切込隊長がアルファブロガーの使命について語っている
アルファブロガーとやらに選出されてしまった件について (切込隊長BLOG)
「アルファブロガー」なるものを探すコンテストについては以前も少し触れたが、この度結果が発表されて、その結果に切込隊長が反応している。
コンテスト自体について言うと、「論壇系ブロガー」というカテゴリで、隊長のほかに極東ブログやR30などといったところが代表的サイトとして挙げられているというのは、「論壇系ブログ」というカテゴリが一般に認知されるきっかけとしては好ましいことと思う。しかし、隊長は、「論壇系」の将来については悲観的なようだ。この隊長の記事でも、「ブログでは喰えない、だからブログには良質な書き手が集まりづらい、という問題意識を持って、そこから敷衍してブログはジャーナリズムたりえるか? という議論を吹っかけて途中で面倒くさくなって投げたというのも私にとっては痛恨の事態でした。」とあるが、この頃の議論には私も少し参加したりしていたので(ずいぶん昔のような気がするが)、隊長が、まだこの問題については関心というか、責任感を持っているというのはうれしいことだ。というか、隊長、しっかりやってください。そんな期待もこめつつ、少しコメントする。
隊長の認識として、「やはり仕事に直結している専門性のある内容をネット上に出す際の障害をブログはいまだ抱えているというのが現実ではないかと思います。」とあるが、これは確かにその通りだと思う。ネット言論の正統性の問題とか、たとえば大企業が絡んだりする場合の訴訟コストの問題などを指しているのではないかと思うが、そのへんはアメリカでも日本と似たような現状じゃないかな。
アメリカでは、数ヶ月前に、人気クイズ番組Jeopardy!の、連勝記録がかかった番組の結末について、ネタをばらすエントリが該当番組の音声ファイル付きでブログ界隈に流れて、番組の制作会社を所有するSONYが、ブログに圧力をかけて音声ファイルが削除される事態になったりした。その時の反応をみてみると、大手ブログはともかく、中小のブログの場合は、特に相手が大企業などの場合は、抱え込む訴訟などのコストが大きすぎて背負いきれないという現状が明るみに出たと思う。Instapunditなんかは、「訴訟費用をシェアする基金があったらいいのにね」と言っていたが、それは思いつきのレベルにすぎないという印象。一方、最近こちらでも書いたケースでは、Appleの新製品情報をばらしたThinkSecretが、支援を自主的に申し出た弁護士の支持を受けたりしてAppleと全面対決する様相を見せている。こちらの動向は注目したい。
さて、日本の「論壇系ブログ」の現状について、たとえば英語圏に向けてなにか書くとしたら、どういうことを書くかなあ、と想像してみたりすると、過去一年では、イラクの日本人人質事件に対する反応とか、先月の朝日・NHK問題についてとかを触れることになるのではないかと思う。朝日・NHKについては、既存メディアの報道に対して緻密かつ本質的な批判のできるメディアとしてインターネットが機能している、ということはいえると思う。実は、この一件、英語圏の日本学研究者のメーリングリストでも話題になったのだが、朝日などの既成メディアのみに頼っている外国人研究者などは、「まだ国家による言論弾圧か」くらいに思っていて、まったく現状を読み違えていると感じた。こういう人達には、日本のブログで起こっている議論を読んでもらえれば、現状認識が変わるだろうに、と思う。
いっぽう、論壇系が説得力を持つための責任感というか、重みというか、それを醸し出すまでには、まだまだ成熟が必要とか思う。オープンマインドなアメリカ人研究者に、日本語の人気ブログを見せようかと思うと少しためらわれるのは、ちょっとした表現とかを見て躓かないかなということ。特に、アメリカ人の研究者などは差別や外国人疎外の言説に敏感なので…。もちろん、責任を持って発言しているブログはあるけれど、その辺の感覚はまだまだかもしれない。隊長自身が、自分を「厨房」と規定しているのもその辺りを指しているのかと思う。
別に言葉狩りをしたりPCを押しつけたりしたいというわけではないので、この問題はなかなかうまく説明できないのだが、一言で言うと、政治的な問題のスタンスは何であれ、「公義」の感覚を持って書いているか、というふうになるかな、と思う。ここ10年ほど、小林よしのり氏などの発言により、日本の言論には「公=国家」が欠けているということが言われた。それは大筋でいいと思う。ただ、英語という土俵に立ったときは、「公=日本国家」では済まない部分もあると思う。では「公義」とは何なのか。そのことをもう少し考えて行くには、やはり日本のブログ界が英語圏に開いていくのが必要なのかなあ、と思う。いや、私自身、どちらかというと保守寄りと思われていると思うし、自分でもそのレッテルで結構なのだが、日本の保守言論を世界に開き、つなげていくということを考えたとき、この辺りはいつも気になっている。この問題については後日エントリを改めて書く。
最後に一言。finalventさんあたりは、日頃の発言を見るに「論壇系ブログ」なるものが日本の言論空間に与えるインパクトについては懐疑的だというようにお見受けする。しかし、現時点で、もし私が日本のブログ言論についてなにか英語で書くとするならば、「ダルフール問題のような、日本のマスコミがなかなか注目しない問題について人々の関心を喚起したという点において、ブログの意義は大きい」ということは言えるのではないかと思う。もし日本のブログのささやかな歴史が書かれるときがくるならば、この一点に関する極東ブログの意義は記憶されるべきであろうと思う。
【追記 2/3/05】
スーダン問題について (極東ブログ・2/4/05)
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Listed below are links to weblogs that reference 切込隊長がアルファブロガーの使命について語っている:
» スモールワールドと相互接続 from muse-A-muse
前の湯川さんの問い掛けがまだ気になってる。。
(「ネットは世界を狭くするのか?」ってやつ)
どうも、なんか未消化な感じで・・
まぁ、なんとなくだけど・・いま... [Read More]
Tracked on Feb 3, 2005 8:27:02 AM
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Some Japnese bloggers introduce English articles about Darfur into Japnanese blog society, however, I do not know any case of vice versa. As Mr. Munaguruma suggests in his article (Japanese), it is significant to introduce to English-speaking blogger... [Read More]
Tracked on Feb 12, 2005 12:25:05 AM
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ひできです...この前「アルファ・ブロガー」の英文記事を書いて、 ネタフルで思いっきり失笑を買ってしまいました... 自分としては、よい意味で使ったつもり... [Read More]
Tracked on Feb 13, 2005 9:02:22 AM
» 「rotten girl(female)」の話 from 箱男
前に書いた「新世代アメリカ女性マンガアーティスト」がリヴカちゃんの日記で英訳(lilrivkah: ”New Age American Female Mang... [Read More]
Tracked on Feb 17, 2005 11:53:38 AM
» 切込隊長@山本一郎氏についての検証記録 from キャッチミーイフユーキャン(切込隊長@山本一郎氏まとめサイト)
事の発端
切込隊長BLOG(ブログ)他、奇抜な発言で注目を集める切込隊長@山本一郎氏。各方面でその発言内容に疑念を持つ声が挙がっていたが、投資一般@2ch掲示板の切込隊長スレッドで「ネオ丸ごと」発言の真偽を検証(2005年4月10日から)、氏のブログでの回答を期に今回の騒動が始まったと思われる。どこから「尾ヒレ」が付いていたのか、非常に興味深い。
疑問点
「切込隊長」に関する情報の奇妙さ
親がバブルで6億も借金して潰れそうになったのを本人のオラクルと�... [Read More]
Tracked on May 22, 2005 11:28:24 AM
Comments
ご無沙汰しています。
朝日-NHK問題の件、Rather Gateと同じコンテクストで日本のブログコミュニティでどう検証されて居るのかふと気になってお邪魔しました。思いっきり厨房で恐縮なのですが、とっかっかりをご教示いただければ幸甚です。
Posted by: 高桐院 | Feb 7, 2005 6:07:16 AM
>高桐院さん
事件の詳細ということでしたら、「Irregular Expression」、「圏外からのひとこと」、「セカンド・カップ」などのサイトで追っているようですね。(右手サイドバーの blogroll からどうぞ。)
私自身、この問題についてきちんと追っかけていないのですが、朝日新聞の取材手法のずさんさが明らかになったということは言えそうですね。今までの様々な誤報・曲解などの歴史を知っている人には「またか」という展開のようですが。「圏外」で紹介されていた「鳴かぬなら 鳴いたと書いて すり合わせ」という川柳に言い尽くされているような気がします。まあ、NHKも朝日も大きな組織であり、このままうやむやにする方向、という流れなのかもしれません。
Posted by: むなぐるま | Feb 7, 2005 10:59:45 PM
むなぐるまさん:
suggestion、どうもありがとうございます。兎に角まずはブロガー達が検証している内容を勉強してみたいと思っています。隣国強硬派である両氏が、遺骨問題がクローズアップされている中で、十分なエビデンスも無しに朝日に貶められようとしているなら、それは単なる誤報や曲解で済まされるものではないと思います。朝日はそれなりの覚悟をすべきでしょう。
私自身は、結局のところ主観的判断をするしかないのですが、マスコミ自身にチェック能力が期待できない中で、ブロガー達の検証がどの程度エビデンスに基づく論理構成になって居るのかを自分なりに確かめてみたいと存じます。
重ね重ねどうもありがとうございました。
Posted by: 高桐院 | Feb 8, 2005 9:11:26 AM
>ひできさん
(こちらのほうでお返事させて頂きます)
リンクとTBありがとうございました。私のささやかな提案に反応して英語で書こうと思って下さるというのはとてもうれしいことです。
私のほうは、英語で新たにブログを立ち上げる余裕などはまだないのですが、その必要は感じています。英語で発信する層の裾野が広がることが第一ですが、究極的には、英語圏と日本語圏の関心領域をつなげていくことが重要だと思っています。それは、例えばダルフール問題への対応ということで言えば、(日本語向けには)なぜ日本がダルフール問題に関心を持つべきか、そして、(英語圏向けには)日本のダルフール問題への取り組みが世界で知られると言うことの意味、位置づけはなにか、ということを考えることに他なりません。英語で日本のネット事情を発信するサイトがもっと出てきたら、そのような関心領域のつながりというのが自然と広がるのではと思うのです。ともあれ、私はまだ何か始めているわけではないのですが、もっともっと考えていきたい問題ではあります。
Posted by: むなぐるま | Feb 13, 2005 4:30:35 PM