むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

« 自国の歴史の「切り離し」を生きること | Main | 大統領選の開票結果を速報するサイト »

October 31, 2004

大統領選をめぐるいくつかの先入観と現実

いよいよ大統領選の投票が火曜日に迫ったのだが、結果はいまだに読みにくい。全国世論調査は接戦だし、各州の結果予想もまだまだ流動性が高い。フロリダ、オハイオ、アイオワ、ウィスコンシンなどいままで接戦といわれてきた州に加え、ハワイ、ニュージャージー、ミシガンなどケリー氏支持で堅いと思われていた州も意外に接戦だという世論調査結果が出たりして、予想がまったく立たない状況。
 さて、世論調査などを細かく見てみると、意外と先入観を覆すような結果が出てきている。その一つ一つが、アメリカの「いま」を表していて面白いので、今日はその「先入観」のいくつかを検証してみる。

「福音派」クリスチャンのブッシュ氏支持
LA Timesの記事によると、この選挙において、いわゆる「福音派」クリスチャン (Evangelicals, "born-again Christians")の間でのブッシュ氏支持は、2000年のときの74%から、70%に下がってきているという。選挙戦を通してブッシュ陣営は福音派の支持取り込みに躍起で、8割から9割の支持を見込んでいたようだが、現在のところ7割にとどまっている。過去4年のブッシュ政権の政策をみると、同性婚を禁止する憲法改正案や、ES細胞の科学利用の制限など、この層をピンポイントターゲットにした政策を多く出しており、この層がまだまだ固まっていないというのは意外な感もある。
 この記事によると、南部、バイブルベルトの福音派はブッシュ氏支持で固まっているが、中西部の激戦州では福音派でも政治的に穏健な人々が多いとされる。だから、フロリダやウィスコンシンで彼らが大挙して投票しても、それがどれだけブッシュ氏有利に働くかは不透明という。また、この記事では、クリスチャンのジレンマとして、中絶や同性婚などでは共和党のプラットフォームに賛成しても、人種政策、環境問題、健康保険、そしてイラク戦争などでは反対という人が多いとも指摘している。たしかに、ブッシュ大統領の行く教会の牧師を含め、アメリカの教会牧師の多くはイラク戦争に反対だった。アメリカの外から見るとブッシュ氏の強さは意外に思えるかもしれないが、「福音派」だけでそれを説明するのは少々無理があるようだ。

黒人のケリー氏支持
一方、黒人層はここ数回の大統領選挙では圧倒的に民主党支持に回ってきたのだが、今回は黒人層のブッシュ氏支持が17〜18%と、前回選挙の倍になっているという。一方、ケリー氏支持は49%と、四年前のゴア氏支持の69%から激減している。(参考)今年の選挙戦を通して、アル・シャープトン師ら民主党の黒人リーダー層から、「民主党は黒人票を当たり前に思うな」という警告があったが、とくに教会に通うような黒人の間ではブッシュ氏支持が高まっているという。このコラムによると特に問題になっているのは同性婚問題という。特に、ケリー氏が大統領選討論でチェイニー副大統領の娘の話題を出したことに対して、「個人の尊厳を傷つけた」という印象が強まっているとこのコラムでは説明している。
 クリントン元大統領は、自ら誇らしげに「アメリカ初の黒人大統領」と呼ぶほど黒人層から共感を持って支持されていたが、ケリー氏にはそういう魅力はない。そういえば、ディーン氏も人種差別の象徴とされる「(南北戦争の)南部連合の旗をトラックに貼っているような人に支持されたい」という発言が南部で反感を買ったこともあったように、アメリカ北東部出身の候補はこのへんの感覚が生活実感としてないのだろう。

ビンラディンビデオは共和党に有利?
金曜日にビンラディンのビデオが放送され、これは危機感を煽るからブッシュ氏有利に働くといわれたが、ビデオ放送後の世論調査を見てみると、それほどの影響はないらしい。むしろ、ここ数日のトレンドではケリー氏有利に傾きつつあるようだ。私のブログからもリンクを張っているElectoral-vote.comでも、きょう(日曜)の集計ではケリー氏リードとなった。この点についてはTPMのこの記事も詳しい。

投票率が高ければケリー氏に有利?
今回の選挙は、新たに有権者登録をした人数が今まで以上に多く、投票率がかなり上がることが予想される。これらの、4年前までは投票しなかった層はどういう投票行動を取るか、だが、現状に不満を持った層がその不満の意思表示のためケリー氏に投票するというのがこれまでの通説だと思う。しかし、今日テレビ番組を見ていると、共和党も、ボランティアや、友人・知人・家族への働きかけを中心に、投票を呼びかける活動を大規模に展開しており、投票率が増えたぶんがどちらに行くかはまだわからない、という。これが、今回の選挙の動向を読む上での最大の不確定要素だろう。

|

TrackBack

Listed below are links to weblogs that reference 大統領選をめぐるいくつかの先入観と現実:

Comments

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

ウェブログ図書館 http://library.jienology.com/