セントルイスでの第二回討論。今日はタウンホール・ミーティング形式で、参加者が候補に直接質問する形式。以下は、討論を見ながら取ったメモ。
9:05 p.m. (ET) ケリー氏に、いきなり「あなたは決断力に欠けていますか」という質問。しかし、ケリー氏は話題を変えて全然違う話をしている。ブッシュ氏のほうが「大統領は一貫性がなければ」と攻撃。
9:10 ブッシュ氏に「WMDがなかったという報告がありましたが」という質問。情熱的かつシンプルな答え。今日はブッシュ氏は前の討論より休養十分という感じ。ケリー氏は、「イラクに関し、私は意見を変えたことがない」と言う。話題がそれる悪い癖が少し出ているが、答えは短く、直接的。
9:19 ブッシュ氏に海外諸国の反米感情についての質問。「レーガン元大統領もヨーロッパでは頑固者と呼ばれていた」と、人気がなくても正しいことをすべき、と主張。これに対し、ケリー氏が4年前の討論の答えで「出口戦略と十分な兵力がある時だけ軍事行動する」と言ったことを持ち出して、「約束を破った」と。イラクについてはケリー氏が攻撃に使えるネタが多い。かなり効果的な議論を展開している。
9:26 イランと北朝鮮。ブッシュ氏がケリー氏の、対北朝鮮の「二国間対話」政策を批判。私も二国間対話は賢い政策とは思わないのだが、ブッシュ氏の説明はディテールが少ないので、イメージだけ見れば説得力がないような気がする。
9:32 徴兵復活するかどうか、という質問。ケリー氏が答えながらブッシュ氏のほうをまっすぐに見て、「(州兵の呼び出しなど)実質上徴兵が起こっている」と厳しい批判。ブッシュ氏はすこし頭に来たような様子で反論。イラク戦争の多国籍軍についての論争だが、両者ともシャープに答えている。両者の違いがはっきりしている。
9:37 テロ対策について。ブッシュ氏の答えは「すべてできることはしている」と言っている。前回の討論でブッシュ氏は「大統領は大変な仕事なんだよ」と連発して後日揶揄されたが、今日はクリアに、嫌味にならない言い方をしていて説得力があったと思う。
9:42 質問は国内問題へ。ケリー氏、またもや4年前の討論の答えと実際の政策の矛盾を指摘。ブッシュ氏がメディケアの成果を強調して、ケリー氏は何もしなかったと言うと、ケリー氏は「われわれはメディケアを改善しただけでなく、予算を均衡した」と。そう、財政赤字もブッシュ政権の大きな問題。
9:46 健康保険と訴訟改革について。ブッシュ氏が「ケリー氏は上院で最もリベラル」と攻撃。また、エドワーズ氏を副大統領に選んだことに対して疑問。先日のワシントン・ポスト紙のGeorge Willのコラムでもあったが、弁護士は民主党の最大の支持母体になっている。ブッシュ氏は訴訟コストを減らし、弁護士の取り分を減らす改革をしている。これが実行されると、弁護士たちだけでなく、民主党が大きなダメージを受ける。
9:52 財政均衡について。ブッシュ氏は、「私が大統領になる6ヶ月前に不況になったから財政赤字が増した」と答えた。
9:54 ケリー氏に、「年収20万ドル以下の人々には増税しないとカメラに向かって誓って下さい。」ケリー氏は、言われた通り誓い、また、「財政赤字を半分にする」とも誓う。これ、日本でもやったら面白いだろう。ブッシュ氏は、「過去の投票行動から、彼は増税するだろう」と反論。ケリー氏は再反論で、マケイン氏の名前を出しながら「企業税の抜け穴をなくす」と発言。ここで中間層に人気のあるマケイン氏を持ち出すのは賢い。
10:03 環境問題。これも、二者の違いが鮮明になる問題。私はブッシュ氏が環境問題について関心をもっているとは思わないのだが。それから、ケリー氏は「私は科学を信じる」とも。科学者でブッシュ氏の政策に不満を持っている人は多い。
10:06 経済政策。ケリー氏が、アウトソーシングをする企業を批判。ブッシュ氏が、この質問をきっかけに「中小企業はケリー氏の税制で打撃を受ける」と攻撃に転ずる。ケリー氏は「それは違う。ブッシュ氏が木材屋で、チェイニー氏が中小企業、そういう数え方をしている統計」と。それに対してブッシュ氏は「私が材木屋? それは初耳だ。…木材いります?」とジョークで切り返した。??? この問答、よくわからんかった。
10:14 愛国法。ケリー氏はこの法案にも賛成票を投じたのか。まあほとんど全員賛成だったわけだが。
10:15 ES細胞の研究利用について。この問題について、ブッシュ氏は「生命倫理」を強調し、ケリー氏は「科学の希望」を強調する。この問題は、中絶論争にもつながる生命観の問題も絡むので難しいが、ブッシュ氏の立場には宗教右派も反対しているという事情がある。こういうと誤解されそうだが、この問題、たんなる「科学の進歩のため」という理由付けで研究を解禁するのは問題があると思っている。
10:22 最高裁判事の任命問題。これは実はけっこう重要な問題。両者とも、「法を解釈する人」というようなことを言っていたが、両者の意味するところは大きく異なる。両者ともはっきりとは言わないが、この問題を気にしている人は多い。そろそろ次の判事を任命するタイミングで、現在の最高裁はちょうど左右均衡しているから、次の一人の重みは大きくなる。
10:25 中絶問題。私はケリー氏の答え(「中絶に個人的に反対だが、政府の代表として個人の権利を守らなければならない」)は、微妙なニュアンスながらよく表現されていたと思ったが、ブッシュ氏は「今のを解読するのは難しいね」と一刀両断。
10:28 ブッシュ氏に「4年間の政策で、間違いだったと思うことがありますか」と。ブッシュ氏:「振り返ってみると戦争の戦術的なミスはあったと思う。人間だから」。この譲歩は少し驚き。でも、イラク戦争を始めたことは正しかったと信じる、大統領として責任を取る、と強調することを忘れていない。それに対しケリー氏は「本当に最後の手段として戦争を選んだか、よく考えてみよう」と主張。ブッシュ氏は、ケリー氏のflip-flopを批判して反論。また、「あのような状況でいま以上強固な同盟がつくれたかどうかは怪しい」と、ケリー氏の主張自体を疑問視する人もいる。ともあれ、二つのまったく違う世界観が提示されている。どちらが一般庶民と共鳴するか、だろう。
まとめ。両者とも大きなミスはなかったように思う。ケリー氏が、「変節漢」というイメージとはうらはらに、クリアで力強い答えを用意していたのが目立った反面、ブッシュ氏も疲れたような1回目討論とは異なり自らの立場をはっきり主張していた。国内問題に関しては、中絶問題など、「この問題だけでだれに投票するか決める」というべき問題が多くある。その意味では、どちらに投票すべきかというシグナルが答えの中に含まれていたのではないかと思う。多くのアメリカ国民にとり、一番の問題はイラク情勢だというのが最近の世論調査の結果である。そうなると、ケリー氏が有利だろう。いっぽう、ブッシュ氏のケリー氏批判のうち、弁護士業界との関係、中小企業の税負担など、有効打もいくつかあったと思う。