「ブログが広げた投票不正疑惑はすぐに論破された」 (New York Times)
Voter Fraud Theories, Spread by Blogs, Are Quickly Buried (NYT)
この記事、
1)大統領選挙後に流れた、ブッシュ陣営が投票の不正をしたというさまざまな噂について、大学などの専門家たちが、まったく根拠がないと否定している検証報道
2)根拠のない噂を無責任に流すブログやインターネットはいかがなものか、という意見
の二つの要素がある。
まず、1)だが、カリフォルニア工科大とMITの共同プロジェクトである "Voting Technology Project" の分析結果として、投票行動、また投票方法のテクノロジーに関し、「特に変わったパターンは認められない」とし、「インターネットで流通している『事実』は、選択的に選ばれたものである」というコメントを引用している。この記事では、特に、フロリダのいくつかの郡において、民主党員が多い州でブッシュ氏の得票の方が統計的に有意に多くなっているという、あるウェブサイトの指摘を取り上げているが、コーネル大やハーバード大の政治学教授が「これらの郡は伝統的に大統領選は共和党に投票した」として、投票行動として特に珍しくはないと反駁しているという。
また、オハイオ州の電子投票機で、ブッシュ氏に4000票余りが追加されていたという問題について、オハイオ州の選挙管理委員会の委員長であるダムシュローダー氏は、この誤作動の理由はわからないとしながらも、この間違いは訂正されて、最終的な集計は正しいものになっている、と言っている。また、この誤作動は1台だけの問題であり、他の機械では同じような誤作動は見られなかった、という。この事件を追っていたBlackBoxVoting.orgは、日曜日以来更新されていない。
どうやら、ブッシュ陣営が選挙不正をしたという噂は、今のところ噂でしかないといえるようだ。まあ、ケリー支持者がやりきれない思いをこういう噂に賭けた、と考えればわかりやすいかもしれないが。
ところで、この大統領選挙に関して、ブログ界隈に流れた「都市伝説」は他にもある。たとえば、ブッシュ氏に投票した州はIQが低い、という表が、日本でもあちこちのブログで紹介されていたが、この数字も、最上位のコネチカット(113)から最下位のミシシッピ(85)まで、IQの差が大きすぎる。この表について報道したEconomist紙は「オリジナルデータを独自に検証できない」として記事を撤回し、またこの表を最初に出したサイトの管理人も、「手元に資料がない」と、ソースを提示できないでいる。一方、別のサイトでは、大学受験生の共通試験であるSATなどをもとに独自に計算したところ、もう少し均衡した数字が出た。この表でも、大雑把にはBlue StatesのほうがRed StatesよりもIQが高いように見えるが、有意な差かどうかは、前の表に比べてずっとわかりにくい。それでも、ケリー支持者のほうがIQが高い、という人は、こんな表も見て欲しい。慈善団体への寄付額と一戸当たりの収入を比較した州別ランキングでは、あきらかにブッシュ氏支持の州の方が高得点を上げている。(via: andrewsullivan.com)
さて、重要なのは 2)の点である。この記事を読んで、早速、instapundit.comの読者たちが、「大手メディアがブログに対してネガティブ・キャンペーンを始めた」と言い始めている。レイノルズ教授自身は、同じ記事の「ブログでは情報の流れが速いので、噂が流れるのも速いが、専門家が噂を論破するのも速い」という部分を引いていて、まあそれほどネガティブではないと考えているようだ。もちろん、レイノルズ教授は「うちは引っかからなかったけれどね」と強調するのを忘れないわけだが。
確かに、このような大手メディアのブログに関する記事には、ラザーゲート事件以来傷ついた大手メディアのプライドが透けて見えるし、ブログの問題点を指摘したがっている様子もうかがえる。まあ、ラザーゲートが示したのは、大手メディアの反応は決して速いとは言えないし、ネットの住人が提示した疑惑が正しいことももちろんあるということだったが。ともあれアメリカではブログの存在感が増しているが、まだまだ大手メディアにつけいる隙はあるということだろう。
振り返るに、日本のブログで、ブッシュ支持者のIQネタやら、投票不正疑惑のネタやらを載せた後で、その後の事実検証・訂正・撤回まできちんと追っかけて載せたものがいくつあったのか興味がある。私の見たところでは、はてなのgryphon氏くらいだったが、他にはあるのだろうか。ブログが《草の根ジャーナリズム》だと言う言葉も聞かれるようになってきたが、まず、自分の発信した情報に責任を持つとか、ある程度のエチケットが浸透しない限り、日本のブログが現実の影響力を持つことは難しいといえるだろう。
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NYタイムズ「不正投票疑惑は論破された」 ( 週刊オブイェクト)
見事に釣られました……IQ調査の茶番劇 (アナザーブルーテリトリー〜最後の砦)
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何ヶ月も前の話を今更蒸し返すのもナニですが地球村の事件簿とかいうので扱っているの [Read More]
Tracked on Dec 30, 2004 1:21:53 PM
Comments
自己レスですが、ひとつぜひブログの書き手に習慣にしていただきたいのは、投稿後に文章を修正した場合に、そのことを明らかにすることですね。たとえば、抹消線(strikethrough) タグを付けるとか、追記で修正箇所を明記する、とか。コメントしたり、トラックバックしたりした後で、元の文章が変わってしまうと議論がかみ合わなくなってしまいます。また、読書の気付かないところで書き換えるのは、読者の信用を損ないかねません。インターネットは簡単に修正できてしまうだけに、かえって自制しなければいけないところですね。私はと言うと、発表から1時間以上経った後は、小さな誤字・脱字の修正以外は修正箇所を明記するようにしています。(発表直後は実は少しずつ推敲したりしています。その方がやりやすいので)
Posted by: むなぐるま | Nov 12, 2004 3:42:20 PM
言及有難うございます。ちょっと自分のとこでも書きましたが今回の”不正”伝説の検証、反証の功績は
http://plaza.rakuten.co.jp/obiekt/diary/
さんらに帰することになるでしょう。
私もいったんUP(サーバーに記録)させてから、あとでもう一度読み直して、じゃんじゃん推敲したり後で知ったネタを付け加えたりするタイプなので、今後その修正をどう記録に残すか健闘しないといけませんね。(修正だらけになる)
「これは論争になるだろう」と予測できるときは修正の旨を断っていますが、それ以外の部分は怠っているので。
Posted by: Gryphon | Nov 12, 2004 5:10:14 PM
> Gryphon さん
はてなダイアリーのようなダイアリー系のツールと、Typepad互換のようなブログ系のツールの使い勝手の問題もあるでしょうね。はてなの方が、さらさら書ける感が強いのかもしれません。ブログによって目的も違いますし、すべて修正箇所は明示すべき、というわけではないですが、一つ一つの文章の塊を積み上げていく、という指向の場合には、ブログとはいえ推敲したり、ポストする前に読み直したりというのは必要でしょう。まあ、ある一定期間ごとに過去の自分のエントリについて区切りをつけていくというのは大事かもしれません。
Posted by: むなぐるま | Nov 12, 2004 7:01:24 PM
「自分の発信した情報に責任を持つ」ということが一番大切だと思います。日本では、圧倒的に匿名(ハンドルネーム)ブログが多いのですが、匿名とはいえ、やはり公(おおやけ:public sphere)に向ってものを言うことへの責任と矜持を忘れてはいけない。ぼくとしては、いい加減なものは淘汰されていくだろうと楽観的ですが......。
修正の件では、抹消線は汚らしく見えるので、段落を変えて《追記》としています。こんなふうに...↓
《追記》
久しぶりの投稿ですネ。いつもいろいろと参考にさせていただいてます。
Posted by: はた | Nov 12, 2004 8:42:13 PM
「Are Quickly Buried」を「すぐに論破された」と訳すのは、いかにも厨房臭く感ぜられますが如何なものでせうか。
そもそも何かと言えば「論破」という言葉を使う人物は、おそらくあまり議論というものをした事がないのではないか、という印象が御座います。
4年前のブッシュvsゴアの選挙疑惑ですら未だ完全鎮火しておらぬ以上、今回の事例も相当に長引く可能性があり、即断即決は後々大いに物笑いの種と成らぬとも限りませぬ。まずは宜しく隠忍自重なさるが宜しからうと思われますが如何。呵呵。
Posted by: bury | Nov 12, 2004 8:46:16 PM
尤も「プロ市民」等と言う下衆な符牒を恥ずかし気も無く使う御仁に対して
../../2004/04/index.html
隠忍自重や良識を求むるのも詮無き事。此れは我輩が粗忽で御座った乎。呵呵呵。
Posted by: bury | Nov 12, 2004 9:13:30 PM
>いかにも厨房臭く
「厨房」なる符丁は果たして・・・
Posted by: gryphon | Nov 12, 2004 9:45:02 PM
> bury さん
確かに、buried と 「論破」では少し違うかもしれませんね。文字通り訳して、「埋葬された」とか、「葬られた」の方がいいかもしれません。ま、埋葬された疑惑が復活することもあるというとこでしょうか。ご指摘ありがとうございます。まあ、ブログですし、煽り半分に書いているところはあります。でも行き過ぎた場合にはご指摘下さい。ま、buryさんも同じ種類のゲームをやっているようには見えますが。
Posted by: むなぐるま | Nov 13, 2004 12:10:41 AM
私もニューヨークタイムズのこの記事は読みました。
まさにむなぐるまさんの仰る通りだと思います。
投票の不正やIQなどとケリー支持派が言い出したことで、
私はケリー支持派(の一部)に呆れ果て、冷静な視点を
取り戻すことができました。彼等は自分達で自分達の首を
絞めていることに気がついていないようですね…。
Posted by: kagami | Nov 13, 2004 10:09:29 PM
> kagami さん
道徳・価値観の問題がこの選挙にどれだけ影響を及ぼしたか、という問題に関しては、まだまだ議論が続いているようですね。ただ、選挙直後のリアクションとして、ブッシュ氏の支持者を見下してしまったメンタリティ、という問題は残るとは思いますが。
Posted by: むなぐるま | Nov 17, 2004 5:40:37 PM