むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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October 27, 2004

タカ派評論家もケリー支持へ

昨日、元『ニュー・リパブリック』編集長で、私がよく読むブログAndrewSullivan.com主宰のアンドリュー・サリバンがケリー支持を表明した。彼の思想的立場は一貫している。対テロ戦争、イラク戦争に関しては一貫して支持していて、その点ではブッシュ大統領を支持していたのだが、アブグレイブ刑務所の拷問疑惑やイラク国内のテロ組織鎮圧の失敗など、イラクの戦後処理の失政に関しては厳しい批判を続けていた。また、彼は財政的には小さい政府指向のリバタリアンであり、財政赤字を積み重ねるブッシュ氏には批判的だったし、彼自身ゲイであることもあって、同性婚問題ではキリスト教右派にこびを売った現政権にまさに体を張って批判していた。そんなわけで、今回の支持もそれほど驚くべきことではなかった。

彼の場合、財政やら社会政策などで、リバタリアン保守の立場から批判していたのだが、それでも今回の選挙の最重要課題は反テロ政策、つまり、外交・軍事・本土防衛だったと言っていた。よく言われる "One issue voter" である。今回の選挙の場合、テロ絡みの問題で候補者を選んでいる人は多い。当たり前だが、安全な暮らしを守るという一点が崩れれば他の政策は関係なくなってしまうからだ。だから、彼がケリー支持を表明したのは、その反テロ政策でもブッシュ氏よりケリー氏を選んだことになる。

この支持表明記事を読んでみると、彼がケリー氏のいう多国間外交・国連主義について不信感を持っていることがよくわかる。それでもケリー氏を支持するのは、ブッシュ氏の戦争遂行の無能力ぶり、また自分の世界観に沿わない現実を無視しつづける姿勢が、このテロ戦争を遂行するのに不十分だからだという。また、ケリー氏が大統領になることにより、民主党内の穏健派が復権することになるだろう、という期待もある、という。ケリー氏支持者には反戦・リベラルの人々も多いが、ケリー氏が大統領になってもイラクでのオプションは限られていて、とにかくこの戦後処理を遂行するしかない。そういう意味では、民主党内のリアリストが主導権を握っていくことになるだろうというわけだ。一方、もしブッシュ氏再選となると、党内リベラル派の怒りはさらに増幅される。前にNew York Timesのコラムニスト、モーリーン・ダウドが、ブッシュ氏再選ならば08年にヒラリー氏立候補の勢いがつくと語っていたが、同じ種類の観測だと思う。その中で、アメリカ国内の思想的分裂はさらに進むだろう。

さて、タカ派でケリー氏を打ち出したのはサリバン氏だけではない。元超リベラルの論客でありながら、9/11後は一貫して「アフガニスタン・イラク人民の解放戦争」を支持してきた「ネオコン左翼」ことクリストファー・ヒッチンスもケリー氏支持を表明した。(このページは総合オピニオンサイトSlate.comのスタッフの大統領選支持一覧なのだが、ケリー氏支持が圧倒的に多い。)ヒッチンス氏は、つい最近も「イラク戦争を支持する」という主旨の記事をリベラル系雑誌 "The Nation" に投稿していたので、これには少々驚いた。彼の、少々暗号めいた説明を読んでみると、やはりブッシュ氏の執念深さ、反テロ戦争の強い意志には共感するが、現実的な政策としてはまったく説明不可能なほど失敗した、と言っている。ブッシュ氏の意志と、ケリー氏の現実的な統治能力をてんびんにかけた上で、ケリー氏に戦後処理を任せよう、という判断だろう。

こんなわけで、ブッシュ氏の切り札であったはずの外交・軍事部門でブッシュ氏を支持していたはずの批評家たちがケリー氏支持を打ち出している。彼らは、マイケル・ムーア氏のようにブッシュ氏を諸悪の根源とみるような立場の人々とは一線を画しているし、ブッシュ氏の9/11後の毅然とした対応を賞賛してもいる。また、ケリー氏の変節漢ぶりに不信感を抱き、彼が何をするかわからないと考えている。そのような彼らにとっても、現在のイラク政策の失敗はかくも大きく映っているということなのだ。ブッシュ氏は選挙に不利になるとなれば失敗も認めないし、失敗をした部下に責任を取らせることもない。そんな彼に責任を取らせよう、ということなのかもしれない。

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(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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