アメリカのリベラル系ブロガー
New York Times 日曜版についてくる "Magazine" にアメリカの政治系ブロガーについての面白い記事が。 Fear and Laptops on the Campaign Trail (September 26, 2004) ダン・ラザーのメモ疑惑で注目を浴びたのは、リベラル・メディアの偏向にうんざりしている、どちらかというと保守系のブロガーだったが、この記事では、Daily Kos, Talking Points Memo, Wonketteの、有名リベラル系ブログの管理人たちに焦点を当てている。どれも、一日10万ヒット級の、政治ブログとしては最も人気のあるブログである。
メモ疑惑は、大手メディアがブロガーに負けた記念的事件として記憶されると思うが、その前には民主党大統領候補のハワード・ディーン「現象」があった。バーモント州の元知事という、大統領候補としては必ずしも恵まれないポジションにいながら、公式ブログをフル活用した草の根の組織化、それからネットを通しての小口・多数の献金集めにより、一気にレースの先頭に立った。(その後、彼の「スクリーム」演説が災いしてケリー氏に敗れたのは周知の通り。) この記事、メモ疑惑による「ネットは右寄り」という印象を薄めるためか、最近アクセス数を増やしているのはリベラル・民主党系のブログと書いている。「ラッシュ・リンボーが、トーク・ラジオを圧倒しているように、左派政治はブログで栄えている」ということだ。次の観察は興味深い。
It's almost as though, in a time of great national discord, you don't want to know both sides of an issue. The once-soothing voice of the nonideological press has become, to many readers, a secondary concern, a luxury, even something suspect. It's hard to listen to a calm and rational debate when the building is burning and your pants are smoking.
これだけ世論が分裂している現在、人々は反対の意見を聴こうとか、客観的に物事を見ようという気持ちにはなりにくい、とのこと。メモ疑惑のダン・ラザーなどは、このような熱い政治言論から距離を置いてきちんと客観的なジャーナリズムを続けると言うよりは、その流れに自ら乗ってしまい、自らのチェック機能を失ってしまった、ということかもしれない。
この記事、長いのだが、リベラル系3大ブログの管理人のプロフィールが面白い。Wonketteは、ワシントンのゴシップやら下ネタやらで有名。(このブログの内容は、ちょっと親には見せられない。)つい最近はある政治家の秘書がつけている私生活についてのブログを紹介して秘書がクビになる事件が起こった。管理人のAna Marie Coxは、大学院を辞めてから、いくつかの雑誌の編集者をしていたが結局続かずじまいだった。ところが、このブログを始めてからは、昔からの悪態をつくのが好きな性格がこのブログのペルソナとうまくマッチして、たちまち人気爆発。ブッシュ氏の公式サイトの「オリジナルなブッシュ再選ポスターを創ろう」という自動生成スクリプトを悪用して遊んだりして、左系の人気を集める。また、結構美形でもあることも手伝って、テレビの政治番組にもコメンテイターとして登場するようになった。今年の民主党大会では、MTVのレポーターを務めたりして、「シンデレラになれるかな」と思ったという。しかし、MTVからは電話がかかってこず、結局ブログからスターになると言うのは夢だったのか、と少しがっかりしているようだ。
Talking Points Memoは、典型的な「オーバードクター」タイプ。ブラウン大学で博士号(アメリカ史)を持っているが、アカデミックの世界になじめず。政治系雑誌の編集者だったが、結局合わなくて退職。理想家肌の彼は、いつも政治の現状に苛立っていたのだが、2000年大統領選のフロリダの大騒ぎを見て、怒りのはけ口としてブログを始める。民主党大会でも、いつもしわくちゃのズボンを履いていて、ダイエット・コークを飲みながら更新を続けていた。ブログ界ではけっこう落ち着いた、客観的な語り口で知られるが、それでも雑誌よりは自由に書いている。(彼は雑誌にも連載を持っているが、雑誌の原稿料はブログの広告収入よりずっと少ないらしい。)でも、ブログがこれからどうなるか、確信は持っていない。
Daily Kosの管理人は、民主党の候補の多くと連携していて、彼のサイトで下院議員候補の献金集めをすると、数日で数万ドル単位が集まるらしい。実は民主党本部の役員とぶつかることもあって、この記事にはKosの管理人と民主党の献金担当がケンカ寸前になる場面が描かれている。イラクでアメリカの派遣社員が殺されて焼死体が晒されたときに「ざまあみろ」と書いて、広告主の政治家が広告を引き揚げたりしたこともあって、ちょっと軽いタイプではあるが、彼のサイトは現在毎日30万ヒットを数えるらしい。
この記事を読んで驚くのは、アメリカの政治系ブログがけっこうな収入をあげていること。この3サイトくらいになると、年間10万ドル以上稼いでいるらしい。でも、Tシャツにジーンズというなりで、「仕事にしちゃうとつまらなくなるんだよね」などと言っている彼らブロガーの多くは、一昔前のネットバブルの経営者たちのようにも見える。また、この3人は20代後半から30代、ちょうど私と同じ年代なので、エリートコースに乗り損ねてブログにたどり着いたという、彼らのプロフィールにも共感できるものがある。ネットバブルはすぐに崩壊したわけだが、この新しい政治言論が定着するかどうか。まあ、日本のブログの近未来の可能性を見るような気がする。
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Listed below are links to weblogs that reference アメリカのリベラル系ブロガー:
» 参加型ジャーナリズムについて後ろ向きに思うこと from 月ナル者
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Tracked on Nov 25, 2004 9:14:43 PM
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