むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

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December 02, 2004

ブロガーとしての大学教授

シカゴ大学助教授(政治学)でブロガーのDaniel Dreznerが、ブログと研究活動について書いている。
Musings on blogging and scholaraship

きっかけは、ノーベル経済学賞受賞学者のGary Becker第7上訴裁判所第7巡回区連邦控訴裁判所の判事のRichard Posnerが共同でBlogを開始する、というニュース。(この方々のすごさについて私はいまいちぴんと来ないので、読者でこちらの分野に詳しい方に解説して頂けるとありがたいのですが。)経済学・法学の大物がブログに登場、ということで、学者としての研究活動とブログを書くことが両立するかについて論じているのだが、アメリカにおける学者ブロガーの現在がわかって面白い。

現在、哲学や法学のブロガーは多いが、経済学や政治学ではまだまだということのようだ。その要因のひとつとして、tenureを持っている(日本で言えば、常勤の)大物学者がまだまだブログについて偏見をもっているため、若い学者が、自分の昇進のチャンスがなくなるならと心配して参加に消極的になってしまうのではないか、という分析を紹介している。ここでの問題は、ブログを書くことが研究活動として認められるかどうか、なのだが、ここからリンクしてあったこのエントリ(marginal revolution)では、ブログを既存の研究活動に位置づけるモデルとして、次のような例を挙げている。
1)ブログは短い研究論文である。(新しい考えの提示)
2)単体のブログエントリではなく、ブログの世界全体 (blogosphere)で見れば、分析の道具として機能していると考えられる
3)ブログを使って、自分の研究成果を広く伝えることができる。
4)ブログは、研究誌を編集しているようなものである。
5)ブログのエントリは講演のようなもの
6)ブログは、長い叙事詩にも似た、新しいメディアである

Drezner氏は、大物学者がブログに参入すれば、若い学者もブログを書きやすくなるのではないか、ということで、政治学の学者でブログに参加して欲しい人は誰だろうか、と問いかけて結んでいる。コメント欄にでている名前を見てみると、サミュエル・ハンチントンや、ジョセフ・ナイなど、日本でも知られた名前も見られる。(ジョセフ・ナイといえば、Dreznerの最近のエントリで、ナイ氏が最近小説を出版して、学者らしくないセクシーな場面があるというのを紹介していた。)

日本を振り返ってみるに、大学の知識人というか、いわゆる論客でブログを持っているのは西尾幹二氏とか(いつの間にアドレスが変わっている…)、宮台真司氏とかだろうか。あと、もう少し若くなるが、私も注目して見ているised@glocomに参加している方々も。それから、news_from_japanのakiさんや、「おおやにき」の大屋さん。また、ブログではないが、時事問題についてネット上で発言しておられる亀井秀雄氏。どの方も、退官されたか、若手の方という印象。もっと大物の論客や大学教授がブログに参入したら、若手も心おきなくブログを書けるかもしれない。

逆に、学者がブログに参入するメリットはなんだろうか。
 まず、論壇誌や新聞などを媒介せず、自分の意見をそのまま発表できること。そもそも、Drezner氏がBlogを始めたのは、New York Timesにオピニオン記事を送っても掲載されないので、その憂さ晴らしに自分の考えを発表し始めたため、というのをどこかで読んだ。その彼も、Blogを通して言論界でのプレゼンスが増し、最近はNew York Timesにオピニオン記事が載ったばかりである。
 次に、ブログを中心としたネット上の議論において、ネットメディアで記事を発表する方が、紙メディアやTV・ラジオよりも影響力が大きくなること。ネット上にある記事ならリンクを張ればいいが、他メディアの場合は、誰かが打ち直すか、スキャン・キャプチャなど、メディアを映す必要がでてくる。もちろん、自分の考えをネット上で晒すことにはリスクもあるだろう。例えば、朝日新聞のあるコラムニストなどは、ネットでコラムを発表していなかったらここまで批判されることはないだろうとは思う。(もちろん、批判されて仕方ない内容なわけですが。)しかし、これから情報・コミュニケーションの主軸が紙からネットに移っていくという大きな流れは絶対なのだから、早めに参入しておいたほうが得だとは思うのだが。
 切込氏あたりでつづいているネット・ジャーナリズムについての議論は私は横目で見ているだけなのだが、ブログでしか読めない面白い論客が今の10倍くらい出てきたら状況は自然と変わると思っているので、あまりそちらのテクニカルな議論については興味がなくなってしまった。それより、既存メディアで有名な論客がもっとブログに参入すればいいのに、とは思う。まあ、このエントリが問題提起になれば、とは思う。

 あ、このブログはあくまで趣味でやっているので、自分は「学者ブロガー」ではないと思います。そのつもりならやはり実名でやらないといけないと思うし。でも、大きな流れとしては興味がありますね。

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Listed below are links to weblogs that reference ブロガーとしての大学教授:

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大学はダメダメ論。 今回は自分の主張のみではなく、様々な人の意見を引用します。... [Read More]

Tracked on Apr 12, 2005 4:15:48 AM

Comments

ブログと呼べるかどうかはともかく、多摩大学ではブログやってますね。中谷巌さんとか。
http://www.tama.ac.jp/blog/

Posted by: 栗先生 | Dec 2, 2004 6:19:34 PM

Richard Posnerは「法と経済学」Law and Economics / Economic Analysis of Lawの大物ですね。今年のLS外書講読の教材にも使いました。言っていることが正しいかはともかく多作ですし、影響力も強い学者です。
アメリカの法学界は実務家と研究者が分離しておらず、連邦最高裁や控訴裁の判事には著名な研究者が就任することも多いので、判事だから理論家でないというわけではありません。privacy概念を定立した論文を書いたBrandeisや、「法とは、裁判官のなすだろうことの予言である」というテーゼでlegal realismの先駆けとなったOliver Wendell Holmes, Jr.はいずれも連邦最高裁判事になりましたし、面白いところではlegal realism左派で法の確定性だけでなく客観的事実認定の不可能性を主張したJerome Frankが第2巡回区連邦控訴裁の判事を務めています。Posnerの前職はシカゴ大学LS教授、現在もそこで講義してるみたいです。
ちなみにLSを優秀な成績で終えるとlaw clerkといって特定の裁判官の下で徒弟修行みたいなことをするのですが(日本で言うと調査官のように、事件の記録調べや判決等の起案をするみたいです)、Lawrence LessigがclerkとしてついたのはこのPosnerです。

なおU.S. Court of Appeals for the 7th Circuitは第7巡回区連邦控訴裁判所とお訳しください(第7巡回控訴裁判所くらいでも可)。単なるお約束ですが、上訴と控訴は違いますし。

Posted by: おおや | Dec 3, 2004 1:31:25 AM

> おおやさん
 翻訳のご指摘ありがとうございます。早速訂正しました。
 それから、Richard Posnerについての解説ありがとうございます。
 「アメリカの法学界は実務家と研究者が分離しておらず、連邦最高裁や控訴裁の判事には著名な研究者が就任することも多いので、判事だから理論家でないというわけではありません。」ということですが、控訴裁判所の裁判官にして学者でありコラムを多数書いている論客、という経歴は、確かに日本の感覚ではイメージを持ちにくいところでしょう。
 両者ともシカゴ大学の関係者ということですが、開始前からトラックバックが数多く(といっても今日現在25ですが)届いていることからも期待度が伺えます。

Posted by: むなぐるま | Dec 3, 2004 12:30:24 PM

ノーベル経済学賞受賞者もピンキリですが、ベッカーはべっかくだと思います。好き嫌いは非常に分かれますが、Chicago学派の支柱とも呼ぶべき、大変な大物です。呼んでみたいですね。

Posted by: 高桐院 | Dec 11, 2004 9:51:07 AM

> 高桐院さん
なるほど、ノーベル経済学賞受賞者でも別格と言うことですね。本題には関係ないのですが、
> ベッカーはべっかく
には笑いました。

Posted by: むなぐるま | Dec 13, 2004 5:46:23 PM

(2006年5月 むなぐるま管理人からの受託により保管)

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