イラク情勢が悪化しても選挙には関係ない、という現実
昨日は、バグダッドで自動車爆弾テロなど戦闘が相次ぎ、イラク情勢がさらに悪化している、というニュースがあった(NYT)。イラク情勢のニュースに関して麻痺状態になっている人も多いとは思うが、このニュースはバグダッドで、というのがポイントで、首都でもイラク暫定政府の支配が弱まっているということが明らかになった。(9月14日追記:今日、バグダッドでは自動車爆弾で少なくとも47人の死者が出た。NYT)
さて、アメリカの大統領選に現在のイラク情勢がどう関わってくるかだが、リベラル系blogのTalking Points Memoに、現在のブッシュ氏がリードしている情勢について興味深い分析が載っていた。一言で言うと、ブッシュ氏が現在リードしている最大の要因は、ブッシュ陣営がこの選挙戦の争点からイラク戦争を外すことに成功した、ということだ。
以下、Josh Marshall氏の分析。
イラク戦争に限ってみると、現状は厳しい。というか、これ以上ない大失敗といってもいいレベルに近づきつつある。イラク戦争開戦の理由になった大量破壊兵器も見つかっていないし、フセインとアルカイダとの関係も否定されている。このどちらかが実証されていれば、どれだけ犠牲が大きくてもこの戦争を正当化することは可能だったろうが、そうはならなかった。また、政府・軍が特に大規模戦闘が終わった後どうするかという計画を持っていなかったことは明白である。結果、イラクがテロの温床になるのを防ぐ、という目的で戦争を始めたはずなのに、実際その逆の結果が起こってしまっている。また、犠牲も大きい。米兵の犠牲者は増すばかりだし、戦費を2000億ドル以上使った。そのあげく、現在アメリカが撤退する目処は全く立っていない。端的に言って、アメリカはこの戦争で「負けている」わけだし、近い将来に勝つという目処もまったく立たない状況になっている。
それでも、共和党の巧妙な選挙戦略により、イラク戦争の現実はこの選挙戦にはまったく関係がない、という風に問題設定がされてしまっている。なぜか。
まず、イラク戦争を「反テロ戦争」の一環としてとらえることにより、目の前の現実の厳しさがかすんでしまうようになっている。「反テロ戦争は長く続く厳しい戦いだから、途中には失敗もあるし、厳しいときもあるだろう」と言われてしまうと、イラク戦争の厳しい現状はすべて「反テロ戦争」という果てしなく長いスパンの視点の中で比較的小さな犠牲ということになっている。
それから、イラクの現状について突っ込まれたら、「ケリー氏ならどうするの?」と反論すること。現在のイラク情勢は、誰も認めたくないのだが、簡単な答えはない。だから、ブッシュ氏側が「対案を示してくれ」といわれても、すぐ現状打開するような妙案はないような状態なのである。ケリー氏も、現実的な施策としてはほとんどブッシュ氏と変わりがないものになり、ブッシュ氏側が「ケリー氏とブッシュ氏は現実の政策ではほとんど変わりがない」と言えることになってしまう。結果、ブッシュ政権側が「問題ないよ」と問題があることすら否認する反面、ケリー氏も特に対案がないという印象を与えてしまう。ブッシュ氏は、「自らの失敗のあまりの巨大さから政治的優位を引き出した」という面があるのだ。
このようにMarshall氏の分析をみてみると、イラク情勢がこれ以上悪化しても選挙情勢には影響しない、という力学がわかると思う。
イラク戦争に大義があるか(あったか)にかかわらず、現状は厳しくなっている。最初はイラク戦争に賛成していたが、ブッシュ政権のあまりに下手なやり方に愛想を尽かしている人々も多い。言い換えれば、反テロ戦争に本当に勝ちたいんだったらシビアに現状分析すべきだろう、と思っている人達である。(私自身もその部類にはいるかと思う。)しかし、共和党はいまのところ現状をどうするかについてははっきりした態度を示していないから、そのような人達には非常に不満足な現状になっている。ブッシュ氏再選ならアメリカという国が長期的には衰退していく、その端緒になるのではなかろうか、とさえ思われる。
一方、選挙戦略という意味で完全に負けているケリー氏について苛立っている人も多いと思う。同じマサチューセッツ州在住で88年の選挙で大敗したデュカキス氏と比較する論調も目立ってきた。(事実ケリー氏の選挙本部にはデュカキス氏陣営のもとスタッフもいるという。何でそういうことをするのか、と思うのだが。)民主党が絶対勝つために出してきた「最終兵器」がこの人、というのは、ある意味哀しい。民主党には悪いが自業自得という気がする。また、ケリー氏がどんな政策をするのかもよくわからない。
さて、もう一つ、日本にとってはどちらの候補がいいか、という視点から一つ。ケリー氏は、イラク駐留の米軍を「国際化」して米軍の負担を減らす、と言っている。イラクがこんな現状の現在、喜んでイラクに兵力を送りたいという国はないかもしれないが、負担というのは兵力の負担だけではない。ある民主党系の評論家は、「2000億ドルの戦費をアメリカ一国で負担しているのは問題」と言って、湾岸戦争では日本やドイツが戦費を支出してアメリカはほとんど出費せずに済んだ、と指摘していた。ケリー氏が大統領になったら、日本にイラク戦費の負担を求めてくることになるのではないだろうか。もちろん、ブッシュ氏がいろいろなところから圧力を受けて日本の負担増を求めてくる、ということもありえるが、ケリー政権で日米関係の重要度が相対的に落ちる、というのは既定路線だと思う。
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9月13日。午前中にネットでニュースをチェックしてから、帰りの飛行機のリコンファ [Read More]
Tracked on Sep 14, 2004 3:37:15 PM
Comments
はじめまして。
馬車馬氏のblogより参りました。
なるほどな~と感服しております。
若輩者ですが、どうぞ宜しくお願いいたします。
Posted by: 次郎 | Sep 27, 2004 1:46:52 AM