むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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September 17, 2004

CBSの対応が遅れている理由は?

メモ疑惑について。(一部ブロガーではRathergateと、上付文字を使って呼ばれているようだ。意味はわかりますよね。)今日は今のところは大きな進展なし。ただ、アメリカの風刺漫画業界でもこのネタが流行している。このページでは新聞の一こま漫画を中心に50点もの漫画が載せられている。アメリカの新聞に風刺漫画はつきものだが、この絵を見ているだけでも現在この問題がどれだけ庶民の間に伝わっているか、雰囲気が感じられるだろう。
 また、同じサイト(Ratherbiased.com)のニュースページでは、最新動向がよくわかるようになっている。ウォッチャーの方々は、是非。

 一方、保守系のWall Street Journalのオピニオン欄(2004/9/17)には、Biasという本を書いてラザー氏やCBSの「リベラル偏向」を指摘したバーナード・ゴールドバーグ氏が寄稿している。(登録必要)このサイト、1日すると記事が入れ替わってしまうので、要点をまとめておこう。
○1996年、CBSで働いていたゴールドバーグ氏がラザー氏と決別してCBS批判のオピニオン記事をこの新聞に書いたときのエピソード。ラザー氏はこの日のことを未だに恨みに持っていると多くの人に語っているらしい。
○それほど自分の名誉を気にするラザー氏が、今回ばかりはじっと黙って批判を受けているのはなぜか。
○一番手っ取り早いのは、捏造文書を提供したソースを明かしてしまうこと。別に名前を出す必要はなく、「政府筋」とか、「調査に関わっている警察筋」などというほのめかしでソースの大まかな所在を明かすことはよくある。そうすれば視聴者もどれだけ信憑性があるか想像が付くし、ジャーナリストの倫理観にも反しない。
○しかし、今のところ、CBSの報道局は、ニュース記事の「傍証」となりそうな偏ったニュースばかり流して、ソースを明かそうとしない。それどころか、CBSを批判する人々を「党派心の強い政治勢力の圧力には負けない」と、批判する人々の政治的意図を疑うようなことを言っている。
○しかし、逆に、もしラザー氏の情報提供者が「党派心の強い政治勢力」だとしたら、それこそスキャンダルであろう。もしそうだとしたら、その時こそそれに便乗どころか、喜んで協力したCBSとラザー氏の信用は地に墜ちる。

確かに、1週間以上経っても訂正すらしないCBSの姿勢にはあやしいものがある。しっぽはどこかで切らなければいけないのだろうが、それがラザー氏一人なのか、CBS全体を巻き込むのか、はたまたソースが明かされてケリー陣営にまで絡むのか。私自身、特に今年はCBSは結構いい報道をしていると思った。日曜日の「60ミニッツ」では、政権のテロ担当のリチャード・クラーク氏やら、元財務長官オニール氏の現政権批判のインタビューを報道したり、ボブ・ウッドワード氏にイラク戦争前後のブッシュ政権の内幕を語らせたりと、スクープ級の番組がいくつか続いた。こう書くとブッシュ政権批判の番組ばかりという印象だが、ライス安全保障補佐官のインタビューなどを流し表面上のバランスは取っていた。しかし、今回は明らかに勇み足である。だからこそ、CBSやラザー氏が黙って自らの信用が失墜するのを見ているというのには、首をかしげるものがある。

また、事実チェックをしたブロガーたちが右翼の政治勢力だというラザー氏の批判は的はずれだと思う。大手メディアがネットで批判されて、何か黒幕が背後にあるように言うのはおかしい。日本で言えば「2ちゃんねるに書き込むのは右翼」とかいうのと同じだろう。もちろん、保守系ブロガーで今回の事件について煽っている人々はいる。でも、経験的に言って、大手マスコミ(ジャーナリスト・評論家)が批判されてネットの人々にかみつく時というのは、大手マスコミの側の大衆を馬鹿にした態度と、事実関係のチェックの甘さ、そして常識のなさがあらわになることが多いように思う。

まあ、ブッシュ氏の軍歴疑惑については、私の前のエントリを読んでもらえばわかるが、かなり怪しい部分がある。その意味ではラザー氏の言っていることは否定しない。それに、アメリカの報道のミスということでいえば、リベラル偏向ばかりではない。イラク戦争に関して言えば、「大量破壊兵器」はなかったわけだが、新聞やらTVやらはすべてブッシュ政権の大本営発表に乗せられてしまい、ニューヨーク・タイムズ紙やらワシントン・ポスト紙やらが自己批判記事を書く羽目になっている。上にリンクした多くの政治漫画の一つに、「うちはあんな嘘くさい文書にはだまされないね」と澄ました顔をしたライバル局のニュースキャスターの後ろに、「WMD」やら「フセインとアルカイダの関係」と書いた紙がゴミ箱に捨ててある、というのがあった。マスコミにとっては失態続き、というところだろう。また、ブッシュ政権自体、現実を言葉でいいくるめるようなことが必要以上に多い、ということは指摘しておくべきだろう。
 とにかく、今年の選挙は、マイケル・ムーアの映画、「高速艇退役軍人の会」のテレビ広告、数々の内幕暴露本、そして捏造ニュースなど、さまざまなメディアのなかで真実も嘘もごっちゃになって展開されているのは事実だろう。はて、どうしたものだろうか。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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