読者からのメール 11/18/04
読者のmtさんという方から次のようなメールを頂きました。アメリカの一般の人々の雰囲気が伝わってくるご意見です。
-アメリカ人の投票行動の基礎?
私は、多くのアメリカ人にはテロもイラク戦争も財政赤字も「形而上」の話なのではないかと思うのです。自分の身の周りで起こっていることではなくあくまでもテレビの中のことではないかと。一方この4年間、身近なところで具体的に何か困ったことが起こった訳ではない。税金が上がったわけでも物価が上がったわけでも失業が増えたわけでも治安が悪化したわけでもない。金利が安いので家も買い換えたし。飛行機に乗ることもない地元での生活なので厳しいセキュリティチェックにあう事もない。そして王侯貴族のような生活ではないが、十分豊かな平和な暮らしをしていてまあ満足している。だとしたら積極的に大統領を変える理由がない、というではなかったかと思うのです。(だからある程度以上の生活をしている大卒の人がブッシュを支持したのではないでしょうか?)
逆に、同姓結婚は、私の秘書いわく、「私は別に気にしないけど、15歳の子供が同姓結婚がかっこいいと言うの、子供がそう考えるような状況を生み出すのは困る」と言っていたので、そういう形でテレビの中の話に留まらず普通の人の身の周りに影響してしまったのでは、と思っております。
一方、大学で働いていたり映画評論家をしていれば、その仕事自体が「形而上」なものですから、イラク戦争ももっと近く考えるのではないでしょうか?(失礼致しました) また出張で飛び回っているビジネスマンは空港セキュリティが厳しくなったことを肌で感じているでしょう。こういう人たちがブッシュに反感を持つのも理解できるかと思います。
また、ブッシュ支持・不支持が、その人の「知的レベル」を示す「リトマス試験紙」のような役割をしているとアメリカのエリートは無意識に感じたのではないでしょうか? ちょうど「すし」を食べることが知的でありリベラルであることを示すように(アメリカ人はおいしいからすしを食べているよりもマクドナルドを食べるほどばかじゃないことを示すために食べている部分があると思います)。だから細かい政策うんぬん以上にそういう部分が影響したのではと思いますが。
つまり私が申し上げたいのは、宗教や党派という部分で投票行動が決定され固定化された、というのは、必ずしも正しくないのでは、と思うのですがどうでしょうか? (基本的な問題提起はなぜイラク戦争の英雄のブッシュ父がその半年後に大統領選挙に負けたのかという部分から来ているですが) もっと身近な部分の経験が判断を決定させる気がするです。
-アメリカの分断?
そこからの関連で、アメリカが二つに分断されている、という言い方は2つの意味で余り正しくないと思っています。1つは日本人から見れば、アメリカ外から見れば、やはり大きな「アメリカ」という枠を越えていないのではと思うのです。その枠の中での違いであり、基礎となっている部分、共有している部分は大きいのでは、と思うのです。例えば、アメリカ人が共産党を許容することが無いように、アメリカ人が燃えるごみと燃えないごみの分別をすることを考えないように。アメリカ人が車のない生活を考えられないように。その違いは本当に東京人と大阪人の違いより大きいでしょうか? だから日本のマスコミがアメリカのマスコミの論調をそのままコピーすることは誤りだと思っております。
もう1つはアメリカ人はもっとpracticalでありmaterialなのではないか、と思うのです。政治信条を貫くために自分の生活を犠牲にする、ということはあまり無いのでは、と思うのです。上で述べたようにもっと身近な部分の経験が判断を決定させる気がするです。
以上長くなり申し訳ありませんが、私としては何となく疑問に思っていて、ただおそらくアメリカ人にとっては余りに根本的すぎて誰も意識して取り上げていないということかと思った次第です。あるいは単に私に認識が誤まりなのかもしれません。
これからも、情報提供・ご意見のメールなど、適宜このように転載したいと思います。(転載の際はこちらからご連絡いたします。)
それから、この数日、多くの応援メールを頂きました。また、アソシエイトでのお買い物という形でサポートの意志を示してくださった皆さんにもこの場を借りて御礼申し上げます。(こちらからは、その方々のお名前がわからないものですから。)
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Comments
>アメリカ人が燃えるごみと燃えないごみの分別をすることを考えないように。
個人的にはここがいちばんツボにはまりました。これ、実感してます。
mtさんの分析の基本路線は納得する部分が多いです。
ただ地域によって傾向の違いがありそうなので、テネシー州について私にも述べさせてください。
テネシー州は「共和党支持者が多い」という割には、今回の選挙でケリーに投票した人が多かったんですよ。ブッシュ57%に対してケリーは42%。
(42%を多いと見ることには納得されない方もいらっしゃるとは思いますが。もっと少ない州も結構ありますし。)
今回の選挙では積極的にケリーを支持した人はほとんどいないと聞きます。民主党を積極的に支持している人も少ない印象を受けました。つまりテネシー州の投票者のうち42%近くもの人が「ブッシュはなんかおかしいよな」と思っていることなのではないかと思いました。
テネシー州はイラク戦争にも多くの兵を出しているようです。(全米の州で多い方から何番目か、という感じらしい。)それも家庭の経済事情からというよりは、南北戦争以来の「自分の国・州は自分たちで守る」というテネシー人気質からということです。
最近の極東ブログさんの記事でパウエル氏を評して「軍人は基本的に平和を志向する」という言葉がありましたが、つまりはテネシー州の投票行動の傾向もそういうことなのかな、と最近考えました。
ちょっと話がそれますが・・・。
この前の日曜、アメフトの試合を観に行った時、試合前に兵士たちによってフィールドいっぱいにに巨大な星条旗が広げられ、地元の歌手によって「星条旗よ永遠なれ」が歌われました。
歌が終わると同時に空軍の戦闘機が競技場の真上を飛んでいくと、観客席のあちこちから歓声が上がりました。
何とも言えない気分でした。物凄く複雑な気分でした。うまく説明できませんが、「ああ、日本人である私はこの人たちに守られてきたのか」という気分でしょうか。その事実が目の前にあるような気がしました。それを好むかどうかは別にしてもその事実は圧倒的な迫力でした。
(それを拒否するというならば、必ず「じゃあ日本は自分で軍隊を持ちますか?」という話になるし、自衛隊のイラク派遣に反対することも、そういう展開になる可能性を多分に秘めているのでしょうね。)
mtさんの分析を読んで宗教に関してもちょっと考えました。
結果的にイラク戦争で、そしてヨーロッパで「キリスト教対イスラム教」の構図があちこちに現れていることは否めませんが、9・11当時、イスラム教社会全体にアメリカという国を嫌う空気はあっても、キリスト教徒を嫌いという空気はなかっただろうと思います。
「僕たちはアメリカが嫌いだ」と言うイスラム教徒のバングラデシュ人に
「そのわりにはみんなアメリカに住みたがるでしょ?」
と聞くと
「やっぱり豊かだからね。物質的な面だけ。」
と答えました。
どうもアメリカは何でもありの国イメージで見られていた節はあります。
アメリカ人には不道徳な人が多いと思っていた人も多いかも知れません。まあ後者の方は「日本ってフリーセックスの国なんでしょ??」というのと同レベルのものだった(男性にとっては羨望もあり)と思いますが。
また「アメリカ人は自分たちのことしか考えない」「他の国のことを知らない無知な人たち」と見る人も結構いますが(実はアメリカに来る前、私もちょっとそう思っていた)、アメリカ人の多くは9・11によって、自分たちが他国の人たちからどう思われているかを考えないではいられなかっただろうと思います。
(そもそも「他の国のことを知らない度合い」の平均値を出したら、日本とアメリカってそんなに違わないのじゃないか?もっと言えばどこの国も似たようなものなんじゃないか?と思いますが。アメリカが「大国」な分、他の国より目立つだけでしょう。)
「自分たちは不道徳な人間だと思われている」
「確かに犯罪は多いし、セックス・ドラッグに関しても結構めちゃくちゃかも」
と思った人も多かったのではないでしょうか?これまでの風潮に対する反省がキリスト教信仰への回帰と結びついたのでは?
何を言いたいかというと、そもそも彼らがイスラム教に対抗するつもりでキリスト教信仰を持ち出したわけではないし、投票行動ではキリスト教信仰と結びついいた道徳観は影響していても、投票する時に多くの人は信仰をそれほど意識していなかったということは言えるだろうと思います。
ただ、投票にあたって多くの人の中で道徳観が作用したのは確かだし、その道徳観は信仰への原動力になっていると思うので、信仰と投票行動を完全に分けてしまうわけにはいかないでしょう。
いろいろなニュースや記事で、宗教対立の構図が見え隠れするたびに、
「(イスラム教徒の中で)コーランに忠実なイスラム教徒と(キリスト教徒の中で)福音書に忠実なキリスト教徒って実はよく似ているはずなんだけどな」
と思います。
(わざわざ「イスラム教徒の中でコーランに忠実なイスラム教徒」と限定したのは、実はイスラム教徒の中で「コーランに何が書いてあるか」を正確に把握している人がわりに少ないからです。)
(まあイスラム教社会にもキリスト教社会にも属さない立場で見れば、コーランに忠実なイスラム教徒1人と福音書に忠実なキリスト教徒1人を比べたら、前者のほうが安全な気はしますが。少なくともコーランには「イスラム教徒は毒ヘビに咬まれても死なない」なんて記述はないはずだから。)
長くなりました。申し訳ありません。
Posted by: 西方の人 | Nov 19, 2004 5:59:07 PM
mtさんが指摘された日常の生活実感と言う点では、大抵のアメリカ人にとってブッシュであろうが、ゴアであろうが、ケリーであろうが、たいして変わらないのではないでしょうか?その意味では大統領は誰でも構わないということになります。
しかし実際には、あれだけの批判、あれだけの逆風の中で、ブッシュは6千万票と支持を拡大し、共和党は上下両院で勢力を伸ばしたのですから、あの投票結果には明確なメッセージが含まれていると思います。民主党は十分注意、分析すべきだと思います。
Posted by: エイメイ | Nov 19, 2004 6:52:07 PM
それともう一つ参考情報として。
夫の会社の同僚は今回の選挙で共和党と支持する理由として「チェイニー」を挙げていたとのこと。
「チェイニーはすごくいい。本当はブッシュの代わりに彼に大統領をやってもらいたい。」
日系企業の社員の個人的な意見かもしれませんが。
たびたびすみませんです。
Posted by: 西方の人 | Nov 20, 2004 11:17:02 PM
むなぐるま様、有難うございます。こんなに長く引用していただいて恐縮です。
私もエイメイ様の「あの投票結果には明確なメッセージが含まれていると思います」に賛同します。即ち、集計の不正とか情報操作で当選したのではなく、ブッシュを支持するという(消極的にしろ)メッセージを読み取っても良いのでは、というのが私のメールの端的な趣旨です。
その支持が、宗教や党派で固定化されたものではなく、実際の4年間の身の回りに起こったことで判断したのではないか、というのが私の問題提起です。「別に生活悪くなっていないし」というのが最大の判断根拠だったのでは? というものです。
ブッシュ父は選挙の前年に戦争に勝ったにも拘らず、選挙期間に大量の失業(=ホワイトカラーのリストラ)と大きな景気後退を招き、現職の大統領でありながら(それ故に)敗れました。
ブッシュ子も、今後はどうなるかわかりません。税金が安くて済んだのは赤字国債を大量に発行したからですし、インフレが無かったのは、ドル為替が高目に設定されていて輸入品の価格が安かったからですし、金利が低かったのも、景気回復を重視して低めにされていたからです。
今後、双子の赤字が焦点になれば、これらの好条件は見直しとなり、一般の人々に負担を強い、その日常へも影響を与えるような状況となることが想定され、それがまた投票行動にも影響を与えるのでは、と勝手に思っています。
西方の人様のおっしゃる通り、「身近にイラクへ出兵経験のある兵士がいる場合(多くの場合低所得者層と想定される)、反ブッシュが増えるだろう」と思います。私は一度イラク派兵から帰ってきたばかりというアメリカ人と旅行先で話をしたことがありますが、その経験から派兵に反対でした。それは決して「戦争反対」からきているのではなく、「イラクという国・人々は、アメリカが膨大な人員と費用と労力をかけてまで助けるに値する存在か?」ということであり、イラクの悲惨な状況とあいまって、派兵を疑問視する声につながるのではと思います。それがテネシーの結果だったのでは、と思います。
長くなり失礼致しました。ただ結果論であることは重々承知しております。
Posted by: mt | Nov 26, 2004 10:55:19 PM