むなぐるま

アメリカ在住の研究者(の卵)による日常観察・オピニオン系Blog

February 12, 2005

ハワード・ディーンがDNC委員長に選出

民主党全国委員会(DNC)の委員長に、去年の米大統領選で旋風を巻き起こしたハワード・ディーン元バーモント州知事が選出された。

Democrats Elect Howard Dean as Chairman (ABC News)
他の候補が既に撤退を表明していたため、今日の選出は形式上のことといえる。

DNCとは、党としての選挙戦略・資金集めを担う組織であり、議会・州知事の外にあって党の顔ともなる存在。ディーン氏は、大統領選のときにインターネットを用いた小口・草の根の新しい選挙資金集めの戦略を編み出して勢いのある選挙戦を戦ったのだが、早くからイラク戦争反対を打ち出したり、かなり思ったことをはっきり言う癖がありかならずしも安心できる候補ではないという印象があった。そこで、アイオワ党員集会後の例の絶叫演説がテレビで何度も流れて大統領候補として抹殺された。

これからの民主党の方向性を見る上で、彼がDNC委員長という要職についたことの意義は大きい。
先の大統領選を振り返って、民主党の戦略として、必ずしも中道寄りに歩み寄る必要はない、という声がちらほらと聞かれる。ケリー氏のように、戦略的に幅広い層にアピールしようとして、結局「意見をコロコロ変える」というイメージを払拭できないよりは、思ったことをはっきり言えばいいのではないか、と。ディーン氏選出は、その流れを民主党全体の意思として表明したように思う。

Althouseの最近の記事で、2008年の大統領選にウィスコンシン州選出上院議員のファインゴールド氏を大統領候補に推す、というのがあった。この記事では、ブッシュ大統領、クリントン前大統領、そしてシュワルツェネッガー知事の3人を挙げ、それぞれ政策的な立ち位置も生まれ育ちもだいぶ異なるが、だれも幅広い有権者に訴える力を持っているという。(過去2回の民主党の大統領候補、ゴア氏、ケリー氏には確かにこの資質が欠けていた。)ファインゴールド氏は、上院でただ一人愛国法に反対したりと、かなりリベラルな投票歴を持つのだが、確かに思ったことをはっきり言うし、言ったことは実行する。全国的には、選挙資金規制法のマケイン=ファインゴールド法の起草者としても知られているから、いい意味での知名度はある。アルトハウス教授は中道なのだが、彼ならケリー氏よりはましな大統領候補になるのでは、と言っている。ちなみに、教授は共和党側の候補ではコンディ・ライス国務長官を推しているのだが。ライス国務長官、就任してまだ間もないが、アメリカのブロガーたちの間の人気は上々だ。

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December 07, 2004

Left2Right: そして対話は続く

今日は、新しいブログをご紹介。
Left2Right: How can the Left get through to the Right?

副題は、「左派の人々はどうしたら右派の人々にメッセージを伝えられるか?」という意味だが、もちろん、今回の米大統領選で、アメリカという国が共和党支持のRed-Statesと民主党支持のBlue-Statesに分裂しているとか、リベラル派の学者、知識人、政治家たちが保守系の人々に語る言葉を持ち合わせていない、といった現状を指して「ではこの状態を改善するにはどうしたらいいのか?」という問題意識から大学関係者がはじめたグループ・ブログである。このブログの目的を読んで目を引くのは、「人にメッセージを届けるのには、まず彼らのいうことを聴き、彼らから学ぼうという姿勢をとることである」という言葉である。

寄稿(予定)者のリストをみると、リチャード・ローティやら、アフリカン・アメリカン研究で知られる歴史家のクワミ・アンソニー・アッピアなど大物が名前をつらねている。ローティなどが本当に定期的に寄稿するようなら面白いと思うが、アッピアはすでに一つエントリを書いていて、アメリカの反知性主義には、ある種の自信の欠乏があって、間違いを指摘されればされるほど意固地になってしまう心理がある、と指摘している。彼らの「リベラル派は保守派を軽蔑している」という認識は、じつは彼らが抱えている自身への疑念の裏返しなのだ、と。一方で、「私も昔は福音派だったからね」などと告白しつつ、福音派の人々に内容のある議論をしようと挑発している。他にも、まだきちんと読んではいないが、「分裂する国家アメリカ」というイメージ自体を疑ったり、現在アメリカの政治言論が抱えている問題についてアカデミックな立場から語ったり、なかなか面白そうなエントリが並んでいる。このサイトから本当の意味の対話が始まるか、今後に注目だ。

また、今アメリカの政治系ブログでなにが話題になっているか、ひとめでわかるサイトも紹介しておこう。
The Daou Report
右から左まで、現在ホットな話題がひとめでわかるサイト。

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November 12, 2004

「ブログが広げた投票不正疑惑はすぐに論破された」 (New York Times)

Voter Fraud Theories, Spread by Blogs, Are Quickly Buried (NYT)

この記事、
1)大統領選挙後に流れた、ブッシュ陣営が投票の不正をしたというさまざまな噂について、大学などの専門家たちが、まったく根拠がないと否定している検証報道
2)根拠のない噂を無責任に流すブログやインターネットはいかがなものか、という意見
の二つの要素がある。

まず、1)だが、カリフォルニア工科大とMITの共同プロジェクトである "Voting Technology Project" の分析結果として、投票行動、また投票方法のテクノロジーに関し、「特に変わったパターンは認められない」とし、「インターネットで流通している『事実』は、選択的に選ばれたものである」というコメントを引用している。この記事では、特に、フロリダのいくつかの郡において、民主党員が多い州でブッシュ氏の得票の方が統計的に有意に多くなっているという、あるウェブサイトの指摘を取り上げているが、コーネル大やハーバード大の政治学教授が「これらの郡は伝統的に大統領選は共和党に投票した」として、投票行動として特に珍しくはないと反駁しているという。

また、オハイオ州の電子投票機で、ブッシュ氏に4000票余りが追加されていたという問題について、オハイオ州の選挙管理委員会の委員長であるダムシュローダー氏は、この誤作動の理由はわからないとしながらも、この間違いは訂正されて、最終的な集計は正しいものになっている、と言っている。また、この誤作動は1台だけの問題であり、他の機械では同じような誤作動は見られなかった、という。この事件を追っていたBlackBoxVoting.orgは、日曜日以来更新されていない。

どうやら、ブッシュ陣営が選挙不正をしたという噂は、今のところ噂でしかないといえるようだ。まあ、ケリー支持者がやりきれない思いをこういう噂に賭けた、と考えればわかりやすいかもしれないが。

ところで、この大統領選挙に関して、ブログ界隈に流れた「都市伝説」は他にもある。たとえば、ブッシュ氏に投票した州はIQが低い、というが、日本でもあちこちのブログで紹介されていたが、この数字も、最上位のコネチカット(113)から最下位のミシシッピ(85)まで、IQの差が大きすぎる。この表について報道したEconomist紙は「オリジナルデータを独自に検証できない」として記事を撤回し、またこの表を最初に出したサイトの管理人も、「手元に資料がない」と、ソースを提示できないでいる。一方、別のサイトでは、大学受験生の共通試験であるSATなどをもとに独自に計算したところ、もう少し均衡した数字が出た。この表でも、大雑把にはBlue StatesのほうがRed StatesよりもIQが高いように見えるが、有意な差かどうかは、前の表に比べてずっとわかりにくい。それでも、ケリー支持者のほうがIQが高い、という人は、こんなも見て欲しい。慈善団体への寄付額と一戸当たりの収入を比較した州別ランキングでは、あきらかにブッシュ氏支持の州の方が高得点を上げている。(via: andrewsullivan.com)

さて、重要なのは 2)の点である。この記事を読んで、早速、instapundit.comの読者たちが、「大手メディアがブログに対してネガティブ・キャンペーンを始めた」と言い始めている。レイノルズ教授自身は、同じ記事の「ブログでは情報の流れが速いので、噂が流れるのも速いが、専門家が噂を論破するのも速い」という部分を引いていて、まあそれほどネガティブではないと考えているようだ。もちろん、レイノルズ教授は「うちは引っかからなかったけれどね」と強調するのを忘れないわけだが。

確かに、このような大手メディアのブログに関する記事には、ラザーゲート事件以来傷ついた大手メディアのプライドが透けて見えるし、ブログの問題点を指摘したがっている様子もうかがえる。まあ、ラザーゲートが示したのは、大手メディアの反応は決して速いとは言えないし、ネットの住人が提示した疑惑が正しいことももちろんあるということだったが。ともあれアメリカではブログの存在感が増しているが、まだまだ大手メディアにつけいる隙はあるということだろう。

振り返るに、日本のブログで、ブッシュ支持者のIQネタやら、投票不正疑惑のネタやらを載せた後で、その後の事実検証・訂正・撤回まできちんと追っかけて載せたものがいくつあったのか興味がある。私の見たところでは、はてなのgryphon氏くらいだったが、他にはあるのだろうか。ブログが《草の根ジャーナリズム》だと言う言葉も聞かれるようになってきたが、まず、自分の発信した情報に責任を持つとか、ある程度のエチケットが浸透しない限り、日本のブログが現実の影響力を持つことは難しいといえるだろう。

【トラックバック】
NYタイムズ「不正投票疑惑は論破された」 ( 週刊オブイェクト) 
見事に釣られました……IQ調査の茶番劇 (アナザーブルーテリトリー〜最後の砦)

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November 05, 2004

町山智浩氏にお返事

町山氏からコメントを頂きました。町山氏は、正確には「中西部」に「文盲で狂信的な福音派のクリスチャン」がいる、とは言っていません。これは私の勇み足でしたので訂正します。私が反応したのは、おもに「2004-10-29 ブッシュが勝つかもしれない理由その3」の、次の部分です。

いや、そもそも、戦争がどうなろうと関係ないのだ。
国民の4割が福音派キリスト教徒のブッシュ支持者であり、この支持基盤は強固で揺ぎ無い。
民主党が票を得ることができるのは残りの6割から共和党支持者を引いた、わずかな数なのだ。

共和党はレーガンを当選させる時に福音派を支持基盤に取り込み、
実質的に彼らに共和党を乗っ取られた(マケインは共和党の宗教支配に反対している)
ブッシュは福音派に改宗して彼らの支持を確固たるものにした。

毎週日曜の朝は教会に通う福音派は、投票日には互いに声をかけあって投票に行く。
その投票動員率は日本の創価学会以上だ。
彼らはブッシュがウソでイラクに攻め込んでアメリカ兵を千人も殺させようと、
金持ち減税と戦費で、史上最高の赤字を作ろうと、
とにかくゲイ同士の結婚に反対し、中絶を非合法化することに賛成である限り、
ブッシュに無条件に投票する。
この福音派、国民の4割はどうにも動かせないのだ。

しかも、福音派は福音派の新聞を読み、福音派専用のニュース・チャンネルしか見ないし、福音派専用のラジオしか聴かない。
また、ユタ州のモルモン、ペンシルヴェニアからミズーリにかけて住むアーミッシュもブッシュを支持している。
また、メル・ギブソンが所属する、原理主義的カソリックも、ブッシュを支持している。
彼らは異教徒を許せないからだ。
モルモンはモルモンのニュースしか見ないし、アーミッシュはテレビを持っていない!
それなのに彼らの投票動員力は強力だ。神の教えを守るため、何が何でも投票に行く。
赤字やイラクの死者のことなど彼らには関係ないのだ。

そういう宗教キチガイどもにアメリカ、いや、世界がコントロールされてしまっているのだから
恐ろしいよ。もちろん彼らはイラク人が10万人死のうと気にしない。

『サウスパ−ク』のトレイとマットは「パッション・オブ・ジュー」でキリスト教原理主義の恐ろしさを訴えていたが、『チーム・アメリカ』で反ブッシュ俳優を皆殺しにし、「若者に投票に行くな」と呼びかけていた。このままだと君たちの大嫌いな宗教馬鹿どもの世の中になるけどいいのか?

この部分を読むと、アメリカ「国民の4割」が「日本の創価学会以上」の投票動員率を持つ、「どうにも動かせない」「宗教キチガイども」と読めますが、違いますか? 町山さんはこういう人達が中西部だとは言っていないのでそこは訂正しますが、この辺りの言葉には「キリスト教価値観がブッシュ勝利の大きな要因になる」という客観的な分析以上の敵意を感じます。町山さんが福音派をあたかも「悪魔の手先」であるかのように見ている、といったのは、そういうことです。

ご指摘を頂いた、今回の選挙における福音派クリスチャンの役割についての記事は私も読みました。キリスト教的価値観や、中西部(ハートランド)の、芸能人や知的エリートへの反発が、今回のブッシュ勝利につながったというご意見には大筋で賛成します。私も、たとえば同性婚のようなイッシューを民主党への敵対心のバネにするようなカール・ローブのやり方には反対です。でも、だからといって、上に引用したような大雑把な把握では現実を見誤ると思います。ブッシュ支持者には宗教的に穏健な人も多いし、有権者がブッシュ氏支持に回ったのは宗教だけではありません。また、ドブ板選挙的な選挙戦術の優劣も分析しなければいけないでしょう。

もうひとつ、上のような大雑把な表現により、二つの立場の感情的な反発が増すことになるとは思いませんか? コメントのなかにあったBBCの調査では、「マイケル・ムーアのような奴に誰に投票するか言われたくない」というのもありましたね。たぶんこれからヨーロッパやアメリカ東海岸の新聞を中心に、「福音派のおかげで勝った選挙」というレッテル貼りをする人々が出てくると思います。私はそのような新聞記事には何か別の動機があるのではと疑っています。また、ブッシュ氏に投票した51%の人達は、こういうのを読んで、「ヨーロッパのメディアやアメリカのリベラル・エリートがまたアメリカを曲解している」と思うのではないでしょうか。そういうのは誤解を深めるだけなのではないか、と思うのですが。また、今回の選挙における「福音派」の影響力をメディアが強調すればするほど、「福音派」の力の幻影というのが大きくなっていって、結果として「福音派」を利するということもあるのではないでしょうか。それは町山さんの望むところではないでしょう。

最後に、アメリカ人がイラク戦争のイラク人の死傷者について何とも思っていない、ということは全くその通りであり、私も強い違和感を覚えるところです。もちろん、ケリー氏支持者の大部分も、アメリカ兵の死者は問題にしてもイラク人(特に一般市民)の死傷者については考えていない人が大部分なわけですが。その点は町山さんに賛成します。

【追記 11/05/04】今回の選挙、ゲイの権利、キリスト教の影響などについて、Andrew Sullivanのブログで意義のあるダイアローグが続いています。彼はタカ派だがゲイでカソリック。ゆえに、現在のアメリカを二分するような思想戦争の中で、言葉で自分の居場所を創ろうとしている数少ない批評家・ブロガーです。私は彼の意見にいつも賛成するわけではないけれど、彼は勇気のある発言者だと思う。ぜひご参考に。それから、サイドバーに Over the Rhine の "Ohio" へのリンクを張りました。ぜひ聴いてみてください。

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November 04, 2004

大統領選についての私的総括

私はこの1年半ほどアメリカ中西部に住んでいる。今年の夏に引っ越したのだが、引っ越し前も後もたまたま今回の選挙で激戦になった州だった。だから、今回の選挙で、いつもはニコニコして共存している人々が全く違う価値観を持ち、ちょうど保守とリベラルで半々くらいで真っ二つに分かれている、というのは、理屈でなく日常の感覚でわかる気がする。2000年の選挙の結果が大接戦で終わったとき、アメリカという国はRed States(共和党支持の州)とBlue States(民主党支持の州)でくっきりと分裂している、ということがよく言われた。それ以来、この価値観の分裂に興味をもつようになった。特に、共和党の支持者とはどんな人達なのだろうか、と。

この感覚、じつは大学にいるとよくわからない。大学の場合、教員も院生も圧倒的にリベラルな人が多い。(教員以外の職員や学部生も入れると半々くらいになるのだが。)だから、大学の中にいると、イラク戦争についても「あの戦争に賛成している人ってどんな人だろう?」と、保守派の人々はどんな人か想像もつかないというようなことになりかねない。大学の先生方をはじめ、アメリカのリベラルな論客の話を聴いていると、同じ思想の人々に語る言葉は持っていても、保守派に語る言葉を持っている人は少ない。それから、「保守派の人達は知性が足りないのでは」というようなことも本気で信じている人も多い。有権者の50%(±1%)が共和党に投票する人々、残りが民主党に投票する人々なのに、その二つのグループの間で共通の言葉で対話することがどんどん難しくなっている現実がある。そんなことがわかってくると、日頃はリベラルな人達とつき合うことが多いのだが、対話のための共通の言語をもつためにはどうしたらいいのだろうか、と考えるようになった。

このブログでも米大統領選挙について、いろいろとかなり詳しく書いたのだが、基本的には、日本でも「反ブッシュ」のムードが先行するなかで、なぜブッシュ氏がアメリカ国民の半数の支持を得ているか冷静に考える材料を提供したいというのが大きな動機のひとつだった。で、実際に左や右の新聞記事やブログを読んだりしていくと、ブッシュ陣営(とくに選挙参謀のカール・ローブ)の巧妙な、反則すれすれの選挙戦術もいろいろと見えてきたし、ブッシュ氏が、さまざまな失政をしたのにもかかわらず、誤りを認めず責任も取らないという事実もわかってきた。いっぽう、そういう現実に不満を持つ大手のリベラルメディアが、「ブッシュ氏を支持するのは知能が足りない」という偏見丸出して、あたかも国民を教え、導くのが自らの使命とばかりに傲慢に振る舞うのも見えてきたように思う。また、とにかくブッシュ氏の政策に反対の意見をとりあえず出しとけ、というケリー氏の外交や、伝統的に反日的な民主党の政策の片鱗がケリー氏やエドワーズ氏にも見られたりもした。結局、私個人のスタンスとしては、民主党の外交・安全保障政策が共和党のそれに限りなく近づいていくなか、「説明責任」を明確に打ち出したケリー氏に交代した方がアメリカのためにはいいのかな、と考えるようになった。(日本の国益という意味では、ブッシュ氏のほうがいいことは言うまでもない。)また、アメリカ国民もそのような判断でケリー氏を選出するのではないかという感じを持っていた。

しかし、結果としては、ブッシュ氏勝利。私としては、事実の観測も誤ったことになる。ひとつには、民主党側の新しい有権者の掘り起こし(若者や貧しい層)についてはメディアで大きく報道されていたものの、共和党側の、教会や家族・親戚などのネットワークを使った草の根運動についてはまったく無視されていたことがある。実際、共和党では、フロリダのような州では草の根の有権者の掘り起こしを二年がかりでやっていたという。これについて選挙前に唯一コメントしていたのが、ワシントン・ポストのコラムニスト、ジョージ・ウィル氏だった。結局、Fox News以外の大手メディアでRed Statesの様子を理解していたのは彼くらいのものだったということだ。私も、共和党支持のメンタリティを理解しようとはしていたが、結局はわかっていなかったのかもしれない。

今回、ケリー氏は前回のゴア氏の得票に500万票上乗せしたという。若者や新しい有権者の掘り起こしはある程度成功した。しかし、ブッシュ氏は、上に書いたようなネットワークの力で900万票上乗せした。この900万票ぶんが、普段メディアにはあらわれないアメリカのコアな力の部分だった、というのが今回の選挙の結果のいちばんの教訓だと思う。

それから、今回の選挙の結果について「福音派」「宗教右翼」の支持を受けた共和党が躍進した、という説明がなされている。しかし、私は、この説明は必ずしも現実を反映していないと思う。CNNのこの出口調査をみれば、アメリカの多様な現実のなかで、ちょうどブッシュ氏が51%の支持を得た、という実像が浮き彫りになっていると思う。たとえば、学歴についても、ケリー氏が優位なのは高校を卒業していない層と大学院以上の層であり、むしろ大卒ではブッシュ氏がリードしているという事実はどうなのだろうか。一方、年齢別では60歳以上でブッシュ氏が4年前に比べてリードを広げているのが興味深い。民主党で共和党の応援演説をしたゼル・ミラー氏のように、今の民主党にはついていけない、と考えるお年寄りの方が多かったのかもしれない。シニア・シチズンがエミネムのビデオをインターネットで見るとは考えにくいが、ビル・オライリーが「ビンラディンとエミネムがケリー氏を応援していますよ」と言ったら、民主党には投票しにくいとは想像がつく。また、意外に大きかったのは、レンキスト最高裁判事の急病ではなかっただろうか。ケリー氏が大統領になって保守派のレンキスト氏の代わりにリベラルな判事を選んだら、今後30年、40年単位で最高裁のバランスが変わってしまう、という危機感を感じた保守派の人々がブッシュ氏支持に回った、というのが結構大きかったのかもしれない。いずれにせよ、ブッシュ氏に9割方投票するような「宗教右翼」層があって、その人々がブッシュ氏を支持したために選挙に勝った、というのは一面的に過ぎると思う。

つらつらと書いてきたが、一番伝えたかったのは、アメリカ政治について「ブッシュ氏を支持したのは、中西部に住む文盲で狂信的な福音派のクリスチャン」というようなステレオタイプ的な説明をすることは、事実と離れているばかりか、様々な意見を持つ人々の間に言葉を切り開く作業の妨げにしかならない、ということである。たとえば、選挙日の数日前から、町山智浩氏がその手の言説を広めているのを読んで、はて、どうしたものかと思った。アメリカ人の一部の人々について理解できず、自分の言葉が通じないからといって、まるで悪魔の手先のように書いても誤解を深めるだけなのに、と思っていた。しかし、この選挙の後で、そういう見方はどうなの、と疑問を投げかける意見を日本語のブログ界隈でもいくつか見かけて、少し安心している。いずれにせよ、選挙は終わったが、アメリカ国内の価値観をめぐる対話は間違いなくこれからも続いていくことだろう。

【追記 11/05/04】町山氏からコメントを頂き、もう一度自分の文章を検討した結果、「中西部に住む」という部分を削除しました。その経過についてはこのエントリを参照して下さい。また、町山さんのコメントですが、建設的な議論になるきっかけになればと思いますので、そのまま残させていただきます。ご了承下さい。

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November 03, 2004

ブッシュ氏の勝利が確定

ブッシュ大統領が再選、ケリー氏敗北認める (読売)
みなさん既にご存じとは思いますが、「エドワーズ氏もやる気満々」という記事が一番上ではやはり困るので、一応アップ。今、ケリー氏の今日の演説を見てます。(ビデオ)後ほどもう少しまとまったコメントを書きたいと思います。ひとこと、私にとってもこの結果は意外でした。

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オハイオ州

[2:42 ET]
オハイオ州の開票結果 (CNN)
一部メディアではオハイオ州はブッシュ氏が確実となっているという報道だが、現在、ブッシュ氏のリード(12万票)と、暫定票 (provisional ballot)(17万票と予想) がだいたい同数であり、暫定票のゆくえによって民主党勝利の可能性が少しでもある場合は、民主党は負けを認めないといっている。もちろん、暫定票のほとんどがケリー氏に行かなければ逆転はない状況で、ケリー氏は数字的には非常に苦しいが、先程エドワーズ氏が、「すべての票が数えられるまで、もう一晩待ってみよう」と、やる気満々の発言をした通り、正式に結果が出るまではしばらくかかりそう。今回のオハイオ州は、4年前のフロリダのような状況になるのかどうか。

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November 02, 2004

投票中

[0:30 ET] オハイオ州のノックス郡では、投票終了予定時刻から4時間以上経った今でもまだ投票が続いているらしい。この郡の、近くに大学がある投票所では、まだ200人くらいが行列に並んでおり、全員が投票終了するには午前3時までかかるとのこと。オハイオ州では身分証明などのためにもっぱら共和党が監視員を送っており、時間が余計にかかっているのかもしれない。とにかく、投票終了時刻に行列に並んでいる人は全員投票できるというルールのため、この全員が終わるまでは投票が続く。また、私の見ているNBCは、投票が続いている間はオハイオ州の当確を出さない方針にしているそうで、これが結果発表が長引く原因になっている。フロリダ州はブッシュ氏が取ったため、ケリー氏はオハイオ州を取る必要がある。

今、バラック・オバマがインタビューを受けている。民主党は厳しい結果が続く中、彼の当選は明るいニュースだ。彼はやっぱりいいなあ。

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開票中

現在(23:20 ET)のところ、ブッシュ氏204人にケリー氏188人。今のところ、目立つ結果としてはケリー氏がペンシルベニア州を取ったことくらいか。オハイオは、新規登録した有権者が殺到して多くの投票上でキャパを超えたことを考慮し、終了時刻を過ぎても投票が続いた。そのため、オハイオの結果が出るのはしばらく先になりそう。また、オハイオ州は古いタイプの投票用紙を使っているため、4年前のフロリダのように投票用紙を電球にかざして再集計…ともなりかねない。やれやれ。

もう一つの大票田フロリダだが、ブッシュ氏が支持を伸ばしている模様で、ブッシュ氏が取りそうな勢いだという。しかし、ここも、大量の在外票があり、開票に手間取っている。在外票の集計は木曜までかかるかも、と言っている。また、コンピュータ投票機が原因不明のエラーを起こしている郡もあるという。4年前の繰り返し。それから、フロリダの場合、4年前の教訓から接戦の郡の場合自動的に再集計になるため、結果が確定するまでは時間がかかりそうだ。とにかく、オハイオとフロリダの結果が確定しなければ大統領選の帰結も決まらないから、今晩は決まらないかも知れない。

印象としては、ケリー氏の伸びが意外と鈍い。NBCの出口調査によると、若い世代(18-29歳)の投票率は4年前とほぼ変わらなかったという。昨日のエントリで言及した調査では、未決層がケリー氏に傾けばケリー氏が激戦州を全勝ということもありうるという観測だったが、それほどの勢いはなさそう。もちろんまだその可能性はあるが。

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いよいよ選挙当日

今日図書館へ歩いていく途中で、"Kerry / Edwards" のプラカードを持った5人の大学生らしいグループを見かけた。ちょうどそこが投票場の前だったのだろう。また、「投票場への足が必要な人は声を掛けて」と窓に大きく書いたミニバンが走っていたり。アメリカの選挙の日 "Election Day" に居合わせたのは今日が初めてではないが、今までにない熱気だと思う。
 印象としては、選挙直前・当日の「現場」では、とくにケリー氏側のほうに熱気を感じる。昨日もたまたまリベラル系トークラジオのAir Americaを聴いていると、著名な言語学者のジョージ・レイコフ氏が電話出演。なんと、ネバダ州で俳優のショーン・ペン氏と組んで戸別訪問をしているという。これには私も耳を疑った。ショーン・ペンが玄関に立っていたら誰でもびっくりするだろうなあ。この教授にしても、発言だけでなく、自分の足で選挙活動をしているというのは、すごい。政治活動の原点と言うべきか。まあ、そういう意味では、数週間前、フロリダで保守系コラムニストのペギー・ヌーナン氏が似たようなことをしている映像を見たから、どちらもそのような動きはあるのだろう。あとは、特に投票場に共和党が弁護士を送り込んでいるオハイオ州などで訴訟や再集計にならないかどうかが注目。
 ネットの方は、リンクしていた Electoral-vote.com はじめ、ZogbyやらSlate.comもつながりにくい。多分アクセス過多なのだろう。今日は仕事を片づけながらゆっくりテレビで状況を追うことにしよう。

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November 01, 2004

世論調査のメタ分析:ケリー氏圧勝へ?

大統領選直前になってこちらで話題になっているのが、プリンストン大学の分子生物学教授が運営している世論調査のメタ分析サイト。このサイト、現在出ている各州世論調査をすべて計算に入れた上で、選挙人数の期待値を分析している。このサイトの管理人の教授によると、まだ誰に投票するか決めていない人や、初めて投票する人などの予想を計算に入れた上での最終結果の予想は、ケリー氏323人、ブッシュ氏215人となり、ケリー氏が圧勝するという。もちろん、この結果は不確定な要素についての主観的な要素が入っているのでそのまま客観的な結果予想とは言えないが、その分析を読んでみると現状がかなり見えてくる。とにかくこのサイトは一読をおすすめする。

さて、この教授の分析方法、結果を簡単にまとめてみる。まず、分析方法だが、各州ごとに世論調査をもとにしてケリー氏、ブッシュ氏勝利の確率を出す。この時点でほぼ100%どちらかが取ることが間違いない州は計算から除外する。それから、その確率に基づき、選挙人の数の期待値(ある州の勝利確率xその州の選挙人数の合計)を計算する。そのときの確率の計算なのだが、最初に現在ある世論調査(選挙に行く予定にしている有権者)をもとに、「既に意見を決めている人々(1)」について計算する。そのうえで、「まだ意見を決めていない人(2)」を計算に入れて補正し、さらに「初めて投票する人、世論調査にかからない人(3)」のぶんを補正する。

(2)、(3)の人々がどのように投票するか、また(3)の規模がどれくらいかは数字に表れないので、この部分にはどうしても主観が入ってくるが、過去の結果から大まかな予想を立てることはできる。(2)だが、この時点でまだ誰に入れるか決めていない人々は、過去の統計をみると現職よりも新人候補に入れる割合が高いという。この教授は、(2)の層は3:1の割合でケリー氏に投票するという予想から、ケリー氏の数字を1.5%補正している。(これは全く常識的な予想だと私は思う。)そして、(3)だが、この教授はこのファクターによりケリー氏が2.5%有利になると予想している。携帯電話しか持っていない若い層は圧倒的にケリー氏支持だし、また今回の選挙で初めて投票する人は現状に不満を持っているから、ケリー氏に入れるだろうという予想だ。その結果、現在の世論調査の結果に、合計4%ケリー氏に上乗せして計算している。繰り返すが、(2)(3)については正確なデータはないし、当日の天候などにも左右される。

さて、このような手順で出した最終的な選挙人数の予想は、
(1)ケリー氏252、ブッシュ氏286 (ブッシュ氏勝利確率80%)
  ↓ケリー氏に1.5%補正
(2)ケリー氏280、ブッシュ氏258 (ケリー氏勝利確率71%)
  ↓ケリー氏に2.5%補正
(3)ケリー氏323、ブッシュ氏215 (ケリー氏勝利確率約100%)
となる。

この結果をどう読むかは一人一人の判断なのだが、まだ決めていない人々、世論調査に含まれない人々が最終的にケリー氏に決める確率が高いというのはごく常識的な判断とすると、ケリー氏が圧倒的に有利とはいえるだろう。逆に、もしこれで接戦となれば、ブッシュ陣営の現場部隊が前日・当日に相当頑張ったといえるだろう。

また、このサイトの分析で有益なのは、まだ接戦の州のうち、民主党有利の州から共和党有利の州を順番に並べたリストである。このサイトによると、現時点で接戦になっているのは6州であり、民主党有利から共和党有利に並べてみると、
(民主党有利)ミネソタ・ハワイ・アイオワ・オハイオ・ウィスコンシン・フロリダ(共和党有利)
となる。(この分析では、ペンシルベニアはケリー氏で堅いと予想。)残りの、大勢の決した州の選挙人を現状で割り振ると、ブッシュ氏が236、ケリー氏224となる(はず)。ブッシュ氏としては、フロリダを勝っただけでは足りず、ウィスコンシンを取る必要がある。投票率がどうなってもこの順序はそう変わらないはずなので、明日の開票速報で、ウィスコンシンがどちらに傾くかが、この選挙の勝敗を決める一つの目安になるとは言えるだろう。

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大統領選の開票結果を速報するサイト

大統領選挙がいよいよ明日に迫りました。このページでも再三紹介しているElectoral-vote.comでは、開票結果をリアルタイム速報するということですので、興味がある方はこちらからどうぞ。もしサーバが落ちていたら、www.electoral-vote3.com, www.electoral-vote4.com, www.electoral-vote5.com などのミラーサイトがあるとのことです。

私はといえば、自宅でネットワークTVの速報を見るか、キャンパスのどこかで学生に混じってTVを見るかどちらかだと思います。拙ブログでは中継はしないつもりですのでご了承ください…。

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October 31, 2004

大統領選をめぐるいくつかの先入観と現実

いよいよ大統領選の投票が火曜日に迫ったのだが、結果はいまだに読みにくい。全国世論調査は接戦だし、各州の結果予想もまだまだ流動性が高い。フロリダ、オハイオ、アイオワ、ウィスコンシンなどいままで接戦といわれてきた州に加え、ハワイ、ニュージャージー、ミシガンなどケリー氏支持で堅いと思われていた州も意外に接戦だという世論調査結果が出たりして、予想がまったく立たない状況。
 さて、世論調査などを細かく見てみると、意外と先入観を覆すような結果が出てきている。その一つ一つが、アメリカの「いま」を表していて面白いので、今日はその「先入観」のいくつかを検証してみる。

「福音派」クリスチャンのブッシュ氏支持
LA Timesの記事によると、この選挙において、いわゆる「福音派」クリスチャン (Evangelicals, "born-again Christians")の間でのブッシュ氏支持は、2000年のときの74%から、70%に下がってきているという。選挙戦を通してブッシュ陣営は福音派の支持取り込みに躍起で、8割から9割の支持を見込んでいたようだが、現在のところ7割にとどまっている。過去4年のブッシュ政権の政策をみると、同性婚を禁止する憲法改正案や、ES細胞の科学利用の制限など、この層をピンポイントターゲットにした政策を多く出しており、この層がまだまだ固まっていないというのは意外な感もある。
 この記事によると、南部、バイブルベルトの福音派はブッシュ氏支持で固まっているが、中西部の激戦州では福音派でも政治的に穏健な人々が多いとされる。だから、フロリダやウィスコンシンで彼らが大挙して投票しても、それがどれだけブッシュ氏有利に働くかは不透明という。また、この記事では、クリスチャンのジレンマとして、中絶や同性婚などでは共和党のプラットフォームに賛成しても、人種政策、環境問題、健康保険、そしてイラク戦争などでは反対という人が多いとも指摘している。たしかに、ブッシュ大統領の行く教会の牧師を含め、アメリカの教会牧師の多くはイラク戦争に反対だった。アメリカの外から見るとブッシュ氏の強さは意外に思えるかもしれないが、「福音派」だけでそれを説明するのは少々無理があるようだ。

黒人のケリー氏支持
一方、黒人層はここ数回の大統領選挙では圧倒的に民主党支持に回ってきたのだが、今回は黒人層のブッシュ氏支持が17〜18%と、前回選挙の倍になっているという。一方、ケリー氏支持は49%と、四年前のゴア氏支持の69%から激減している。(参考)今年の選挙戦を通して、アル・シャープトン師ら民主党の黒人リーダー層から、「民主党は黒人票を当たり前に思うな」という警告があったが、とくに教会に通うような黒人の間ではブッシュ氏支持が高まっているという。このコラムによると特に問題になっているのは同性婚問題という。特に、ケリー氏が大統領選討論でチェイニー副大統領の娘の話題を出したことに対して、「個人の尊厳を傷つけた」という印象が強まっているとこのコラムでは説明している。
 クリントン元大統領は、自ら誇らしげに「アメリカ初の黒人大統領」と呼ぶほど黒人層から共感を持って支持されていたが、ケリー氏にはそういう魅力はない。そういえば、ディーン氏も人種差別の象徴とされる「(南北戦争の)南部連合の旗をトラックに貼っているような人に支持されたい」という発言が南部で反感を買ったこともあったように、アメリカ北東部出身の候補はこのへんの感覚が生活実感としてないのだろう。

ビンラディンビデオは共和党に有利?
金曜日にビンラディンのビデオが放送され、これは危機感を煽るからブッシュ氏有利に働くといわれたが、ビデオ放送後の世論調査を見てみると、それほどの影響はないらしい。むしろ、ここ数日のトレンドではケリー氏有利に傾きつつあるようだ。私のブログからもリンクを張っているElectoral-vote.comでも、きょう(日曜)の集計ではケリー氏リードとなった。この点についてはTPMのこの記事も詳しい。

投票率が高ければケリー氏に有利?
今回の選挙は、新たに有権者登録をした人数が今まで以上に多く、投票率がかなり上がることが予想される。これらの、4年前までは投票しなかった層はどういう投票行動を取るか、だが、現状に不満を持った層がその不満の意思表示のためケリー氏に投票するというのがこれまでの通説だと思う。しかし、今日テレビ番組を見ていると、共和党も、ボランティアや、友人・知人・家族への働きかけを中心に、投票を呼びかける活動を大規模に展開しており、投票率が増えたぶんがどちらに行くかはまだわからない、という。これが、今回の選挙の動向を読む上での最大の不確定要素だろう。

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October 28, 2004

レッドソックスのシリング投手が大統領の応援演説

【追記2 11/1/04】 シリング投手ですが、大統領選前日の1日に大統領の応援演説に登場したようです。足のけがでかかとをがっちり固定して歩くのもままならないような状況だったようですが。

【追記 10/29/04】シリング投手は、足の負傷が思わしくないため応援演説をキャンセルしたとのこと。

(AP)
ア・リーグ優勝決定戦で、靴下を血まみれにしながら熱投し、レッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献したシリング投手。明日、早速ブッシュ大統領の応援演説でニューハンプシャーで大統領のキャンペーンに参加、応援演説をするという。その場所が、レッドソックスのファンが多く、接戦州となっているニューハンプシャーというのも、絶妙。また、今日の朝のテレビ出演では「来週はブッシュに投票しよう」と呼びかけた。レッドソックスの選手はボストンだからケリー氏支持というわけではないわけで…。

ケリー氏は、スポーツに関しては実に弱い。もちろん地元レッドソックスのファン(自称)なのだが、マニー・ラミレスとデーヴィッド・オルティズを混同して「マニー・オルティズは素晴らしい」と言ったり、接戦のウィスコンシン州で絶大な人気のNFLのグリーンベイ・パッカーズの本拠地を「ランバート・フィールド」(正しくはランボー・フィールド)と言い間違えたりして、スポーツファンに笑われたりしている。しかし、アメリカ国民にとってスポーツは大事な生活の一部だから、知らなきゃ言わなければいいというわけにもいかないのだ。まあ、ブッシュ大統領としてはとにかく使える材料はすべて使う、ということか。

いっぽう、今日一番のニュースは、イラクで終戦直後に大量の爆薬が盗まれたというスキャンダル。例によってTPMが詳しく追っかけているので、興味のある方はそちらを。

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October 27, 2004

米大統領選挙の引き分け・延長戦ルール?

ケリー対ブッシュの大統領選も大詰め。どの世論調査を見ても大接戦になっており、新聞などでは、4年前の悪夢が再現か…という懸念が浮上している。周知の通り、4年前の選挙はフロリダ州の投票結果がなかなか確定せず、再集計、法廷闘争の末ブッシュ氏に選挙人が与えられることとなった。ところで、この2000年・フロリダ州の選挙、民主党支持者には、ゴア氏が勝ったのだと信じて疑わない人が今でも多いのだが、私は、「引き分け」だった、という説を支持している。

これはある数学者が言っていたのだが、つまり、投票結果は誤差の範囲内であり、あとはどの票をどう数えるかという「数え方」によって選挙の結果が左右されるのだから、どちらが「勝った」ともいえない、というのだ。「一人一票の投票用紙をきちんと数えれば…」と考えがちだが、あのときの大騒ぎで、一票の「意志」というものにも相当な曖昧性があることがはっきりしたと思う。また、どんなに選挙システムの精度を上げても、差が小さければ、ルール次第で勝者が変わってくることは十分にあり得るわけで、その「誤差の範囲」をなくすことはできない。そして結果が誤差の範囲内だったらやっぱり「引き分け」なのである。

もちろん、2000年のフロリダの接戦の結果、投票用紙の不備、在外投票制度、また数千人規模と言われるマイノリティ中心の投票妨害などのアメリカの選挙制度の様々な問題に光が当たったのは確かである。(特に最後の問題は重い問題で、今回も問題が繰り返されるのではと特に民主党が注意を呼びかけている。)ともあれ、結果として最高裁の裁定で結果が確定したため、裁判所が結果を決めたという印象が残って後味の悪いことになった。jibjab.comのFlash動画でも、最高裁判事達が「あなたたちが投票しないとわれわれが大統領を決めちゃうぞ」と言っているのもそういう印象を裏付けている。

さて、今回こそはフロリダの教訓を生かして、問題点をすべて解消しているのでは…と思うのだが、じつはいくつか法廷闘争にもちこまれそうな要素が生まれてきている、という。大統領選挙と法律についての専門家がElection Law Blogを運営しているのだが、このブログを覗いてみるだけで、あまりの潜在的な法的問題点の多さに驚く。同じ著者が、Slate.comのほうで、選挙の結果を左右する法的問題点を5つにまとめているのがわかりやすいので、これに沿ってまとめてみる。

(1) 投票所の設備の故障・不備による訴訟。4年前は「ちょうつがい式投票用紙」の不備で相当もめたが、今回は、前回の選挙以来投票所の備品を取り替えたところが多く、初めての実戦が大統領選挙というところが多いらしく、故障や不正などで前のような混乱が起こる可能性がある。

(2) 有権者の資格審査に関する訴訟。最近の法改正により、投票所で投票資格がないと判断された人でも、仮投票用紙を使って投票し、後日資格を確認した上で正式な票と認められる、という手続きができた。しかし、この手続きのため、有効か無効かわからない票が数千票単位で生まれる可能性があり、接戦になった州ではこれらの票の有効・無効をめぐって訴訟になる可能性がある。また、既に、有権者の投票資格を不当に奪ったのではないかという疑惑がネバダ、ペンシルベニアなどで起こっており、これらが問題となることもありうる。

(3) コロラド州 "Amendment 36" をめぐる訴訟。コロラド州では、勝者が選挙人総取りする現行法を改めて、投票数に応じて比例配分すべきという改正案が住民投票にかかっており、もしこれが通ればこの選挙から適用となる。つまり、9人の選挙人のうち、最大4人が敗者に配分されることもあるのだ。この改正案、この選挙から適用となる「事後法」であること、また、選挙人に関する法律を決める権限は議会にあるという憲法違反であるという議論も成り立ちうるため、この4票をめぐって訴訟が起こる可能性もある。

(4) 議会によって大統領が決まる場合の訴訟。選挙人が同数の場合、下院(各州一票)の投票にゆだねられるのだが、これが問題になる可能性もある。また、選挙人が、本来投票すべき人物に投票しないことも可能であり、その最終判断が最高裁の手にゆだねられる可能性もある。

(5) 投票日にテロ事件などが起こった場合、投票時間を延長したり、投票を延期するかどうかについての訴訟。こんなことがあったら本当に大変なのだが、このような場合の投票の延長・延期については規定がない州が多く、裁判所が介入する可能性がある。

そんなわけで、11月2日の投票が終わっても、僅差ならば結果がすぐに出ない可能性も大きい。まあ、前回は結局最高裁が選挙の結果を決めることとなり、それに関して最高裁の権威や公平なイメージが損なわれたのは確かで、前のようなあからさまな介入はしないのではないかという観測もある。しかし、ある調査では、アメリカ国民の60%が、選挙の結果は24時間以内に判明しないと考えているらしい。これって、アメリカの選挙制度が破綻している証拠ではないかと思うのだが。ともあれ、「タイブレークルール」が発動しないよう、どちらが勝つにしても十分の差をつけて勝つことを願っているアメリカ人は多い。

さて、今日出た世論調査によると、電話世論調査の結果を、実際に投票した人種比率に基づいて補正をかける(電話世論調査のサンプルには白人が多い)と、接戦の州でもケリー氏が5%ほどリードしているらしい。(参考)もし黒人などマイノリティの投票率が上がれば、ケリー氏がかなり有利になるだろうという分析になっている。この時期になると毎日出る世論調査の数字は、携帯電話しか持っていない人は含まれないなど、どうしても正確な投票行動の予想はしにくい面があり、投票結果はこの数字だけでは予想できないといえるだろう。

P.S. イラクで人質になった日本人の方の無事を祈ります。ザルカウィ派だとすると、生存は難しいかもしれない。しかし、無事であって欲しいと願う。なぜ今時イラクに行ったの? とかいう質問は、無事に帰ってきてからするとして。

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タカ派評論家もケリー支持へ

昨日、元『ニュー・リパブリック』編集長で、私がよく読むブログAndrewSullivan.com主宰のアンドリュー・サリバンがケリー支持を表明した。彼の思想的立場は一貫している。対テロ戦争、イラク戦争に関しては一貫して支持していて、その点ではブッシュ大統領を支持していたのだが、アブグレイブ刑務所の拷問疑惑やイラク国内のテロ組織鎮圧の失敗など、イラクの戦後処理の失政に関しては厳しい批判を続けていた。また、彼は財政的には小さい政府指向のリバタリアンであり、財政赤字を積み重ねるブッシュ氏には批判的だったし、彼自身ゲイであることもあって、同性婚問題ではキリスト教右派にこびを売った現政権にまさに体を張って批判していた。そんなわけで、今回の支持もそれほど驚くべきことではなかった。

彼の場合、財政やら社会政策などで、リバタリアン保守の立場から批判していたのだが、それでも今回の選挙の最重要課題は反テロ政策、つまり、外交・軍事・本土防衛だったと言っていた。よく言われる "One issue voter" である。今回の選挙の場合、テロ絡みの問題で候補者を選んでいる人は多い。当たり前だが、安全な暮らしを守るという一点が崩れれば他の政策は関係なくなってしまうからだ。だから、彼がケリー支持を表明したのは、その反テロ政策でもブッシュ氏よりケリー氏を選んだことになる。

この支持表明記事を読んでみると、彼がケリー氏のいう多国間外交・国連主義について不信感を持っていることがよくわかる。それでもケリー氏を支持するのは、ブッシュ氏の戦争遂行の無能力ぶり、また自分の世界観に沿わない現実を無視しつづける姿勢が、このテロ戦争を遂行するのに不十分だからだという。また、ケリー氏が大統領になることにより、民主党内の穏健派が復権することになるだろう、という期待もある、という。ケリー氏支持者には反戦・リベラルの人々も多いが、ケリー氏が大統領になってもイラクでのオプションは限られていて、とにかくこの戦後処理を遂行するしかない。そういう意味では、民主党内のリアリストが主導権を握っていくことになるだろうというわけだ。一方、もしブッシュ氏再選となると、党内リベラル派の怒りはさらに増幅される。前にNew York Timesのコラムニスト、モーリーン・ダウドが、ブッシュ氏再選ならば08年にヒラリー氏立候補の勢いがつくと語っていたが、同じ種類の観測だと思う。その中で、アメリカ国内の思想的分裂はさらに進むだろう。

さて、タカ派でケリー氏を打ち出したのはサリバン氏だけではない。元超リベラルの論客でありながら、9/11後は一貫して「アフガニスタン・イラク人民の解放戦争」を支持してきた「ネオコン左翼」ことクリストファー・ヒッチンスもケリー氏支持を表明した。(このページは総合オピニオンサイトSlate.comのスタッフの大統領選支持一覧なのだが、ケリー氏支持が圧倒的に多い。)ヒッチンス氏は、つい最近も「イラク戦争を支持する」という主旨の記事をリベラル系雑誌 "The Nation" に投稿していたので、これには少々驚いた。彼の、少々暗号めいた説明を読んでみると、やはりブッシュ氏の執念深さ、反テロ戦争の強い意志には共感するが、現実的な政策としてはまったく説明不可能なほど失敗した、と言っている。ブッシュ氏の意志と、ケリー氏の現実的な統治能力をてんびんにかけた上で、ケリー氏に戦後処理を任せよう、という判断だろう。

こんなわけで、ブッシュ氏の切り札であったはずの外交・軍事部門でブッシュ氏を支持していたはずの批評家たちがケリー氏支持を打ち出している。彼らは、マイケル・ムーア氏のようにブッシュ氏を諸悪の根源とみるような立場の人々とは一線を画しているし、ブッシュ氏の9/11後の毅然とした対応を賞賛してもいる。また、ケリー氏の変節漢ぶりに不信感を抱き、彼が何をするかわからないと考えている。そのような彼らにとっても、現在のイラク政策の失敗はかくも大きく映っているということなのだ。ブッシュ氏は選挙に不利になるとなれば失敗も認めないし、失敗をした部下に責任を取らせることもない。そんな彼に責任を取らせよう、ということなのかもしれない。

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October 13, 2004

第三回大統領選討論

第三回討論。どちらも大きなミスはなかったように思う。ここまで来たら、どちらが討論に勝ったかはそれほど重要でないかもしれない。ブッシュ大統領が過去二回の討論に比べて生き生きとしていたように見えたのは私だけだろうか。そもそも、四年前ブッシュ氏は「憐れみ深い保守 (compassionate conservative)」のスローガンのもと、伝統的に民主党が強い健康保険、教育などの部門でリベラル寄りの政策を提示して当選したのだった。その当時を思い出させる、確信に満ちたパフォーマンスだった。また、チャーミングさではケリー氏はブッシュ氏には決して勝てないだろう。
 一方、ケリー氏は、この三回の討論を通し、「大統領らしい」イメージを有権者に伝えることには成功していたと思う。そのような大きな流れは今回の討論では変わらなかったように思う。

いくつか気がついたこと。

○ブッシュ氏はケリー氏の上院での投票行動をやり玉に攻勢に出ていたが、果たして有効打になっていたかどうかはわからない。この手の数字はいくらでも誇張できる。有効だったとすれば、「ケリー氏は上院でリーダーシップを発揮していなかった」という辺りか。

○ブッシュ大統領は、低所得者救済についての質問が出ると、その質問には直接答えずに教育改革 ("No Child Left Behind Act") の話題に切り替えていた。そういえばチェイニー氏もこのレトリックを使っていた。ブッシュ政権の4年間で最も目に見える効果が出たのはこの教育改革。この法案を通すときには両党の協力を得たし、伝統的に民主党が強い教育政策で強いイニシアチブを発揮した。また、「教師に説明責任を」という発想は、自由競争・反教職員組合など保守系にうけやすい側面も持つ。確かに貧しい家庭の子息が満足な教育を受けることが貧困をなくす一番健全な方法だとは思うのだが、一般的に税制などで貧困層に冷たいブッシュ政権の言い訳のような気もする。

○選挙戦も大詰め。さすがに税収の確保については納得のいく説明は聞かれるはずもない。また、アメリカでも年金は日本と同じ問題を抱えているが、ケリー氏はこの問題は先送りするといい、また、ブッシュ氏の「年金を一部貯金できるようにする」という案も、その間の年金収入をどう確保するかについては説明なし。年金改革はかくも難しい。また、ケリー氏になったら現在の財政赤字が減少して、均衡財政に移行するというのも疑問である。

○自分の信仰についての発言では、ブッシュ氏の謙虚さがよく出ていたと思う。この辺の感覚を日本在住の人に誤解されないように説明するのは難しいのだが、ブッシュ氏は実に自然に語っていた。また、マイノリティ、ゲイの人々の自由を尊重すると彼がいうとき、彼はそう心から信じているという印象を与える。その後に続くケリー氏は大変だと思ったが、彼もなかなか真摯に答えていた気がする。

○私にとっての今日のハイライト。
ケリー氏「ブッシュ氏は、私の健康保険政策について国民をミスリードしている。二つの報道機関が、大統領の説明は正しくないと言っている。」
ブッシュ氏「事実の真偽について報道機関をそんなに信用するのがいいとは思わないが…。(笑)」
CBSニュースの司会者の前ではっきり言うとは思わなかった。

さて、今のところ世論調査はデッドヒートなのだが、このまま行けばケリー氏が有利、という見方がある。接戦の州で民主党支持者が大量に有権者登録をしていること、また今のところ未決の層はどちらかというとケリー氏に投票すると見られていることから、世論調査の数字でブッシュ氏が5%ほどリードしていなければケリー氏が有利といわれている。討論の前はブッシュ氏がそれ以上のリードを保っていたが、2回の討論でブッシュ氏のリードはなくなってしまった。今回の討論でその流れは変わらないだろう。さて、オクトーバー・サプライズはあるのかないのか。ブッシュ陣営の参謀ローブ氏が、保守系コメンテイターに「10月中にサプライズがあるかもよ」と言っているらしいが…。

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October 12, 2004

シンクレアの例の件

六回裏現在、Yankees 7 - 0 Red Sox. ヤンキー・スタジアムの観衆が "Who's your daddy?" と大合唱している。あ、松井また打った。これで 8 - 0.

さて、明日は最後の大統領選討論なのだが、その前に、シンクレアの例の件の波紋が大きく広がっている。例の件とは、シンクレア放送ネットワークという会社が、所有の62局の地上波テレビ局で、選挙日直前に通常の番組を中断してケリー氏のベトナム戦歴にかかわる疑惑に関する「ドキュメンタリー」を流す決定をしたというニュースだ。この番組に登場する顔ぶれは、例の「高速艇」退役軍人のTV広告と同じ人々だ。

今日になって、民主党本部が動き出し、連邦選挙管理委員会にこれは「違法な選挙供与」と告発する事態になった。これに対して、シンクレアの副社長であるマーク・ハイマン氏が各社のニュース番組に登場し、反論。ケリー氏の戦歴を疑問視する退役軍人を弁護して「彼らを口止めしようとするケリー陣営はホロコースト否定論者と同じ」と発言して、さらに非難されている。

さて、このシンクレア放送ネットワークという会社なのだが、アメリカのメディア寡占化を象徴するような存在で、ネットワークTVの地方局を多く所有している。普段はその政治的な影響力に気づかないのだが、今日マーク・ハイマンという名前を聞いてぴんときた。この人物、夜のローカルニュース(夜9時〜11時に30分間放送される)のCM中に登場する「コラムニスト」なのである。ローカルニュース自体は、毒にも薬にもならない(といったら変だが)中道のニュース番組なのだが、彼のコラムだけは一貫して右より、ブッシュ政権擁護の論調なので、不思議なもんだと思っていた。去年住んでいた州で彼を見たときは、そのローカル局の社長か何かと思っていたのだが、この秋に引っ越してきた別の州でも同じハイマン氏が似たようなコラムを持っているので、どうなっているのかと思ったのだった。しかし、今日のニュースで、どちらの局もシンクレアの傘下だったのだということが分かり釈然とした。すると、ハイマン氏の「コラム」を放送している局で、問題のドキュメンタリーが見られるのだろう。それもプライムタイムに。

ブログの世界でも議論沸騰している。リベラル系のTPMでは、シンクレア系のTV局のボイコットを画策している。TV局に直接電話で抗議するのではなく、ローカルニュースで広告を流している地方企業の名前をリストアップし、TV局の営業部に電話し、企業名のリストを読み上げて「例の番組を引き揚げなければこれらの企業に電話して、製品のボイコット運動をする旨を伝えますよ」と言うという作戦らしい。もしボイコット運動が起こるようだったら企業は広告を引き揚げるし、そうなったらTV局は大打撃というわけ。(ちなみに、日本でもこれをやったら効果的かもしれないな。)TPMでは他のウェブサイトと連携して、シンクレア傘下の局に広告を出している企業リストをつくり、電話抗議を組織している。この辺りの動き、アメリカのブログの組織力を見る思いがして、すごい。

一方、9・11以来保守系の論調になっているInstapunditでは、この件に政府が介入するのは、言論の自由の観点からまずいと発言している。これにAndrew Sullivanが反論している。また、Instapunditは、「CBSが公共の電波を使ってこの数か月やっていることはこれと同じ」という読者の意見を紹介している。民主党側は、地上波のTV局には公的な性格があるから、この番組の放送は、選挙の候補者を公平に扱い、極端に党派的な内容を放送しないという放送法に違反すると論じているのだが、CBSがブッシュ政権の暴露番組を組んでいることを考えると、確かにどっちもどっちと言えなくもない。この「ドキュメンタリー」放送とマイケル・ムーアの『華氏911』を比較する議論が多いが、ネットワーク局の影響力を考えると、確かにCBSと比較するほうが有益かもしれない。

今更言うまでもないかもしれないが、この大統領選挙の勝敗に懸かっているものは大きい。これからの4年の方向性がこの選挙で決まるのだが、テロ戦争も含めて、この4年間が覇権国アメリカの未来を左右することになる。

懸かっているのは国の未来だけでない。ここにきて必死になってきた人々・業界を見てみると、どの業界が政界と癒着しているかよくわかる。シンクレアについては、すでに民主党関係者が「せいぜいケリー氏が大統領にならないようにとお願いするんだね」と不気味な発言をしていることから、ケリー氏が大統領になったら放送ライセンス剥奪、罰金などいじめられることだろう。また、このブログでも前に触れたように、民主党の最大の献金源は法廷弁護士業界である。ブッシュ陣営は、すでに民事訴訟改革を打ち出しており、これが実現すると法廷弁護士は大打撃を受ける。

また、選挙の後の国民の反応も気になる。もしブッシュ氏が再選したら、今でさえ怒り狂っている民主党支持者がどうなるか想像するだけでも恐ろしい。カナダに移住する人々が大量に出るかもしれない。(半分本気。)ケリー氏が勝った場合も、ケリー氏が少しでもミスしてアメリカ人の犠牲者が出たりしたら、テロ戦争に関してケリー氏に不安を持っていた人々にとっては「ほれ見たことか」と怒りが収まらないことだろう。また、そんな人々に媚びるかのように毎晩のようにFox Newsがケリー氏にかみつくことだろう。

ダン・ラザー氏の一連の疑惑やら、今回のシンクレアの件を見ていると、この選挙にフェア・プレーを求めること自体が愚かに思われてくる。この選挙は武器を使わない戦争だ。この一点においては、マイケル・ムーアのほうが正しかったようだ。

野球は現在10 - 7. ヤンキースがこのまま勝ちそう。こちらもすごい闘いだが。

追記:ヤンキース勝利。シナトラの "New York, New York"、Red Soxファンのハートを逆なでしていることだろう。

追記2:野球の試合の後のローカルニュースで早速この件が扱われている。この局でも問題の番組を放送するようだ。

追記3【10/19/04】:シンクレアが、番組内容について、「高速艇」の人達のドキュメンタリーを直に流すのではなく、今回の選挙におけるメディアの役割を包括的に扱った「報道番組」を放送することとした、と発表した。この数日、シンクレア上層部は内部からでた批判者を解雇したりと強硬な姿勢を取っていたが、株価が降下(今日だけで3.54%下落)しているのを受けてか、少し態度を和らげてきたようだ。この件ではTPMが詳しく追い続けている。

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October 08, 2004

第二回大統領選討論

セントルイスでの第二回討論。今日はタウンホール・ミーティング形式で、参加者が候補に直接質問する形式。以下は、討論を見ながら取ったメモ。

9:05 p.m. (ET) ケリー氏に、いきなり「あなたは決断力に欠けていますか」という質問。しかし、ケリー氏は話題を変えて全然違う話をしている。ブッシュ氏のほうが「大統領は一貫性がなければ」と攻撃。

9:10 ブッシュ氏に「WMDがなかったという報告がありましたが」という質問。情熱的かつシンプルな答え。今日はブッシュ氏は前の討論より休養十分という感じ。ケリー氏は、「イラクに関し、私は意見を変えたことがない」と言う。話題がそれる悪い癖が少し出ているが、答えは短く、直接的。

9:19 ブッシュ氏に海外諸国の反米感情についての質問。「レーガン元大統領もヨーロッパでは頑固者と呼ばれていた」と、人気がなくても正しいことをすべき、と主張。これに対し、ケリー氏が4年前の討論の答えで「出口戦略と十分な兵力がある時だけ軍事行動する」と言ったことを持ち出して、「約束を破った」と。イラクについてはケリー氏が攻撃に使えるネタが多い。かなり効果的な議論を展開している。

9:26 イランと北朝鮮。ブッシュ氏がケリー氏の、対北朝鮮の「二国間対話」政策を批判。私も二国間対話は賢い政策とは思わないのだが、ブッシュ氏の説明はディテールが少ないので、イメージだけ見れば説得力がないような気がする。

9:32 徴兵復活するかどうか、という質問。ケリー氏が答えながらブッシュ氏のほうをまっすぐに見て、「(州兵の呼び出しなど)実質上徴兵が起こっている」と厳しい批判。ブッシュ氏はすこし頭に来たような様子で反論。イラク戦争の多国籍軍についての論争だが、両者ともシャープに答えている。両者の違いがはっきりしている。

9:37 テロ対策について。ブッシュ氏の答えは「すべてできることはしている」と言っている。前回の討論でブッシュ氏は「大統領は大変な仕事なんだよ」と連発して後日揶揄されたが、今日はクリアに、嫌味にならない言い方をしていて説得力があったと思う。

9:42 質問は国内問題へ。ケリー氏、またもや4年前の討論の答えと実際の政策の矛盾を指摘。ブッシュ氏がメディケアの成果を強調して、ケリー氏は何もしなかったと言うと、ケリー氏は「われわれはメディケアを改善しただけでなく、予算を均衡した」と。そう、財政赤字もブッシュ政権の大きな問題。

9:46 健康保険と訴訟改革について。ブッシュ氏が「ケリー氏は上院で最もリベラル」と攻撃。また、エドワーズ氏を副大統領に選んだことに対して疑問。先日のワシントン・ポスト紙のGeorge Willのコラムでもあったが、弁護士は民主党の最大の支持母体になっている。ブッシュ氏は訴訟コストを減らし、弁護士の取り分を減らす改革をしている。これが実行されると、弁護士たちだけでなく、民主党が大きなダメージを受ける。

9:52 財政均衡について。ブッシュ氏は、「私が大統領になる6ヶ月前に不況になったから財政赤字が増した」と答えた。

9:54 ケリー氏に、「年収20万ドル以下の人々には増税しないとカメラに向かって誓って下さい。」ケリー氏は、言われた通り誓い、また、「財政赤字を半分にする」とも誓う。これ、日本でもやったら面白いだろう。ブッシュ氏は、「過去の投票行動から、彼は増税するだろう」と反論。ケリー氏は再反論で、マケイン氏の名前を出しながら「企業税の抜け穴をなくす」と発言。ここで中間層に人気のあるマケイン氏を持ち出すのは賢い。

10:03 環境問題。これも、二者の違いが鮮明になる問題。私はブッシュ氏が環境問題について関心をもっているとは思わないのだが。それから、ケリー氏は「私は科学を信じる」とも。科学者でブッシュ氏の政策に不満を持っている人は多い。

10:06 経済政策。ケリー氏が、アウトソーシングをする企業を批判。ブッシュ氏が、この質問をきっかけに「中小企業はケリー氏の税制で打撃を受ける」と攻撃に転ずる。ケリー氏は「それは違う。ブッシュ氏が木材屋で、チェイニー氏が中小企業、そういう数え方をしている統計」と。それに対してブッシュ氏は「私が材木屋? それは初耳だ。…木材いります?」とジョークで切り返した。??? この問答、よくわからんかった。

10:14 愛国法。ケリー氏はこの法案にも賛成票を投じたのか。まあほとんど全員賛成だったわけだが。

10:15 ES細胞の研究利用について。この問題について、ブッシュ氏は「生命倫理」を強調し、ケリー氏は「科学の希望」を強調する。この問題は、中絶論争にもつながる生命観の問題も絡むので難しいが、ブッシュ氏の立場には宗教右派も反対しているという事情がある。こういうと誤解されそうだが、この問題、たんなる「科学の進歩のため」という理由付けで研究を解禁するのは問題があると思っている。

10:22 最高裁判事の任命問題。これは実はけっこう重要な問題。両者とも、「法を解釈する人」というようなことを言っていたが、両者の意味するところは大きく異なる。両者ともはっきりとは言わないが、この問題を気にしている人は多い。そろそろ次の判事を任命するタイミングで、現在の最高裁はちょうど左右均衡しているから、次の一人の重みは大きくなる。

10:25 中絶問題。私はケリー氏の答え(「中絶に個人的に反対だが、政府の代表として個人の権利を守らなければならない」)は、微妙なニュアンスながらよく表現されていたと思ったが、ブッシュ氏は「今のを解読するのは難しいね」と一刀両断。

10:28 ブッシュ氏に「4年間の政策で、間違いだったと思うことがありますか」と。ブッシュ氏:「振り返ってみると戦争の戦術的なミスはあったと思う。人間だから」。この譲歩は少し驚き。でも、イラク戦争を始めたことは正しかったと信じる、大統領として責任を取る、と強調することを忘れていない。それに対しケリー氏は「本当に最後の手段として戦争を選んだか、よく考えてみよう」と主張。ブッシュ氏は、ケリー氏のflip-flopを批判して反論。また、「あのような状況でいま以上強固な同盟がつくれたかどうかは怪しい」と、ケリー氏の主張自体を疑問視する人もいる。ともあれ、二つのまったく違う世界観が提示されている。どちらが一般庶民と共鳴するか、だろう。

まとめ。両者とも大きなミスはなかったように思う。ケリー氏が、「変節漢」というイメージとはうらはらに、クリアで力強い答えを用意していたのが目立った反面、ブッシュ氏も疲れたような1回目討論とは異なり自らの立場をはっきり主張していた。国内問題に関しては、中絶問題など、「この問題だけでだれに投票するか決める」というべき問題が多くある。その意味では、どちらに投票すべきかというシグナルが答えの中に含まれていたのではないかと思う。多くのアメリカ国民にとり、一番の問題はイラク情勢だというのが最近の世論調査の結果である。そうなると、ケリー氏が有利だろう。いっぽう、ブッシュ氏のケリー氏批判のうち、弁護士業界との関係、中小企業の税負担など、有効打もいくつかあったと思う。

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October 06, 2004

副大統領討論

元ハリバートンCEO対元法廷弁護士の討論。何か書こうと準備していたのだが、討論の中継の途中で友人から電話がかかってきて、中断。(非常に実りのある会話で満足した。本件とは関係ないのだが。)ということで、きちんと見ていないのだが、最初の1時間ほどを見た感想を短く。
○両者の準備がずいぶん違う形で現れた。エドワーズ氏は、特にイラク戦争については、同じ論点をとにかく繰り返すこと。それは、自分の信条や経験から生み出されたものではなく、ケリー陣営として現大統領を批判するために練りに練られたポイントだったと思う。経験不足のため説得力が薄いと思われる部分もあったが、特にイラク戦争については、現政権側として反論しきれないものもあるわけだから、それは両者の違いとして残った。例えば、エドワーズ氏が、先週のケリー氏の議論をくり返しながら、アメリカが「90%の犠牲者、90%のコスト」を負担しているというと、チェイニー氏は、「その数字にはイラク人の犠牲者が入っていないし、先進国がイラクへの債権放棄したのも含まれていない。イラクの人々や同盟国を尊重しないのか」と反論。これに対してエドワーズ氏は「現政権が国民をミスリードする典型例だ」と。

○イラクの論点は、基本的には、イラクの現状を悲観的に見るケリー氏側と、今までの業績を強調し、「自由」という目的の高邁さを訴えるブッシュ氏側ということになる。今から喜んでイラクに派兵しようという国がないから、イラクの治安維持に多くの国の参加を求めるのは夢物語、という意味ではブッシュ氏側が正しいが、ケリー氏側は、そもそもこうなったのはブッシュ氏の失政なのだ、と言っている。この点に限って言えば、アメリカの世論はケリー氏側に傾きつつあると思う。

○チェイニー氏は、ケリー氏とエドワーズ氏の両方にかなり厳しい個人攻撃を加えていた。とくに、ケリー氏の30年にわたる上院での投票行動をやり玉に挙げていた。30年間投票していれば、いろいろと攻撃材料が出てくるものである。ブッシュ大統領は今のところこれを攻撃材料として使っていなかったのだが、今日の討論ではチェイニー氏が具体例を挙げて攻撃した。「90分の言論で30年の投票行動を隠せない」と。また、エドワーズ氏が上院の欠席率が高いとして、「私は(上院議長として)毎週火曜日に議会に出ていますが、今日初めて会いましたね」などと批判していた。それに対して、エドワーズ氏はチェイニー氏の下院議員時代の投票行動をもちだして反論。「キング牧師記念日に反対」とか、「マンデラ氏釈放決議に反対」とか、今の常識では考えにくい保守的な例を挙げていた。この攻撃はけっこう有効だったのでは。この辺りの個人攻撃は、共和党が広告などを通して進めている戦術と一貫していて、チェイニー氏は自分の役割を果たしていたと思う。しかし、あまり繰り返すと国民に飽きられるのではないかという気がした。

○一方、現政権は国内政策ではかなり問題を抱えているのではないだろうか。この討論が行われたオハイオ州クリーブランドは貧困率がアメリカ一高い都市だそうだが、現政権の政策で貧困層が助かるようなものはない。せいぜい減税くらい。(しかし、減税で最も潤ったのは高所得層なのだ。)この問題は民主党のおはこである。特に、法廷弁護士として一般庶民の側に立って戦った(ということになっている)エドワーズ氏は、この辺りの問題になると説得力があると思った。論争が国内問題に移る3回目の討論では、ブッシュ氏はかなり苦戦するのではないだろうか。

○ブログをいくつか見てみると、チェイニー氏のやる気がなかったのでは? という指摘がいくつかあった。ハリバートンに関するエドワーズ氏の攻撃にしても、「すべて論破されています。ウェブサイトを見て下さい」と言うだけ。また、チェイニー氏の娘がゲイのため発言が注目された同性婚に関する質問でも、一回目に自分の主張を述べた後、エドワーズ氏の主張に対して反論する機会が与えられても「私の家族に対して敬意を払ってくれてありがとう」と言って終わり。自分の言いたいことが言えればいいという態度が目立った。これについて、4年間の激務の後の疲労か、それとも無関心か、といろいろと憶測が飛び交っていた。

まとめ。副大統領討論が選挙の行方を決めるということはないのだが、選挙戦の方向性というのは見えてくる。ケリー氏側がイラク戦争の「間違い」を主張しても、ブッシュ氏側が今までの楽観的、希望的な見方をここにきて変えるというのは考えにくい。一方、ブッシュ氏側はケリー氏の上院での投票行動などを通してケリー氏の「資質」を疑問視する。これについても、この前の討論で見たように、ケリー氏側はかなりはっきりとした答えを用意してきて、真っ向から反論している。4年前のチェイニー氏対リーバーマン氏の討論では、二人の経験豊かな政治家が実際に論争を戦わせているというイメージがあったが、今回は、チェイニー氏はこの4年間の政策を弁護しなければならない。民主党側は特に外交・軍事では経験不足という感じだが、選挙に勝つための戦術として、反論が難しい大きなポイントを繰り返している。結果、二つの世界観が交わることなく共存するようなことになっている。こうなると、どちらが論争に勝ったか、ということよりも、中間層のまだ決めかねている人々にどちらの世界観が「現実的」と思えるかが勝負を決めることになると思う。

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September 30, 2004

第一回大統領選討論

今日は仕事が終わらなくてまだオフィスです。

 今日の討論、両方ともよく準備していたと思います。一方、両者とも弱点をさらしていた部分もあり、これから数日かけて両陣営が分析していくでしょう。
 外交・防衛問題は私の専門ではないし、少し疲れていて余り集中して聞けなかったので、とりあえず印象だけ記しておきます。

○ブッシュ大統領は、最初の方は何か苛立ったような様子だった。疲れているのかもしれない。彼は、時々記者会見などでこういうことがあるのだが、イライラしているのが言葉の端々に現れて、短気に見えるし、こういう時に限って言葉に詰まったりする。ケリー氏に対しての反論で「(外交政策の批判は)敵に間違ったメッセージを送る」というのを繰り返していたが、いらついたような口調だったので、感情的な反論という印象を与えていたと思う。リラックスして来たのは最後の方で、「ケリー氏の人格は大統領に適格ですか」という、ある種のひっかけ問題が出たときも、ケリー氏を「家族を大事にする人」などとほめる余裕を見せた。あのペースで最初から行けば良かっただろう。

○その点ではケリー氏は最初から最後まで安定していたと思う。タフなイメージを表に出すのに成功していた。論点もけっこう豊富だったし、現政権の批判についても、「アメリカはイラクで90%の死傷者、90%の経費を負っている」とか、「(開戦時)イラクより危険な国は30から40あった」など、鋭いポイントが飛び出していたように思う。いろいろなブログをざっと見渡したところでも、議論に限って言えばケリー氏の判定勝ち、という様子である。(もちろん、どちらが勝ったかというのは、討論後の両党の反応も含めて決まってくるので、まだわからない。)

○外交・本土防衛はブッシュ氏が有利なトピックのはずだから、ブッシュ氏はもっとポイントを挙げるべきだったのか、それとも、ケリー氏は後を追っているのだから、KOパンチが出なかったと言うことはブッシュ氏が逃げ切ったというべきか。この辺を両党の代表がいろいろと論じ合っていくことになるだろう。

○私は、ケリー氏がころころと政策を変えているというのが、政治家の批判の対象になるとは思わない。そう言ったら、ブッシュ氏だって何度も政策を変えている。だから、ブッシュ大統領がケリー氏を "Flip-flop" などと言っている批判は、私にはあまり説得力がなかった。

○一方、ケリー氏が論点がぶれる、というのは言えると思う。次に何を言い出すかわからない、という不安があり、今日言ったことも分析していくといろいろと矛盾が出て来そう。アメリカにとって一番問題になりそうなのは、ケリー氏が、「先制攻撃の権利を放棄したりはしない」と言いながら、軍事行動には「国際社会のテスト」をパスしなければならない、と発言。自国の安全を守るためには国連の許可がなくても先制攻撃もして欲しい、と思っているアメリカ国民が反発することはないだろうか。

○ブッシュ氏は、ケリー陣営の「アラウィ首相は傀儡」発言を批判。また、ケリー氏が、イラク戦争に参加した国として、ポーランドを忘れていて、ブッシュ氏が訂正するシーンも。ブッシュ氏がポーランドで人気があるというのも理解できるだろう。

○ケリー氏の対イラク政策の中心は、サミットを開催して国際社会の協力をとりつけること、ということらしい。また、各国に戦費支出も、と言っている。日本の支出増大は必至だろう。一方、ブッシュ氏はイラク人による軍隊の訓練がメインだから、これ以上日本の負担が増えるということはないと思う。

○日本の方にとって、一番大きな問題は、やはり北朝鮮問題だろう。興味深いのは、ブッシュ大統領の外交は、イラク戦争のため一国主義、国際社会無視というイメージがあるが、北朝鮮に限って言えば、6か国協議の堅持、中国・ロシアとの協力など、実に手堅い政策をとっている。一方、ケリー氏はこの討論では「北朝鮮との直接対話」と繰り返していたが、それは金正日を利することにはならないのだろうか? また、外交の知識に乏しいと言われるブッシュ氏が、北朝鮮の核疑惑についてケリー氏の誤りを正すシーンがあった。北朝鮮問題に限って言えば、現状把握、戦略、どの面でもブッシュ氏の方が安定感があるといえる。

○ダルフール。ケリー氏は「ウガンダの過ちを繰り返してはいけない」と決意表明。ダルフールへの軍事介入はフランスや国連が反対しているのでは? 「独断的な外交」はしないはずじゃなかったの?

非常におおざっぱな印象として