むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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September 24, 2004

アメリカも注目するオーストラリア総選挙

ワシントン・ポスト紙の保守系コラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏が、今日(9月24日)のコラム "The Art of Losing Friends"でオーストラリアの総選挙について触れている。オーストラリアの総選挙は10月9日と、アメリカの大統領選が大詰めにさしかかってきたころで、アメリカの選挙にも影響を及ぼしそうな微妙な日付なのだが、アメリカがこの選挙に注目する理由は他にもある。クラウトハマー氏のコラムに沿って見てみよう。

クラウトハマー氏のコラムは、まず、過去100年間アメリカが戦った戦争で、常にアメリカの側で兵力を送って戦ったのはイギリスでもフランスでもなくオーストラリアだと指摘している。9・11テロの後も、もちろんオーストラリアはアフガン戦争、イラク戦争の両方で戦力を派遣している。しかし、ブッシュ大統領を支持してきたハワード首相の支持率はこのところ下降気味。先ほどあった党首討論会も手伝って、最新の世論調査では労働党のレイサム党首にわずかに後れをとっている。(ロイター

アメリカにとって問題なのは、レイサム氏は、選挙に勝った場合はイラクから撤兵することを公言していることである。過去の経緯を考えると、オーストラリアが撤兵するということの象徴的な意味は大きい。また、現場の兵隊の指揮も下がるだろう。ケリー氏とブッシュ氏のどちらが大統領になるとしても、イラク情勢が難しくなるのは間違いないだろう。

テロ組織もこの選挙に注目している。9月9日のジャカルタでの爆弾テロは豪大使館前で起こった。党首討論会の3日前というタイミングを考えると、スペインの総選挙前に列車同時爆破テロが起こったのと同じ状況である。スペインのテロは総選挙に影響を与えたが、オーストラリアの総選挙でも、テロの後にブッシュ氏を支持した現政権が不利になりつつある。もしハワード首相が退陣となると、またしてもテロの後にブッシュ氏を支持した政権が退陣することとなる。

ここまでの、オーストラリア首相選がもつ意味という意味では、あまり異論はないと思う。しかし、ここからクラウトハマー氏は、ケリー氏がオーストラリアの総選挙を政争の道具にしていると批判する。ケリー陣営は、豪メディアのインタビューに答えて、「ハワード政権がアメリカの政策を支持したために、オーストラリアは国際テロリストの大きな標的となった」(9/18)と発言し、また、オーストラリアでのテロの脅威は豪政府のブッシュ政権支持のために増大したか、と聞かれて「そういわざるを得ない」と答えた、という。(9/16)アメリカの最大の同盟国の一つをこのような形で軽視するのはまずいのではないか、とクラウトハマー氏は言っている。また、ケリー氏は「大統領になったらもっと多くの国にイラク再建に参加を呼びかける」というが、アフガン戦争、イラク戦争のときの同盟国だったイギリスのブレア首相やオーストラリアのハワード首相には冷たくし、アメリカを裏切ったフランスやドイツの参加を期待するケリー氏の姿勢を批判している。

以上、クラウトハマー氏のコラムの紹介。ここからは私見。
クラウトハマー氏の論調は一貫してタカ派だが、徹底したリアリストだともいえる。ともかくこのコラムの投げかけているケリー氏の外交の矛盾というのは、けっこう深刻な気がする。ケリー氏は「同盟国を大事にする」と言うが、これ以上ない同盟国のオーストラリアの現政権にはけっこう冷たいというのはどうなのか。また、もしハワード首相が退陣してオーストラリアがイラクから撤兵したら、イラクに派兵できる国がまた一つ減ることになる。ケリー氏は、イラク復興のためにもっと多くの国々を巻き込むの負担を要請する、と言っているが、どんどん状態が悪化する現在のイラクに喜んで派兵しようと言う国はないと思うのだが、どうするつもりなのだろうか。最近のケリー氏の言動を見ていると、選挙に勝つためならとにかく何でも言っておく、という姿勢が見える。特に外交、軍事ではけっこう近視眼でものを言っている気がする。これはもし勝った場合に世界が相当混乱する気がする。
 一方、ブッシュ大統領の外交は結構わかりやすい。同盟国は厚遇し、裏切り者は干す。ドイツも在独米軍撤退などでダメージを受けている。一方、日米関係がこれだけうまくいっているのは近年まれにみることである。
 まあ、そもそもハワード氏が米国支持で政治的リスクを負ってしまうのはブッシュ大統領の世界的不人気、ということが大前提にあるわけだが…。

それから、日本では、よく「アメリカの二大政党制では、政権交代しても外交・軍事政策はほぼ変わらない」といわれるが、今回の荒れた選挙戦ではそのルールも破られつつある、ということなのかもしれない。

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Tracked on Oct 10, 2004 12:34:48 PM

Comments

はじめまして。

まだ大きな騒ぎにはなっていませんが、コロンバスでのアラウィ首相に対しての
発言も、ケリー候補の外交に対する姿勢を表しているのではないでしょうか。

http://www.cnn.com/2004/ALLPOLITICS/09/23/kerry.allawi.ap/index.html

敵対国の首相にたいしてならまだしも、一番丁重に扱わなければいけない存在である
イラク首相に対し、このようなけちをつけるのを見ていると、ケリー候補が言うところの
同盟国とはいったい何なのか、彼の言う「諸国から尊敬を受けられるような外交」とは
いったいどのようなものなのか、想像しかねます。

Posted by: at | Sep 24, 2004 4:26:13 PM

> at さん
それどころか、ケリー陣営のロックハート氏は、アラウィ首相を「あやつり人形」呼ばわりしたようですが…。
>
(ソース:http://www.latimes.com/news/nationworld/iraq/la-na-assess24sep24,1,7081693.story)
世論調査の数字は日々変わりますが、ケリー陣営がかなり必死になってきているのは確かなようです。

Posted by: むなぐるま | Sep 24, 2004 4:43:32 PM

リンクが切れてしまったようなので…
http://www.cnn.com/2004/ALLPOLITICS/09/23/
kerry.allawi.ap/index.html

こちらはUSA Todayです。
http://www.usatoday.com/news/politicselections/
nation/president/2004-09-23-kerry-bush-iraq_x.htm

Posted by: at | Sep 24, 2004 4:44:54 PM

昨晩 Joe Lockhart が話題になっていたのは、その発言
によるものだったのですね。こんな事を口に出してしまう
人間が選挙参謀とは…

しかし、ケリー陣営の選挙参謀は何を考えているので
しょうか?選挙に勝つために必要な中間層の取り込みには、逆効果なことばかりしているような気がしてしかたが
ないのですが。

(ブッシュ陣営に勝って欲しい私には、ケリー陣営の迷走?
はある意味喜ばしいニュースではあります)

Posted by: at | Sep 24, 2004 5:02:46 PM

> at さん
ケリー陣営は最近陣容を少しシャッフルして、ブッシュ大統領への攻撃を強めているわけですが、何だか裏目に出ている気がしますね。いずれにせよ、討論会までは何とも言えませんが。

Posted by: むなぐるま | Sep 24, 2004 6:26:51 PM

こんにちは。
ダン・ラザー祭り関連のエントリー書いたのでトラックバックさせて頂きました。

ところで、今日のエントリーにトラックバックの欄がないようですが…

むなぐるまさんの所に来ると、ブッシュ対ケリーの現在の優勢
http://www.electoral-vote.com/)見るの楽しみにしているのですが、
最近ブッシュ圧勝の方向に振れているようです。
まだ1ヶ月ありますけど、これからどうなるんでしょうか。
そして、オクトーバー・サプライズはあるのか?
最近北朝鮮方面がキナ臭くて、なんだか気になる今日この頃です。

Posted by: ( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー | Sep 25, 2004 2:14:44 AM

> :( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー さん
トラックバックありがとうございます。「トラックバック推奨」とか言ってトラックバックがOFFになっていました。失礼しました。
electoral-vote.comは、サイト運営者は民主党系ですが、公正によくやっていると思います。今のところ、リード差が統計誤差の範囲内の州がいくつもありますので、まだまだ大勢が決したとは言えないと思います。大きな流れとしては、民主党圧倒的優位と言われたニュージャージー州やオレゴン州でブッシュ氏が接戦に持ち込んでいる一方、ケリー氏が重点州に挙げているオハイオ州などでケリー氏が追い上げていることでしょうか。もう少し様子を見ましょう。

Posted by: むなぐるま | Sep 25, 2004 8:29:24 AM

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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