徴する事件となった。その犠牲者が、大手メディアの顔的存在のダン・ラザーというのもショッキングだ。
 また、CBSニュースについては、「リベラル偏向」しているという疑惑がここ数年つきまとっている。3年前にCBSの元スタッフによる暴露本が出たばかりだった。大統領選挙も大詰めのこの時期に、捏造文書まで使ってケリー氏に優位になる報道を流すというのは、実態はどうあれ、左翼偏向のステレオタイプを裏付けることとなった。日本の2ちゃんねらーだったら「CBS必死だな」とか言われているかもしれない。

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ブッシュ大統領の軍歴疑惑(1)簡単にまとめ

ブッシュ大統領の軍歴疑惑については、まだスキャンダルというレベルには達していないのだが、事実関係について少し誤解があるかもしれないので、英語のWikipediaのエントリにそって簡単に説明してみる。

ブッシュ大統領が入隊したテキサス州空軍(Texas Air National Guard)というのは米軍の一部で、ただ管轄が国内と言うだけである。"national guard"についてのWikipediaのこのエントリによると、そもそもは民兵(ミリシア)のようなものだったらしい。独立戦争当時の「ミニッツ・マン」の例からもわかるが、19世紀のアメリカ国軍は各州からのミリシアの集合体という色彩が強かった。それが、1903年に予備軍として米軍の組織に編入され、現在では陸軍・空軍の一部となっている。大統領命令により海外にも派兵されるので、実際ベトナム戦争中も州兵から徴集がかかった場合もあった。予備役のような位置づけだと考えればいいだろう。しかし、ベトナム戦争中は、兵役逃れの一手段という色合いが強く、希望者が殺到していたとされる。(この辺の歴史も実は争点になっていて、ブッシュ氏が先日の演説で、歴代大統領のうち自分を含めて19人が州兵だったとして、「そのうちの一人であることを誇りに思う」と言ったのだが、実は現在のNational Guard制度が成立した後に州兵だったのはトルーマンだけだったという。それもブッシュ氏のケースとはだいぶ異なるらしい。参考:Talking Points Memoのここここここのエントリ)
さて、軍歴疑惑がある、というと、まるでブッシュ氏が丸々さぼっていたようなイメージがあるが、実際、1968年から1973年に在籍しており、時間数だけで言うと、1970年から1972年の間に合計飛行時間336時間をこなしている。ブッシュ氏の勤務実態についてはこのによくまとめてある。(しかしWikipediaは便利だ)

疑惑になっているのは、大きく分けて次の二点である。
1)ブッシュ氏が親のコネを使って、ベトナム送りになる可能性の低い州軍に入ったか?
2)義務通り、6年間の任期を満了したか?

1)については、状況的に見て、希望者が定員を10万人単位で上回っている状況で大学卒業すぐに入隊できるというのは何かのコネを使ったのではないかということは十分に推測できる。しかし、ブッシュ大統領は、公式には当時下院議員でテキサス州の大物政治家だった親のコネを使ったことは否定している。
 この件については、今月放送のCBSニュースのインタビューで、当時州議会議長のベン・バーンズ氏が、ブッシュ一家の友人からの指示で、州軍の幹部に取り入ってブッシュ氏がすぐ入隊できるよう取りはからった、と証言。(バーンズ氏は現在ケリー陣営を手伝っている民主党員なのでバイアスがかかっている。また、このCBSのレポートにも問題があるのだが、それは次のエントリで。)また、あの霍見芳浩氏が、ハーバード・ビジネススクールでブッシュ氏を生徒に持った経験があり、その時に彼自身が「父の友人のコネで入れた」と言っていた、と証言している。(参考:NYTのニコラス・クリストフ氏のコラム。)

2)について。ブッシュ氏の勤務記録を見ると、Wikipediaのを見てもらうとわかるが、1972年の4月から10月に空白があり、この間の勤務状況がはっきりしない。この間、義務の身体検査を無断欠席して、結果として現役から外されたりしている。また、アラバマ州州兵に転勤になったり、ハーバード・ビジネススクール入学のときに名誉除隊になっているのだが、この辺の理由がはっきりしない。もし勤務状況が悪くてクビ同然で辞めたとか、またもや親の七光りで辞めることが出来たとなると、まじめに義務を勤め上げたとは言えなくなり、相手に格好の武器を与えることになる。マイケル・ムーア氏が民主党予備選の時ウェスリー・クラーク氏の応援演説でブッシュ氏を「脱走兵」呼ばわりしていたのはこのことである。
 この辺りの事実関係については細かい部分で論争になっているのだが、ポイントになっているのは、ホワイトハウスが提出した書類を含め、現在のところ表面化した証拠では、空白の6ヶ月の勤務については証明されていない。また、この空白について、勤務実態についていろいろな証言が錯綜しており、論争が続いている。(間違いがあったら指摘して欲しい。)

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September 14, 2004

コメントについて

(2004年9月25日記) 
ご愛読ありがとうございます。
 このウェブログ(ブログ)も、この数日「メモ疑惑」関連でトラフィックが増加しております。それと同時に、コメントの量も増加しています。前にこのエントリでも書いたのですが、アメリカのブログ界では「コメントの質はヒット数が増えるに従って指数関数的に悪くなる」という分析をしている人もいますが(元記事: Daniel Drezner)、このブログでもコメントの管理に費やす時間が増えてきています。そこで、コメント、トラックバックについてポリシーを書いてみましたので、コメントしたい方はご一読下さい。

トラックバックについて
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September 13, 2004

イラク情勢が悪化しても選挙には関係ない、という現実

昨日は、バグダッドで自動車爆弾テロなど戦闘が相次ぎ、イラク情勢がさらに悪化している、というニュースがあった(NYT)。イラク情勢のニュースに関して麻痺状態になっている人も多いとは思うが、このニュースはバグダッドで、というのがポイントで、首都でもイラク暫定政府の支配が弱まっているということが明らかになった。(9月14日追記:今日、バグダッドでは自動車爆弾で少なくとも47人の死者が出た。NYT

さて、アメリカの大統領選に現在のイラク情勢がどう関わってくるかだが、リベラル系blogのTalking Points Memoに、現在のブッシュ氏がリードしている情勢について興味深い分析が載っていた。一言で言うと、ブッシュ氏が現在リードしている最大の要因は、ブッシュ陣営がこの選挙戦の争点からイラク戦争を外すことに成功した、ということだ。
以下、Josh Marshall氏の分析。
イラク戦争に限ってみると、現状は厳しい。というか、これ以上ない大失敗といってもいいレベルに近づきつつある。イラク戦争開戦の理由になった大量破壊兵器も見つかっていないし、フセインとアルカイダとの関係も否定されている。このどちらかが実証されていれば、どれだけ犠牲が大きくてもこの戦争を正当化することは可能だったろうが、そうはならなかった。また、政府・軍が特に大規模戦闘が終わった後どうするかという計画を持っていなかったことは明白である。結果、イラクがテロの温床になるのを防ぐ、という目的で戦争を始めたはずなのに、実際その逆の結果が起こってしまっている。また、犠牲も大きい。米兵の犠牲者は増すばかりだし、戦費を2000億ドル以上使った。そのあげく、現在アメリカが撤退する目処は全く立っていない。端的に言って、アメリカはこの戦争で「負けている」わけだし、近い将来に勝つという目処もまったく立たない状況になっている。

それでも、共和党の巧妙な選挙戦略により、イラク戦争の現実はこの選挙戦にはまったく関係がない、という風に問題設定がされてしまっている。なぜか。
 まず、イラク戦争を「反テロ戦争」の一環としてとらえることにより、目の前の現実の厳しさがかすんでしまうようになっている。「反テロ戦争は長く続く厳しい戦いだから、途中には失敗もあるし、厳しいときもあるだろう」と言われてしまうと、イラク戦争の厳しい現状はすべて「反テロ戦争」という果てしなく長いスパンの視点の中で比較的小さな犠牲ということになっている。
 それから、イラクの現状について突っ込まれたら、「ケリー氏ならどうするの?」と反論すること。現在のイラク情勢は、誰も認めたくないのだが、簡単な答えはない。だから、ブッシュ氏側が「対案を示してくれ」といわれても、すぐ現状打開するような妙案はないような状態なのである。ケリー氏も、現実的な施策としてはほとんどブッシュ氏と変わりがないものになり、ブッシュ氏側が「ケリー氏とブッシュ氏は現実の政策ではほとんど変わりがない」と言えることになってしまう。結果、ブッシュ政権側が「問題ないよ」と問題があることすら否認する反面、ケリー氏も特に対案がないという印象を与えてしまう。ブッシュ氏は、「自らの失敗のあまりの巨大さから政治的優位を引き出した」という面があるのだ。

このようにMarshall氏の分析をみてみると、イラク情勢がこれ以上悪化しても選挙情勢には影響しない、という力学がわかると思う。
 イラク戦争に大義があるか(あったか)にかかわらず、現状は厳しくなっている。最初はイラク戦争に賛成していたが、ブッシュ政権のあまりに下手なやり方に愛想を尽かしている人々も多い。言い換えれば、反テロ戦争に本当に勝ちたいんだったらシビアに現状分析すべきだろう、と思っている人達である。(私自身もその部類にはいるかと思う。)しかし、共和党はいまのところ現状をどうするかについてははっきりした態度を示していないから、そのような人達には非常に不満足な現状になっている。ブッシュ氏再選ならアメリカという国が長期的には衰退していく、その端緒になるのではなかろうか、とさえ思われる。
 一方、選挙戦略という意味で完全に負けているケリー氏について苛立っている人も多いと思う。同じマサチューセッツ州在住で88年の選挙で大敗したデュカキス氏と比較する論調も目立ってきた。(事実ケリー氏の選挙本部にはデュカキス氏陣営のもとスタッフもいるという。何でそういうことをするのか、と思うのだが。)民主党が絶対勝つために出してきた「最終兵器」がこの人、というのは、ある意味哀しい。民主党には悪いが自業自得という気がする。また、ケリー氏がどんな政策をするのかもよくわからない。

 さて、もう一つ、日本にとってはどちらの候補がいいか、という視点から一つ。ケリー氏は、イラク駐留の米軍を「国際化」して米軍の負担を減らす、と言っている。イラクがこんな現状の現在、喜んでイラクに兵力を送りたいという国はないかもしれないが、負担というのは兵力の負担だけではない。ある民主党系の評論家は、「2000億ドルの戦費をアメリカ一国で負担しているのは問題」と言って、湾岸戦争では日本やドイツが戦費を支出してアメリカはほとんど出費せずに済んだ、と指摘していた。ケリー氏が大統領になったら、日本にイラク戦費の負担を求めてくることになるのではないだろうか。もちろん、ブッシュ氏がいろいろなところから圧力を受けて日本の負担増を求めてくる、ということもありえるが、ケリー政権で日米関係の重要度が相対的に落ちる、というのは既定路線だと思う。

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September 11, 2004

近況など

米大統領選について、news_from_japanからいらした訪問者の方へ。エントリの最後にカテゴリ別リンクがあり、関連記事をすべて見ることができます。例えば、U.S. Election 2004には過去の大統領選関連の記事が出ていますのでお読み下さい。

新しい職場での仕事が始まって、新学期の授業の準備に加えて、いろんな人に会ったり、新しい仕事のシステムに慣れたり、と何かと忙しい。時間にはまだ余裕があるのだが、新しい環境に慣れるというのは知らず識らずのうちにストレスが溜まるもの。
運動も始めなきゃと思いプールに行ったのだが、朝早くから学生やら職員やらで大勢の人が来ている。なにしろ泳ぐのが遅いので、後ろから来ていないか振り返りながら泳いでいたら首が痛くなった。

そんなわけで、2、3日前には久しぶりにバスタブにお湯を張った。今住んでいるアパートではバス・トイレはその機能さえ果たせばいいと言うので風情も何もないのだが、お湯を張って、バスタブに仰向けになってお湯につかって、たまたま近くにあった山本夏彦の『完本・文語文』を読んだ。そういえば、村上春樹に『やがて哀しき外国語』という本があった。外国で肩肘張って暮らしていると、ときどきほっとしたくなるものだ。村上春樹のアメリカ体験も、そんな瞬間があったのだろう。その時に発した言葉が、七五調で文語的な言葉、というのは、実感としてよくわかる。(「哀しき」というのを「文語」と言ったら天国の山本夏彦さんに笑われそうだが、アメリカ文学の翻訳文体で書き続け、日本の小説的な文体に反発してきた彼の作品群を考えると、彼にとってはこれでも文語と言ってもいいのではないか。)

その日は体も温まってゆっくりと休めたのだが、疲れはなかなか取れない。週末は少し休んで来週もまた頑張ろう。

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September 07, 2004

ケリー氏は逆転できる?

レイバー・デイの祝日が終わり、外の空気も秋らしく感じられる今日、ケリー氏としては、こんなはずではなかったのにというところだろう。この時点でこれほどのリードをつけられて逆転した候補はいないと言われており、苦しくなった。先日は「このままでいけばケリー」という記事を書いたばかりなのに、ほんの1ヶ月でこれだけ選挙の方向が変わるとは不思議なものだ。


でも、希望はある。ケリー氏は新しく選挙参謀を雇い、手術直前のクリントン元大統領からも90分にわたって選挙指南を受けたとか。Slate.comのこの記事によると、ケリー氏は昨日の演説から、ブッシュ大統領との違いを鮮明に打ち出し始めた。今までは、あまりネガティブな選挙運動は一般の有権者にうけないということであからさまな個人攻撃を控えてきたが、ここにきて、「WはWrong(間違い)のW」というテーマで、この4年間の失政を責める厳しいトーンの演説を始めたという。現職に対して「変化」をテーマに戦うというのは、まさにクリントン氏が当時のブッシュ(父)大統領を破った作戦である。

また、ケリー氏は「終盤の追い上げ」では有名である。実は、去年から今年の1月にかけての民主党予備選でも、アイオワ党員集会のぎりぎりまで、ケリー氏はディーン氏の後塵を拝していた。ケリー氏の低迷の象徴として、ニューハンプシャー予備選のわずか2、3週間前にこんな写真が出回ったこともあった。
 この写真、ニューハンプシャーのある高校での演説中に撮られたもので、写真にうつっているTシャツには、
"Your mouth keeps moving but all I hear is 'BLAH, BLAH, BLAH!' "
(あんたの口はパクパク動いているけど、聞こえるのはたわごとだけ)
選挙本部はこんなTシャツを着た高校生をどうして部屋に入れたのかと思うのだが、ともかく、この写真が出回ったときは、「政治家が負けるときにはこんなもんだよな」と、失敗したキャンペーンの象徴のように語られたものだ。リンク先のブログのエントリのタイトル、"Things Can't Get Much Worse" というのがその時の雰囲気を象徴している。このエントリの日付が去年の12月29日。しかし、そのあとあれよというまに盛り返し、1月19日のアイオワ、1月27日のニューハンプシャーで勝利、驚異的なペースで早々と大統領候補となったのは周知の通り。そのときも、評論家の多くが、「ケリーの追い上げ」はすごい、と言っていた。政治家が選挙で「追い上げる」とはどういうことなのか想像しにくいが、まだまだブッシュ勝利を宣言するには早そうだ。

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September 03, 2004

米共和党大会:一夜明けて

タイム誌が共和党大会中に取られた最新の世論調査を発表。ブッシュ氏52%、ケリー氏41%と、ブッシュ氏が10ポイント以上の大幅リード。(ちなみにネーダー氏は3%。)

一方、ケリー氏はブッシュ大統領の受諾演説直後に反撃の演説をした、と昨日書いた。演説の内容はメディアに発表されていたのでそれだけコメントしたのだが、演説を実際聴いてみたら、声を荒立てたり、とちったり、何とも荒削りな演説だった。スピーチライターが何ヶ月も準備し、演出にも万全を期したブッシュ氏の演説(実際それだけのことはある効果的な政治スピーチだった)の後に、素人仕事のような演説をぶつけるというのはなんともお粗末な作戦だった。こう感じたのは自分だけではなかったらしい

ケリー陣営は、ブッシュ側の個人攻撃にどう対応するかで内部が割れていて、ケリー氏が選挙本部長をクビにするという噂も絶えない。そんなでケリー氏の陣営は完全に後れを取っている。もっとも、ケリー氏も去年の10月頃は低迷しており、前の選挙本部長をクビにしてから一気にアイオワ、ニューハンプシャーと勝利したという経歴があるから、今回もこれからカムバックがあるのかもしれない。

共和党大会で何が語られ、何が語られなかったのかは、選挙の勝ち負けにはそれほど関係ない。ただ、選んだ人物の政策のつけを払うのはアメリカ国民なのだ。

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September 02, 2004

米共和党大会:大統領の演説

 ブッシュ大統領の演説について独断的な印象批評を短く。

●私は、9・11テロの後、(アフガン戦争とか言うずっと前)信条や立場の違うアメリカ人が一つになって助け合っていたのを目の当たりにして、アメリカ人が持っている強さ、良さに触れたような気がしたのをよく覚えているので、大統領が、その頃のアメリカ人一人一人の強さについて語ったとき、よく分かった気がした。私はこういうのには弱い。
●アメリカの外交については、「自由」の五段活用。アメリカのナショナリズムの核の一つである「自由」をさまざまなアングルから語っていた。目新しいものはなかったが、彼らの「自由」の信念の深さ、複雑さを感じた。アメリカの「自由」は間違ってはいないが万能ではないと思う。

●国内政策については、新しいプログラムがいくつか。大学生に奨学金? 貧しい地域に病院? こんなに新しいプログラムを始めて財政赤字は減らせるのだろうか? そういえば財政赤字については一言もなし。それから、弁護士をしきりに攻撃していた。民主党が負けたら弁護士業界は干されるな。

●「独裁が民主主義になった」例として日本を挙げるのはいい加減やめてほしい。

さて、ケリー氏は、この共和党大会の直後、午前0時から演説を行った。再三の攻撃に、ケリー氏も負けてはいない。早速、チェイニー副大統領の「ケリー氏には大統領になる資質がない」という発言に反抗して、チェイニー氏を「従軍忌避を5回した男」と呼んで反撃。やじ馬には面白い展開になってきた。

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米共和党大会:ミラー上院議員の怒り大爆発

共和党大会についてブログを書いてるひまがあったら、もっとやるべきことがあるだろ。Get a life. >自分

それはともかく、3日目。なんといっても注目は民主党上院議員のゼル・ミラー氏。この人は南部ジョージア州選出のベテラン議員なのだが、この選挙では去年辺りからブッシュ大統領の支持を表明。共和党も大歓迎、ということで大統領演説の前日、副大統領の直前という最高のスポットを与えられた。しかし、彼の演説にはびっくり。
この人、9・11後は特にブッシュ支持を鮮明にしていたのだが、その前からもここ数年の民主党のあり方に業を煮やしていたらしい。彼がブッシュ支持に傾いたのには、アメリカ北東部のリベラルが主導する民主党路線についていけない南部の庶民派の民主党員、という地域間のギャップもあるらしい。さて、演説の前に、彼を知る地元アトランタの新聞論説委員が「彼は選挙戦では相手を激しく攻撃するよ」と言っていたのだが、この日の演説では怒りを大爆発させた。

まず、自分の家族の話から始め、「私にとっては自分の党よりも私の家族を守ることが大事だ」と言った。それから、民主党、とくにケリー氏への激しい攻撃を始めた。圧巻は、ケリー氏の上院議員としての経歴を攻撃したあたり。ケリー氏が反対票を投じた軍事プログラムを列挙して、それらがいかに湾岸戦争やイラク戦争に貢献したかを列挙する辺り。

The B-1 bomber, that Senator Kerry opposed, dropped 40% of the bombs in the first six months of Operation Enduring Freedom.

The B-2 bomber, that Senator Kerry opposed, delivered air strikes against the Taliban in Afghanistan and Hussein's command post in Iraq.

The F-14A Tomcats, that Senator Kerry opposed, shot down Khadifi's Libyan MIGs over the Gulf of Sidra. The modernized F-14D, that Senator Kerry opposed, delivered missile strikes against Tora Bora.

The Apache helicopter, that Senator Kerry opposed, took out those Republican Guard tanks in Kuwait in the Gulf War. The F-15 Eagles, that Senator Kerry opposed, flew cover over our Nation's Capital and this very city after 9/11.

I could go on and on and on: Against the Patriot Missile that shot down Saddam Hussein's scud missiles over Israel, Against the Aegis air-defense cruiser, Against the Strategic Defense Initiative, Against the Trident missile, against, against, against.

そしてこう締めた。"This is the man who wants to be the Commander in Chief of our U.S. Armed Forces? U.S. forces armed with what? Spitballs?" (「彼がアメリカ軍の総指揮官になりたいんだと言っている。アメリカ軍は何で武装するの? 紙つぶてか?」)

他にも、
○アメリカ軍を、自由をもたらす「解放者」ではなく「占領軍」と呼ぶ奴は私は許せない。
○表現の自由を与えてくれるのは米軍である。しかし、民主党の連中はアメリカは問題であってもその解決ではないと言ってはばからない。
○上院議員なら20年間間違い続けても許される。しかし、総指揮官の決断は国を誤る。
○ケリー氏は国連の議決なしにはアメリカ軍を動かさないと言っている。アメリカの安全をフランスにゆだねるのか。
などと、元海兵隊らしく直立不動の姿勢からまくしたてた。もちろん会場は大喝采。"USA! USA!" の大合唱。

「ケリーに私の家族の安全を任せられない」という、知性よりはハートに訴える演説だった。テレビで見ながら、戦前育ちのおじいさんに一喝入れられたような気分になった。思わず姿勢を正したくなった。

しかし、演説が終わってからが大変だったらしい。CNNMSNBCなどのニュース番組に出演した後も怒りが止まらず。(リンクは番組のテキスト起こし)とくにMSNBCでは、ホストの「アメリカ・テレビ界の田原総一朗」ことクリス・マシューズが、
「紙つぶてで戦うって、どういう意味ですか」
と執拗に聞き続けるのに対し、
「お前の顔なんか見たくもない。質問したなら答えさせろ」
「時代が違えば決闘を申し込んでいるところだ」
などと大激怒。上のテキスト起こしに、二人のやりとりから、ミラー氏が去った後の気まずい雰囲気まですべて残っている。

この演説にアメリカ国民がどう反応するのか、少々予想しづらいところがある。アメリカのブログ界の反応は賛否両論。(ここここによくまとめてある。)感情的なレベルでは、彼の言いたいことはよくわかる。民主党も共和党も一致団結して国を守った昔とは違い、戦時中でも大統領を平気で侮辱する今の風潮に違和感を覚えている世代の一員の魂の叫びと言うところだろう。「家族を守るためなら」という訴えを聞いて、やはりケリー氏じゃやばいかも、と思う人々も多いかもしれない。日本の保守派の人でも、彼のような骨のある政治家がいてほしい、と思う人もいるだろう。

一方、少し考えてみると、彼の演説には問題が多い。この議員、1992年にはクリントン大統領を推す基調演説をしており(その時の会場は皮肉にも今回と同じマディソン・スクエア・ガーデン)、またつい3年前にはケリー氏を褒めちぎった演説もしている。昔彼が言った言葉と今回の演説を並べてみると、ジキルとハイドというか、この人は相手を攻撃するためなら何でも言うのか、という印象すら受ける。

また、これはテレビの評論家も演説直後に指摘していたのだが、今回の演説には誇張というかうそも多い。ケリー氏が「国連の議決なしには軍事行動をしない」と言ったのは30年以上も前のことだという(参考)。むしろ、1ヶ月前の演説で全く反対の立場を表明している。また、これは議会のしくみを考えればわかることだが、B-1爆撃機を含む予算案に反対票を投じたからといって、B-1爆撃機配備に反対しているとは言えない。規模を多少縮小すれば賛成する、という前提に反対することもあるからだ。また、チェイニー副大統領が国防長官の時に、これらの軍事プログラムを縮小・中止する予算案を組んでいたらしい。となると「紙つぶて」論もあまり説得力がない。

また、日本人の立場から言えば、米軍がつねに「解放軍」であって、「占領軍」と呼ぶことすら許されない、という人との間には深い溝を感じてしまう。まあ、日本とアメリカが深いところで価値観を共有するのは無理と思った方がいいのかもしれないが。

結論。アメリカのブロガーの間では、「ファシスト」と当時言われた1992年のパット・ブキャナンに並ぶ愚劣な演説という評価と、「ブッシュ憎し」のリベラルの発言と比べたらまだまし、むしろよく言った、という意見に分かれているようだ。

ここからは私見。
この3日間、ブッシュ政権の「成果」についてあまり聞いていない。現在の景気についてはだれも触れない。また、「テロの戦い」の重要性はわかったが、イラク戦争の誤算、誤りについては触れていない。例えばアブグレイブ刑務所の拷問など。それから、フランスはどうでもいいから(失礼)、アラブ世界との関係をどう修復するのか、説明して欲しいと思う。この4年間、特に9・11テロ後はほぼやりたいようにやったんだから、結果を見せてほしいという気がする。それが説明責任だと思う。しかし、例えばチェイニー氏には、ケリー氏やエドワーズ氏にはない安定感がある。何でこの人ネオコンになってしまったのだろうか。(ワシントン・ポストでは、ラムズフェルド氏とパウエル氏が引退したら外交がかなり穏健になると予想している。)

一方、ケリー氏はよくわからない。よくわからないままに国民が選んだら、後で相当混乱する気がする。

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September 01, 2004

ブレア首相はケリー支持?

No. 10's silent support for Kerry (Guardian)

ブレア政権の閣僚であるハイン氏が、(私的)NY訪問中にケリー陣営と接触し、ブレア政権ではケリー氏が勝利することを望んでいると非公式に伝えた、という記事。ブレア氏といえばアフガン戦争・イラク戦争を通してブッシュ氏の最大のパートナーであったはずなのだが、ケリー氏勝利の場合を見越して手を打っておこう、ということらしい。もちろん、英国政府としては公式には中立の立場を貫くのだが、労働党内からは、ブッシュ政権を批判しろと言う圧力がブレア氏にかかっているらしい。
この記事では、ブレア支持グループの出版物の論説記事を引用している。

By his manner, his rhetoric and sometimes his actions George Bush has presented to the world an image of America that its friends know is not its true face. That is why those who recognise that American leadership is vital and a force for good in an uncertain world will wish John Kerry well.
いま米国のリーダーシップを支持をしている国でも、アメリカの将来を考えたらケリー氏を支持しましょう、ということか。

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米共和党大会:シュワルツェネッガー氏が共和党員な理由

2日目。シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事が登場。去年の州知事リコール選挙で勝ったときは、単なるタレント候補くらいに思っていたが、前知事のもと機能不全に陥っていた州政府に乗り込んで以来、州議会議員によるとおおむねよくやっているらしい。彼はオーストリア生まれなので現行憲法では大統領になれないが、憲法改正されれば一気に有力候補になることは間違いない。事実、彼自身そのような憲法改正を支持しているらしい。そういうわけで、短期間に共和党のスター政治家になった。

90年代の始め頃、アメリカ人の友人(20代)が、「シュワルツェネッガーは大統領になれるんじゃないかな」と言っていた。私は彼の映画は余り見ていなくて、日本のテレビのCMでしか知らなかったので、彼に日本のカップヌードルのCM(シュワルツェネッガーがやかん2つを手に持って体操しているやつ)を説明してあげたら、「そんなのはアメリカでは絶対放送しないな。イメージが狂うから」と返事された。
シュワルツェネッガー氏の政界進出は、思いつきというよりは、かなり前から準備されていたらしい。彼の奥さんであるTVキャスターのマリア・シュライバーはケネディ一族の一員(ケネディ元大統領のめい)だから、シュワ氏も民主党とのつながりが強そうなのだが、実は、かなり昔から共和党ともつながりが深いらしい。昨日TVでデーヴィッド・ブルックスが言っていたが、彼は若い頃経済学者ミルトン・フリードマンの著書に心酔し、かなり前からフリードマン自身とも親交があったらしい。フリードマン氏は小さい政府、レッセ・フェール政策の支持者として知られるが、その辺りが彼の政治信条の中心になっている。

そして、今回の演説。(全文はこちら)彼のような移民一世に向けたメッセージという色合いが強かった。移民は民主党を支持する傾向があるが、私のように共和党に加わらないか、という勧誘である。共産主義の影におびえて育ったオーストリアの子供時代から説き起こして、共産主義を打ち破った自由な国・アメリカを賞賛する。それから、1968年、アメリカに来たばかりの頃、「共産主義」みたいなことを言っている民主党候補よりも、ニクソン大統領の演説が気に入って、彼が共和党員なら「おれも共和党員(リパブリカン)だな」と友人に語った、というところで拍手喝采。

それから、「共和党の言っていることすべてに賛成しない人もいるかもしれない」と言う。彼はどちらかというと民主党寄りの政策も多いので、自分のように、100%共和党に賛成しなくても、共和党員になれる、と言うわけだ。その上で、彼が共和党の中心思想だと思うことをいくつか挙げている。

If you believe that government should be accountable to the people, not the people to the government, then you are a Republican! If you believe a person should be treated as an individual, not as a member of an interest group, then you are a Republican! If you believe your family knows how to spend your money better than the government does, then you are a Republican! If you believe our educational system should be held accountable for the progress of our children, then you are a Republican! If you believe this country, not the United Nations, is the best hope of democracy in the world, then you are a Republican! And, ladies and gentlemen, if you believe we must be fierce and relentless and terminate terrorism, then you are a Republican!

もし国民が政府に説明責任があるのではなく、政府が国民に説明責任があると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし人がある利益団体の一員としてでなく、個人として扱われるべきだと思うならば、あなたは共和党員だ。
もし政府よりも各家庭のほうがお金の使い方をよく知っていると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし子供の教育の進み具合について教育機関に説明責任があると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし世界の民主主義の最大の希望は国連ではなくアメリカにあると思うならば、あなたは共和党員だ。
そして、もしテロリズムを撲滅するためには強く、徹底的でなければならないと思うならば、あなたは共和党員だ。

ここに表されている、「小さな国家」、「競争原理」、「徹底的な反テロ政策」などの思想は、典型的なリバタリアン思想である。中絶、ゲイ結婚などの社会政策の問題には一言も触れていない。彼は、そのような社会・文化政策には政府は関与すべきでないと考えているからだ。これもリバタリアンの考え方と合致する。ブッシュ政権は、社会政策でもかなり右よりの政策を打ち出しているが、そのような政策に違和感を覚えている穏健派も、このような内容なら共和党に一票入れても言いと思うかもしれない。この辺の割り切り方が、リベラル色の強いカリフォルニア州で彼が高い人気を保っている秘密だろう。

シュワルツェネッガー氏の演説は地上波でもプライムタイムで放送されたので、多くの人が見たと思う。この演説を見て、ブッシュ大統領に入れてもいい、と思った人も多いかもしれない。ただ、シュワルツェネッガー氏の描く民主党像と、ブッシュ政権の政策が今ひとつつながらない、というのは事実。ブッシュ大統領の政策は、手厚い社会保障、その結果の財政赤字の増大など、共和党らしくない政策も多いし、社会政策はキリスト教保守派の言うことを聞くことが多い。それで、Slate.comのコラムニストが、「シュワルツェネッガー氏を支持しても必ずしもブッシュ氏に投票すべきではない」理由について記事を書いている。このコラムニストの言葉で言えば、"Yes on Schwarzenegger. No on Bush"となる。「シュワルツェネッガー氏なら支持してもいい」と思っている層をまとめきれないとしたら、ブッシュ大統領再選のための強力なカードを失うことになると思う。

2日目雑感。
○ブッシュ氏の双子の娘、今時の大学生という感じだった。けっこうありのままの姿で出ていたけど、いいんだろうか、あれで。親とTVを見ていて突然エッチなシーンが出てきた時のような気まずさが会場を覆っていた。

○ついでにブッシュ氏のおい(兄ジェブの息子、ジョージ・P・ブッシュ)登場。ヒスパニックのハーフ。女性ブロガーの間では「かっこいい」との評判が。それから、ミス・アメリカやら、タレントのエリザベス・ハッセルベックなども登場。共和党支持者には若くて美形も多いと言うことをアピールしたかったのか? それから、シュワルツェネッガー氏の演説の途中に、女優のヘザー・ロックリアが写ってた(と思う)。

○メリーランド州のマイケル・スティール副知事。黒人の若手と言うことで、さしずめ共和党版バラック・オバマといったところ。彼も、「共和党の保守原理を擁護する感動的な演説をしようと思っていたら、バラック・オバマ氏にやられてしまいました」とか言っていた。オバマ氏の演説がけっこう正統保守的な内容だったことにたいする皮肉かも。彼の演説も良かったが、いまいち共和党の現実と乖離している気がした。

○ローラ夫人の演説は見ていない。

それから、nytimes.comには演説の全文テキスト・ビデオが見られる便利なページがある。(登録必要)

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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