共和党大会についてブログを書いてるひまがあったら、もっとやるべきことがあるだろ。Get a life. >自分
それはともかく、3日目。なんといっても注目は民主党上院議員のゼル・ミラー氏。この人は南部ジョージア州選出のベテラン議員なのだが、この選挙では去年辺りからブッシュ大統領の支持を表明。共和党も大歓迎、ということで大統領演説の前日、副大統領の直前という最高のスポットを与えられた。しかし、彼の演説にはびっくり。
この人、9・11後は特にブッシュ支持を鮮明にしていたのだが、その前からもここ数年の民主党のあり方に業を煮やしていたらしい。彼がブッシュ支持に傾いたのには、アメリカ北東部のリベラルが主導する民主党路線についていけない南部の庶民派の民主党員、という地域間のギャップもあるらしい。さて、演説の前に、彼を知る地元アトランタの新聞論説委員が「彼は選挙戦では相手を激しく攻撃するよ」と言っていたのだが、この日の演説では怒りを大爆発させた。
まず、自分の家族の話から始め、「私にとっては自分の党よりも私の家族を守ることが大事だ」と言った。それから、民主党、とくにケリー氏への激しい攻撃を始めた。圧巻は、ケリー氏の上院議員としての経歴を攻撃したあたり。ケリー氏が反対票を投じた軍事プログラムを列挙して、それらがいかに湾岸戦争やイラク戦争に貢献したかを列挙する辺り。
The B-1 bomber, that Senator Kerry opposed, dropped 40% of the bombs in the first six months of Operation Enduring Freedom.
The B-2 bomber, that Senator Kerry opposed, delivered air strikes against the Taliban in Afghanistan and Hussein's command post in Iraq.
The F-14A Tomcats, that Senator Kerry opposed, shot down Khadifi's Libyan MIGs over the Gulf of Sidra. The modernized F-14D, that Senator Kerry opposed, delivered missile strikes against Tora Bora.
The Apache helicopter, that Senator Kerry opposed, took out those Republican Guard tanks in Kuwait in the Gulf War. The F-15 Eagles, that Senator Kerry opposed, flew cover over our Nation's Capital and this very city after 9/11.
I could go on and on and on: Against the Patriot Missile that shot down Saddam Hussein's scud missiles over Israel, Against the Aegis air-defense cruiser, Against the Strategic Defense Initiative, Against the Trident missile, against, against, against.
そしてこう締めた。"This is the man who wants to be the Commander in Chief of our U.S. Armed Forces? U.S. forces armed with what? Spitballs?" (「彼がアメリカ軍の総指揮官になりたいんだと言っている。アメリカ軍は何で武装するの? 紙つぶてか?」)
他にも、
○アメリカ軍を、自由をもたらす「解放者」ではなく「占領軍」と呼ぶ奴は私は許せない。
○表現の自由を与えてくれるのは米軍である。しかし、民主党の連中はアメリカは問題であってもその解決ではないと言ってはばからない。
○上院議員なら20年間間違い続けても許される。しかし、総指揮官の決断は国を誤る。
○ケリー氏は国連の議決なしにはアメリカ軍を動かさないと言っている。アメリカの安全をフランスにゆだねるのか。
などと、元海兵隊らしく直立不動の姿勢からまくしたてた。もちろん会場は大喝采。"USA! USA!" の大合唱。
「ケリーに私の家族の安全を任せられない」という、知性よりはハートに訴える演説だった。テレビで見ながら、戦前育ちのおじいさんに一喝入れられたような気分になった。思わず姿勢を正したくなった。
しかし、演説が終わってからが大変だったらしい。CNNやMSNBCなどのニュース番組に出演した後も怒りが止まらず。(リンクは番組のテキスト起こし)とくにMSNBCでは、ホストの「アメリカ・テレビ界の田原総一朗」ことクリス・マシューズが、
「紙つぶてで戦うって、どういう意味ですか」
と執拗に聞き続けるのに対し、
「お前の顔なんか見たくもない。質問したなら答えさせろ」
「時代が違えば決闘を申し込んでいるところだ」
などと大激怒。上のテキスト起こしに、二人のやりとりから、ミラー氏が去った後の気まずい雰囲気まですべて残っている。
この演説にアメリカ国民がどう反応するのか、少々予想しづらいところがある。アメリカのブログ界の反応は賛否両論。(ここやここによくまとめてある。)感情的なレベルでは、彼の言いたいことはよくわかる。民主党も共和党も一致団結して国を守った昔とは違い、戦時中でも大統領を平気で侮辱する今の風潮に違和感を覚えている世代の一員の魂の叫びと言うところだろう。「家族を守るためなら」という訴えを聞いて、やはりケリー氏じゃやばいかも、と思う人々も多いかもしれない。日本の保守派の人でも、彼のような骨のある政治家がいてほしい、と思う人もいるだろう。
一方、少し考えてみると、彼の演説には問題が多い。この議員、1992年にはクリントン大統領を推す基調演説をしており(その時の会場は皮肉にも今回と同じマディソン・スクエア・ガーデン)、またつい3年前にはケリー氏を褒めちぎった演説もしている。昔彼が言った言葉と今回の演説を並べてみると、ジキルとハイドというか、この人は相手を攻撃するためなら何でも言うのか、という印象すら受ける。
また、これはテレビの評論家も演説直後に指摘していたのだが、今回の演説には誇張というかうそも多い。ケリー氏が「国連の議決なしには軍事行動をしない」と言ったのは30年以上も前のことだという(参考)。むしろ、1ヶ月前の演説で全く反対の立場を表明している。また、これは議会のしくみを考えればわかることだが、B-1爆撃機を含む予算案に反対票を投じたからといって、B-1爆撃機配備に反対しているとは言えない。規模を多少縮小すれば賛成する、という前提に反対することもあるからだ。また、チェイニー副大統領が国防長官の時に、これらの軍事プログラムを縮小・中止する予算案を組んでいたらしい。となると「紙つぶて」論もあまり説得力がない。
また、日本人の立場から言えば、米軍がつねに「解放軍」であって、「占領軍」と呼ぶことすら許されない、という人との間には深い溝を感じてしまう。まあ、日本とアメリカが深いところで価値観を共有するのは無理と思った方がいいのかもしれないが。
結論。アメリカのブロガーの間では、「ファシスト」と当時言われた1992年のパット・ブキャナンに並ぶ愚劣な演説という評価と、「ブッシュ憎し」のリベラルの発言と比べたらまだまし、むしろよく言った、という意見に分かれているようだ。
ここからは私見。
この3日間、ブッシュ政権の「成果」についてあまり聞いていない。現在の景気についてはだれも触れない。また、「テロの戦い」の重要性はわかったが、イラク戦争の誤算、誤りについては触れていない。例えばアブグレイブ刑務所の拷問など。それから、フランスはどうでもいいから(失礼)、アラブ世界との関係をどう修復するのか、説明して欲しいと思う。この4年間、特に9・11テロ後はほぼやりたいようにやったんだから、結果を見せてほしいという気がする。それが説明責任だと思う。しかし、例えばチェイニー氏には、ケリー氏やエドワーズ氏にはない安定感がある。何でこの人ネオコンになってしまったのだろうか。(ワシントン・ポストでは、ラムズフェルド氏とパウエル氏が引退したら外交がかなり穏健になると予想している。)
一方、ケリー氏はよくわからない。よくわからないままに国民が選んだら、後で相当混乱する気がする。