むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

« この大統領で大丈夫? | Main | ブレア首相はケリー支持? »

September 01, 2004

米共和党大会:シュワルツェネッガー氏が共和党員な理由

2日目。シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事が登場。去年の州知事リコール選挙で勝ったときは、単なるタレント候補くらいに思っていたが、前知事のもと機能不全に陥っていた州政府に乗り込んで以来、州議会議員によるとおおむねよくやっているらしい。彼はオーストリア生まれなので現行憲法では大統領になれないが、憲法改正されれば一気に有力候補になることは間違いない。事実、彼自身そのような憲法改正を支持しているらしい。そういうわけで、短期間に共和党のスター政治家になった。

90年代の始め頃、アメリカ人の友人(20代)が、「シュワルツェネッガーは大統領になれるんじゃないかな」と言っていた。私は彼の映画は余り見ていなくて、日本のテレビのCMでしか知らなかったので、彼に日本のカップヌードルのCM(シュワルツェネッガーがやかん2つを手に持って体操しているやつ)を説明してあげたら、「そんなのはアメリカでは絶対放送しないな。イメージが狂うから」と返事された。
シュワルツェネッガー氏の政界進出は、思いつきというよりは、かなり前から準備されていたらしい。彼の奥さんであるTVキャスターのマリア・シュライバーはケネディ一族の一員(ケネディ元大統領のめい)だから、シュワ氏も民主党とのつながりが強そうなのだが、実は、かなり昔から共和党ともつながりが深いらしい。昨日TVでデーヴィッド・ブルックスが言っていたが、彼は若い頃経済学者ミルトン・フリードマンの著書に心酔し、かなり前からフリードマン自身とも親交があったらしい。フリードマン氏は小さい政府、レッセ・フェール政策の支持者として知られるが、その辺りが彼の政治信条の中心になっている。

そして、今回の演説。(全文はこちら)彼のような移民一世に向けたメッセージという色合いが強かった。移民は民主党を支持する傾向があるが、私のように共和党に加わらないか、という勧誘である。共産主義の影におびえて育ったオーストリアの子供時代から説き起こして、共産主義を打ち破った自由な国・アメリカを賞賛する。それから、1968年、アメリカに来たばかりの頃、「共産主義」みたいなことを言っている民主党候補よりも、ニクソン大統領の演説が気に入って、彼が共和党員なら「おれも共和党員(リパブリカン)だな」と友人に語った、というところで拍手喝采。

それから、「共和党の言っていることすべてに賛成しない人もいるかもしれない」と言う。彼はどちらかというと民主党寄りの政策も多いので、自分のように、100%共和党に賛成しなくても、共和党員になれる、と言うわけだ。その上で、彼が共和党の中心思想だと思うことをいくつか挙げている。

If you believe that government should be accountable to the people, not the people to the government, then you are a Republican! If you believe a person should be treated as an individual, not as a member of an interest group, then you are a Republican! If you believe your family knows how to spend your money better than the government does, then you are a Republican! If you believe our educational system should be held accountable for the progress of our children, then you are a Republican! If you believe this country, not the United Nations, is the best hope of democracy in the world, then you are a Republican! And, ladies and gentlemen, if you believe we must be fierce and relentless and terminate terrorism, then you are a Republican!

もし国民が政府に説明責任があるのではなく、政府が国民に説明責任があると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし人がある利益団体の一員としてでなく、個人として扱われるべきだと思うならば、あなたは共和党員だ。
もし政府よりも各家庭のほうがお金の使い方をよく知っていると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし子供の教育の進み具合について教育機関に説明責任があると思うならば、あなたは共和党員だ。
もし世界の民主主義の最大の希望は国連ではなくアメリカにあると思うならば、あなたは共和党員だ。
そして、もしテロリズムを撲滅するためには強く、徹底的でなければならないと思うならば、あなたは共和党員だ。

ここに表されている、「小さな国家」、「競争原理」、「徹底的な反テロ政策」などの思想は、典型的なリバタリアン思想である。中絶、ゲイ結婚などの社会政策の問題には一言も触れていない。彼は、そのような社会・文化政策には政府は関与すべきでないと考えているからだ。これもリバタリアンの考え方と合致する。ブッシュ政権は、社会政策でもかなり右よりの政策を打ち出しているが、そのような政策に違和感を覚えている穏健派も、このような内容なら共和党に一票入れても言いと思うかもしれない。この辺の割り切り方が、リベラル色の強いカリフォルニア州で彼が高い人気を保っている秘密だろう。

シュワルツェネッガー氏の演説は地上波でもプライムタイムで放送されたので、多くの人が見たと思う。この演説を見て、ブッシュ大統領に入れてもいい、と思った人も多いかもしれない。ただ、シュワルツェネッガー氏の描く民主党像と、ブッシュ政権の政策が今ひとつつながらない、というのは事実。ブッシュ大統領の政策は、手厚い社会保障、その結果の財政赤字の増大など、共和党らしくない政策も多いし、社会政策はキリスト教保守派の言うことを聞くことが多い。それで、Slate.comのコラムニストが、「シュワルツェネッガー氏を支持しても必ずしもブッシュ氏に投票すべきではない」理由について記事を書いている。このコラムニストの言葉で言えば、"Yes on Schwarzenegger. No on Bush"となる。「シュワルツェネッガー氏なら支持してもいい」と思っている層をまとめきれないとしたら、ブッシュ大統領再選のための強力なカードを失うことになると思う。

2日目雑感。
○ブッシュ氏の双子の娘、今時の大学生という感じだった。けっこうありのままの姿で出ていたけど、いいんだろうか、あれで。親とTVを見ていて突然エッチなシーンが出てきた時のような気まずさが会場を覆っていた。

○ついでにブッシュ氏のおい(兄ジェブの息子、ジョージ・P・ブッシュ)登場。ヒスパニックのハーフ。女性ブロガーの間では「かっこいい」との評判が。それから、ミス・アメリカやら、タレントのエリザベス・ハッセルベックなども登場。共和党支持者には若くて美形も多いと言うことをアピールしたかったのか? それから、シュワルツェネッガー氏の演説の途中に、女優のヘザー・ロックリアが写ってた(と思う)。

○メリーランド州のマイケル・スティール副知事。黒人の若手と言うことで、さしずめ共和党版バラック・オバマといったところ。彼も、「共和党の保守原理を擁護する感動的な演説をしようと思っていたら、バラック・オバマ氏にやられてしまいました」とか言っていた。オバマ氏の演説がけっこう正統保守的な内容だったことにたいする皮肉かも。彼の演説も良かったが、いまいち共和党の現実と乖離している気がした。

○ローラ夫人の演説は見ていない。

それから、nytimes.comには演説の全文テキスト・ビデオが見られる便利なページがある。(登録必要)

|

TrackBack

Listed below are links to weblogs that reference 米共和党大会:シュワルツェネッガー氏が共和党員な理由:

Comments

むなぐるまさん、ごぶさたしております。
いつも興味深く読んでおります。むなぐるまさんと同じく学業で身を立てているにもかかわらず、むなぐるまさんのように深く考えていないことに気づかされて、読後はいつも悄然としていますが・・・

今回のコメントも完全に余談ですが、シュワルツェネッガー氏が例のCMについて契約するときに、「日本以外では絶対に公開しない」という条項が入っていたそうです。日本では2枚目でありつつ少し3枚目的なイメージもあるシュワ氏ですが、アメリカにおけるイメージとはずれているみたいですね。

Posted by: kubo | Sep 2, 2004 8:36:04 AM

>kuboさん
お久しぶりです。いつも読んで下さってありがとうございます。
シュワルツェネッガーの件ですが、最近は、www.japander.comなど、日本のCMが全世界に流れているので、知る人ぞ知るという感じではありますが。確かに、アメリカでは「2枚目でありつつ少し3枚目的なイメージもある」という日本のシュワ氏のイメージとはかけ離れている感じがします。しかし、このサイトのネーミングがJapan + panderという意味だったらけっこう意味深ですね。

Posted by: むなぐるま | Sep 2, 2004 10:37:12 AM

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

ウェブログ図書館 http://library.jienology.com/